そもそものきっかけは、ご長寿ラジオ番組『全国こども電話相談室』のウェブサイトがどんな感じなのか、興味がわいて検索してみたことだった。
ほのぼの感あふれるイメージのアノ番組が、一体どのようなウェブサイトを構築しているのか、この目で確かめてみたいと思ったのだ。


そしたら何と『全国こども電話相談室』は名前を変え、『全国こども電話相談室・リアル!』にリニューアルされているではないか。よくよく調べてみれば、リニューアル日は2008年10月5日。リニューアルからすでに1年が経過しているとは……知らんかった。

そして何より驚いたのは、番組に寄せられている相談の内容が、実生活における“リアル”な悩みだったこと。今のこどもの気苦労や、社会のひずみが垣間見える内容が多く、正直言って「こどもって大変!」と思ってしまった。
そこで今回は、『全国こども電話相談室・リアル!』のプロデューサー・鯨井さんに取材してみた。


鯨井さんいわく、そもそものリニューアルのきっかけは、インターネットが社会に浸透したことだそう。
たとえば「へびのしっぽはどこから?」という疑問があれば、かつては『全国こども電話相談室』の出番だったが、現在ならインターネットで調べれば何らかの答えが得られるようになった。つまり、インターネットの台頭によって、ある意味『全国こども電話相談室』は役割を終えた面も出てきてしまったのだ。

一方で、こどもたちが直面している“リアル”な悩みの受け皿は意外に少なく、その結果、ひとりで悩み、引きこもりや不登校などにおちいってしまうこどもも多いよう。
そこで、番組は『全国こども電話相談室・リアル!』として生まれ変わり、扱うテーマをリニューアル。身近な人には相談しにくい、こどもたちの生活における悩みを扱うようになった。


それに伴い、番組も「進行役のお姉さんに導かれながら先生に教わる」スタイルから、「近所の兄貴的パーソナリティと、クラスメイト的存在のこどもたちといっしょに考えて、自ら解決する」スタイルに変更された。また、相談も1回の電話で完結するのではなく、悩みが解決するまで長期間にわたって「アフター相談」を続けられるように変更されている。

ユニークなのは、相談を受けて一方的に答えるのではなく、「一緒に考える」スタイルであること。これは「生きていく上で大切なのは考える力と知恵では」ということだが、実は、昔のこども電話相談室も「学校の詰め込み型知識ではなく、考える力と知恵を」というのがそもそもの狙いだったそう。
う~ん、なるほど。スタイルは大きく変わったけれど、基本姿勢は今も昔も変わりなく、ということですな。


じゃあ、実際のところどんなテーマが俎上(そじょう)にのっているのか。
やはり多いのはいじめなど、学校や友だち関係の悩み。そして親子関係など、家庭の悩み。ほかにもテレビのニュースなどで時折報道される、プロフやメールなどによるいじめに関する悩み、不登校のこどもが抱える悩みなども寄せられるそう。
ときには複雑な家庭環境に置かれたこどもから、「父親が帰ってこない」「性的虐待を受けている」など、胸が締めつけられるような相談が寄せられることもあるそうだ。

鯨井さんは番組リニューアルに際し、「こどもたちに必要とされる番組を」と考えて始めたそうだが、実際にフタを開けてみたら、こどもだけでなく、親世代からの反応も多く、「こどもたちの現状や、リアルな気持ちがわかった」という声が届くということ。

ニュースだけではわからない、こども社会の抱える問題の根深さが見えてくる番組だけに、教育者や保護者など、「今のこどもがわからない」と悩む大人にもオススメの番組である。

興味がある方、聞いてみてください。
(新井亨)