9月もはや中旬。あまり暑くならないうちに、夏が終わってしまった。
ところで夏と言えば「入道雲と夕立」が筆者のひとつのイメージなのだが、最近、「夕立」という言葉をあまり聞かなくなった。代わりに聞くようになったのが「ゲリラ豪雨」。この2つ、何が違うのだろうか。

まずは「夕立」について。岩波書店の広辞苑第五版で調べてみた。
「夕方、急に雲って来て激しく降る大粒の雨。
夏の夕方に多く、発達した積乱雲によって起り、雷を伴いやすい。白雨(はくう)。夕立の雨」
次に気象庁のサイトを見ると、「夕立」は「夏期のみ用いる」用語ということになっていた。そんなところで、「夏」「積乱雲」「雷」「大雨」というあたりが、「夕立」のキーワードと言えそう。

「ゲリラ豪雨」の方はどうか。広辞苑には載っていないので、気象庁、ウェザーニューズ社、知り合いの気象予報士の三者から情報を探ってみた。

○気象庁……定義していない(天気相談所)
○ウェザーニューズ社……(ゲリラ雷雨の定義として)“ザーザー”以上の強い雷雨で、当日の朝の時点で予測できていなかった雷雨(同社ウェブサイトより)
○気象予報士……規模が尋常でなく(1時間に80mm以上)、都市部で突然発生、または発達するもの。巨大雷雨の性格を帯びている(東京都・金子大輔予報士)
そもそもマスコミで作られた言葉なので、専門家の定義はバラバラ。うーん、困ってしまった。ただ、夏の夕方に多いという点は夕立と同じで、自然現象としては大体同じものだと思ってよさそう。「夏」「積乱雲」「雷」「大雨」というキーワードは、「夕立」にも「ゲリラ豪雨」にも共通なのだ。

大体同じなのに、どうして「夕立」が減って、「ゲリラ豪雨」が増えたのか。
ここで、気象庁の「気候変動監視レポート2008」を読んでみる。金子予報士のいう「1時間に80mm以上」の猛烈な雨の回数が、1976年~1986年の11年間に比べ、1998年~2008年の11年間では2倍近くになっている。筆者は都心を歩行中、1時間に91mmの猛烈な雨を体験したことがあるが、雨と雷がとても怖かった。怖いのでビルの軒伝いに歩いていたら、革靴内に上から水が入ってしまい、仕方がないのでオフィスで靴下を絞って乾かした。

「夕立」は俳句の季語でもある風流な言葉。思い起こせば学校帰り、しばらく雨宿りしていれば過ぎ去ったし、強引に雨の中を走ってもそんなに怖くはなかった。
が、「ゲリラ豪雨」はそうはいかない。多少強引だけれど、筆者なりに得た今回の結論は次のとおり。
○「夕立」の中身……「夏」「積乱雲」「雷」「大雨」「風流」
○「ゲリラ豪雨」の中身……「夏」「積乱雲」「雷」「大雨」「恐怖」

「風流」なのか「恐怖」なのか。それが違いということでは、いかがでしょうか。
(R&S)