「あの子、おとなしいね」(大人)
「いや、全然! うるさいよ」(子)
「そう? すごく明るい子だよ」(子)
なんてやりとり、ときどきある。

逆に、「○○ちゃんて、おとなしいんだよ」と周囲の子たちから聞いていた子が、キッパリと「いらない」「やりたくない」「つまらない」などと口にすることに対し、「あれ? おとなしくないじゃん」と思うことも、ときどきある。

大人の思う「おとなしさ」と、子どもの思う「おとなしさ」って、違うのだろうか。

周囲の子どもたちとの会話によく出てくる「○○ちゃん、△△でおとなしいんだよ」という特徴や、「おとなしい」のイメージを挙げてもらった中から、その意味するところを拾ってみた。

○おとなしい……無口、静か、小さい声で話す、よく泣く、暗い、あんまりはしゃがない・ふざけない、消極的、落ち着いている、おとなっぽい
○おとなしくない……よくしゃべる、騒ぐ、大きい声を出す、活発、明るい、ふざける、面白い、積極的、意地悪を言う
子どもたちがよく言う「おとなしい」のイメージは、「口数」や「声の大きさ」などが中心となっているよう。

また、「おとなしい」を「静か」「落ち着いている」「おとなっぽい」など、誉め言葉として使っている一方で、「おとなしくない」は「明るい」「活発」など、さらに肯定的な言葉として使っているケースも多々見られた。

では、大人の言う「おとなしい」はどうか。
子どもと同じく「物静かで~」「落ち着いていて~」という、口数に関する指摘が多い一方で、以下のようなものも見られた。

○おとなしい……周囲に合わせる、主張をあまりしない、言うことをよく聞く、反発しない、
○おとなしくない……自己主張が強い、わがまま、頑固、言うことを聞かない
子ども同士の対等な関係から見る「おとなしさ」と違い、大人から子どもを見たときの「従順さ」=「おとなしさ」とするケースも多いのだろうか。

エキサイト辞書『大辞林 第二版 (三省堂)』から、「おとなしい」の意味を見てみると……。
「(形)[文]シク おとな・し〔「おとな(大人)」の形容詞化〕 (1)性格が穏やかで素直だ。落ち着いて静かだ。 (2)派手でなく落ち着いていて好ましい (3)大人である。年長である (4)いかにも年長者らしい (5)大人っぽい。
大人びている」

ちなみに、大人が「おとなしい人」と評するときには、「静か」「落ち着いている」などの他に「ちょっと物足りない」という意味も言外に含んでいるときもある。そうした場合には、単に「おとなしい」ではなく、「おとなしいけど、芯は強い」「おとなしいけど、しっかりしている」「おとなしいけど、話すと面白い」など、他の言葉で補足されることも多いように思う。

「おとなしい」は時と場合によって、また、使う人の考え方によって、いろいろ意味が違ってくる、広がりのある言葉。「おとなしい」ほうが良いとか、「おとなしくない」ほうが良いとか、単純に分けられない言葉なのでした。
(田幸和歌子)
編集部おすすめ