みなさんも度々こんな質問をしたり、されたりしたことがあるだろう。それほど親しい間柄でなくても、実家のことは話題にのぼりやすい。
私の場合、生まれも育ちも東京都内で、ずっと同じ地域に住んでいる。そこで「東京。でも借家だけどね」と答えていたのだ。なぜなら、実家というのはずっと同じ場所にあるもので、なぜか持家でないといけない気がしていたからだ。
これは完全にヘンな勘違いで、お恥ずかしい限り。だってもし、実家が持家じゃなくてはならないとしたら、日本に実家がない人がたくさんいることになるではないか! まあ、誰もつっこんでくるような人はいなかったけれど。
そんなこともあって、いまだに実家という響きがしっくりこないし、その定義がよくわからない。
姉は「実家は親のいる場所じゃない?」という。そうなると、例えば今、親が別の場所に住んでいるとしたら、そこが実家になるというわけだ。でも、正直いって、自分が住んだこともない家のことを実家だとは思えない。
東京で生まれ育って、今は都内の別の場所で一人暮らしている知人もやはり、実家の定義がわからないようで、こう話す。
「生まれ育ったのは多摩なんですけど、実家を聞かれると親が生まれ育った場所のことを答えてますね。つまり、おじいちゃんとおばあちゃんが住んでるところ。でもそうすると、キョトンとされることがけっこうあるんですよ」
長年気になりつつも調べていなかったのだが、今回こそは辞書で調べてみることに。
エキサイト辞書によるとこうあった。
(1)自分の生まれた家。生家。さとかた。
(2)民法の旧規定で、婚姻または養子縁組により他家へ入った者からみて、その実父母の家。
他の辞書でも、書き方の違いは多少あれど、意味合い的にはすべて同じものだった。ちなみに、英語だと「one's parents' house」で、直訳すると「両親の家」だ。
結局、「自分が生まれた家」も「両親の家」も両方とも実家だ。それが、主に結婚などで立場や環境が変わることによって、違ってくるというだけのこと。改めて考えると、当たり前のことのようだが。
ただやっぱりちょっとした疑問が。「自分が生まれた家」と「両親が住む家」が同じだったら何も悩むことはない。でも、自分が結婚したとして、親は私が生まれた東京ではない、どこかの県に移り住んでいたとしたら、実家はその県のほうになるわけだけど、どうにもしっくりこない。これは、感情的な問題だけなのか?!
あとは例えば、子どもの頃に転校を繰り返していたり、両親が離婚していたり、亡くなっていたり、いろいろと複雑な環境がある人などは、定義が曖昧だ。そう考えると、実家がないってこともありえるし。一概にはいえないものだ。
今までかなり気軽に聞いていた「実家どこ?」。意外と深いです。
(田辺 香)