日本でもコアな音楽ファンに注目されている、インドネシアのキュートなポップバンド「Mocca」が、一足先に韓国で大衆的な人気を集めつつある。

Moccaは、女声ボーカルでフルートも操るArinaを中心に、ギターのRiko、ベースのToma、ドラムのIndraといった男性陣からなる4人組だ。

ギターポップやスウィングジャズ、初期ロックの要素が詰まった彼らのナンバーは、常夏のインドネシアのイメージを覆すほど涼しげ。アレンジもウィットが効いており、何より天に届くようなArinaの伸びやかなボーカルが心地よい、優しさいっぱいの極上ポップミュージックとなっている。

韓国にMoccaの存在を広く知らしめたのがテレビCMだ。アシアナ航空やLGグループなど、大手企業が彼らの音楽を起用。「インドネシアのテレビCMでは2曲しか使われていないのに、韓国では5曲も使われている」とArinaが話すほど(音楽番組『EBS共感』のインタビューより)、韓国でMoccaの音を耳にする機会は意外にも多い。

韓国での配給元であるBEATBALL社は、彼らの人気について「Arinaのかわいらしいボーカル、爽やかなサウンドはもちろん、聴きやすいメロディーが韓国人の感性に合うのでは」と話す。
インディーズレーベルからの発売ながら、これまで出た3枚のアルバムの売り上げも好調だということ。

そんな彼らが去る2009年6月27日、ソウル市の麻浦アートセンター・アートホールマックにて、初の単独ライブ「Mocca live in seoul」を行った。
韓国でライブを行うのは、昨年の野外音楽フェス「Grand mint festival 2008」に続き2度目。前回の公演での熱いライブパフォーマンスも話題となり、今回の単独公演はチケットが完売するほどの人気となった。

当日のライブはベテランミュージシャン、イ・ハンチョルのアコースティックライブに始まり、韓国のライブではお馴染みの数分ほどの短い転換時間で、間髪おかずMoccaが登場。オリジナルメンバーに、キーボード、トランペットのサポートを加えた6人体制での演奏となった。

歌詞は全て英語。MCも英語で行われるが、韓国人オーディエンスの反応は良い。途中、Arinaが韓国語で「アンニョンハセヨ(こんにちは)」「ヨロブンチェゴエヨ(みんな最高)!」と話しかけ客席は沸いた。

中間にゲストバンドとして韓国のポップユニット・Peppertonesの2人が登場。途中でArinaも加わったアコースティックライブが行われた後、本編2部へと突入する。カーペンターズを思わせる甘いナンバー『I Remember』、男性陣のコーラスワークが気持ちいいギターポップ『The Best Thing』、レトロなサウンドがかわいい『Happy』など、韓国のリスナーには馴染み深い曲が次々と演奏される。
間奏でArinaが優雅なタップダンスを踊った時は、筆者も思わずため息が出てしまった。
アンコールではビートルズ『I will』のカバーや、選ばれし3人の観客とのダンスタイムも飛び出し、全20曲のライブは観客の熱い拍手とともに幕を閉じた。

ライブには日本からのファンも駆けつけており、Moccaについて「とにかくハッピーなのが最高。日本でもぜひライブをしてほしい」と話してくれた。
あなたもMoccaの音楽を一度聴けば、同じアジアの国ではあるが、知らないことも多いインドネシアに、日本や韓国の音楽ファンに通じる、同時代の感性を持つバンドがいることを、改めて実感することだろう。
(清水2000)