こそ-どろ[名]
(「こそ」は「こっそり」の意。「どろ」は「どろぼう」の略)こそこそと人目をぬすんでわずかなものを盗む泥棒。
こぬすびと。こそこそどろぼう。こそどろぼう。
(「日本国語大辞典 第八巻」小学館)

そんな、言葉通りの“こそ泥”の意味。さらに思い浮かべるイメージは、中年の小太り男で、口を囲んだヒゲのある風貌。キョロキョロしながらタンスを物色し、唐草模様の風呂敷を背負って逃げるも、犬に吠えられ、自転車で見回りしてるおまわりさんに偶然出くわして万事休す……などなど。

でもそれって、辞書での意味や個人的に抱いてるイメージ。唐草模様の風呂敷姿は、もはやこそ泥コスプレでしかない。実際は、スーツにネクタイ姿で浸入するケースが多いわけで、警察が実際に使ってる“こそ泥”の意味は、ちょっと違うのかもしれない。

と、その前に、そもそも警察官は“こそ泥”って言葉を使うことがあるんだろうか。警視庁に話を伺った。
「たまに警察官同士の会話の中で出てくる程度ですが、実際に言うことはあります。
隠語に近いですね」

じゃあ、どんな意味で使われてるの?
「特に決まった使い方はありません。それぞれが感覚で言っているため、人によって基準は違うかと思います」

例えばどんな使い方?
「例えば金額として1万円など、比較的少額の窃盗のときに言う場合があります。また回数として初めて盗みをはたらいた人に使う場合や、万引き犯に対して言うこともあります。やはり、こそこそと盗むイメージで使われることが多いようです」
割と意味合い通りだけど、辞書やイメージより、幅広い意味で使われているようだ。

ちなみに、警察での正式な文書に“こそ泥”って言葉が記されることはない。“泥棒”もそうだけど、会話の中に出てくるだけで、文書上では“窃盗犯人”と書かれる。
ただ広報誌やポスターなど、住民に呼びかけるときは、あえて“泥棒”って言葉が使われることがある。これは“窃盗犯”よりも耳に馴染んでて、頭に入りやすい言葉だから。泥棒に含まれる“こそ泥”も、必要があればだけど、使われる可能性もあるそうだ。

警察内で、固定した意味はなかった“こそ泥”って言葉。
ヒゲをキレイに剃っていようが、風呂敷じゃなくトートバッグに金品を詰めていようが、小太り男性じゃなくスレンダー美女だろうが、警察官のみなさんは、それぞれの感性で“こそ泥”と呼んでるみたいです。
(イチカワ)
編集部おすすめ