大根といえば白いイメージだが、どうやら西欧諸国における大根の色は黒がスタンダードだと聞いた。

世界三大料理でもあるフランス料理でも黒大根はよく使われるそうで、なかなかポピュラーな野菜であるという。


それはいったいどんな味なのか。黒大根の種を輸入し、販売を行っている日光種株式会社さんにお話をお伺いしてみた。
 
日光種株式会社さんがこの大根を輸入しようとしたそもそものきっかけは、「珍しくて面白いから」。「日本人は色が違うものや珍しいものが好きですからね」と、その珍しさが一番の理由だそう。
確かに黒大根の見た目は、まるで墨でも流しいれたように真っ黒。特に収穫したては黒光りするほどで、一度、目にすれば焼きついて離れないインパクトだ。

もちろん黒色とはいってもそれは皮だけ。皮を剥けば中味は日本人に馴染みのある大根と同じく真っ白だ。
しかし通常の大根よりは水分が少なめできめが細かく、まるで芋のような食感なのだとか。
なのでサラダなどには向かないが、煮物。それもこれからの季節ならおでんにはピッタリ。
大きさも30センチほどの小ぶりな食べきりサイズで、核家族にも対応。
冷蔵庫にも入れやすく西洋生まれのわりに、意外に庶民的な大根なのだ。

そんな黒大根を精力的に栽培して町の名物にしよう! という動きが密かに進んでいる町がある。

それは栃木県の那須烏山町。
日光種苗さんが種を輸入する際、この種をどこかの名物にできれば……と考えたそう。そこで思いついたのが前述の那須烏山町。

「この大根は黒く、烏は黒いから」という駄洒落に近い発想ではあったが、評判はなかなか上々。この秋の収穫祭りには“烏山大根”として出品されるかもしれないという。
もちろんまだまだ名産物として周知されているほどではないものの、今後はこの烏山大根の動きも気になるところだ。

しかしそんな話を聞けば、この大根はやはりプロの手でないと育てるのは難しいと思いがち。しかし作り方を伺ってみれば、家で育てることも可能だという。
大根が作れる地域なら、深めのプランターでじゅうぶんに生育可能。ベランダ菜園などでも作れるのだとか。

60日から70日ほどで育つので、ベランダ菜園で作った黒大根でフランス料理を。なんて洒落たこともできそう。

秋も深まりそろそろ収穫時期ということで、この秋は黒い大根と出会う可能性も。
見た目にびっくりさせられるものの、その味は意外にも繊細。もし見かけたら、ぜひお試しあれ。
(のなかなおみ)
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