先日、東京タワーの展望台から東京の街を眺めた姪っ子が、「何、あれ!? ちょっと不気味……」と呟いた。

指差す先にあるのは、濃い緑色に覆われた巨大ビル。

見ると、汐留やお台場・赤坂・虎ノ門あたりに、同じような緑色の巨大ビルがニョキニョキと聳えている。
遠目に見ると、濃い緑色で鈍い光を放っているビルは、アニメ映画などで「ロボット」などとして動きだしそうな建築物にも見えて、ちょっと恐ろしい。

ゆりかもめに乗ると、そうした「緑色の巨大ビル」の数々を近くに見ることができ、「緑」の理由が、大きなガラス窓で、立派な建物だということがわかったけど……。
いったいどういうガラスなのか。
あるいは、近年、ガラスより軟らかく、安全で、強度も高いアクリルができたことにより、巨大水槽が水族館で登場しているけど、もしかして同じようなアクリルだったりする?
板硝子協会に聞いた。

「グリーンの巨大ビルは、アクリルではなく、ガラスです。一般的には『熱吸収ガラス』という名前で、以前はブロンズ、グレー、ブルーなど、いろいろな色があったのですが、国内ガラスメーカーの景気が悪いので、今現在、日本でつくられているのはグリーンだけになっているんですよ」

熱吸収ガラスは、従来からあったそうだが、バブル崩壊以降に、ガラスメーカーがあまりたくさんの色を持たないようになったという経緯があるという。
「いろいろな色の中からグリーンが選ばれたのは、赤の反対色というイメージ、熱を運ぶ赤外線・赤い色の光を吸収するということ。実際、グリーンは熱吸収効率が非常に良い色だということです」
つまり、緑色の巨大ビルが増えているのは、「冷房費用を削減するため」「省エネ対策」ということ。
「また、5000平米以上の床面積があるビルでは、省エネ効果を政府に届け出することが義務づけられています。そんななか、勧められている素材の一つに、熱吸収ガラスがあるということです」

ちなみに、濃い緑色の「熱吸収ガラス」のほかに、もう1つ近年増えているものに、「LOW-Eガラス」というものがあるという。
「これは熱吸収ガラスよりはグリーンじゃないですが、グリーンがかったガラスで、ペアガラス(複層ガラス)になっています。
二枚のガラスの間に空気がはさまれているため、省エネの断熱効果が高く、また、薄い金属膜でおおわれていることから、熱線を反射する効果があります」

熱吸収ガラスと、LOW-Eガラスの大きな違いは?
「吸収ガラスのほうは、室内と室外に、吸収した熱を放射するため、断熱機能は二枚ガラスより劣ること。さらに、オフィスビルでは冷房が多いので、二枚ガラスのほうが今はメインになってきているんですよ」

巨大ビルで多く取り入れられている緑色の「熱吸収ガラス」と、近年増えてきているグリーンがかった「LOW-Eガラス」。
徐々に中小ビルにも広がりを見せているという「緑色のビル」は、ガラスの機能の向上によるもの。

ただし、西新宿などに聳える1970年代の豪奢なビルと違い、きらびやかなイメージの一方で、「不景気」と「省エネ」を象徴する、現代の日本らしいビルなのでした。
(田幸和歌子)
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