下腹部脇のような、腰のような曖昧な場所に、ある日突然、猛烈な痛みを感じた。重くズキズキする痛みに脂汗をかきつつ、原因がよくわからず、とりあえずかかりつけの内科医を受診したところ、診断結果は、意外にも「膀胱炎」だった。


膀胱炎は、実は女性の60%は生涯に1度は経験するとも言われているけれど、それにしても、よく言われる「オシッコをガマンすると~」なんてことは全くないし、第一、痛みを感じたのは「腰」のあたりだけ。

恥ずかしながら、そんな話を友人にしたところ、逆にこんな恐ろしい話を聞いた。
「慢性的に鈍い痛みを腰に感じていて、ただの腰痛だと思っていたんだけど、動けないほどひどくなって病院でみてもらったら、腎臓が弱っていたの」
「腰」と思っていたのに、腎臓が原因とは。しかも、症状が出ている時点で、かなり悪い状態だという。

ただの腰痛に思えて、内臓疾患が原因となっている場合などは、よくあるものなのか。『はい、泌尿器科です。』の著書で、医療法人社団 湘南太陽会 鳥居泌尿器科・内科の鳥居伸一郎院長に聞いた。
「内臓が原因で腰痛が起こるということは、もちろんけっこうあることです。たとえば、泌尿器科的なものなら、膀胱炎や腎盂炎などがありますし、内科的なものでは膵炎や胆石など。さらに、膵臓や大腸のがんなどもありえます」

膀胱炎や腎盂炎は、一般的には残尿感や排尿時痛、頻尿などの症状があるが、そういった症状がなく、腰の痛みのみという場合もあるそうで、
「厄介なのは、原因がわからず、痛みに鎮痛剤を使って、病気を見逃してしまうことです」と鳥居院長。

それにしても、ただの腰痛と、そうでない場合とでは、どう見分けたら良いのだろうか。
「整形外科的な腰痛の場合は、起き上がると痛いとか、ひねると痛い、体を動かすと痛いといった特徴がありますが、内臓が原因となる場合は、痛みがどんどん増してくるとか、熱が出る、足がしびれる、排尿・排便障害があるといった症状をともなうことがあり、さらにひどい場合には、痩せてくることもあります」

また、痛みの場所も、1つの判断基準になるという。

「普通の腰痛の場合は、比較的真ん中が痛むことが多いですが、左右に偏っていたりすると、結石が疑われる場合があります」

その他に、注意したいのは、帯状疱疹だとか。
「内臓が原因で腰痛が起きる場合には、帯状疱疹が出てくることもあります。その段階でも、原因はわからないことも多く、湿疹が出る前に病気を見つけることができる医者は名医ともいわれるんですよ」

レントゲンでも100%わかるわけではないというだけに、腰痛で、まずどこを受診するか迷うけど……。
「姿勢によって痛みがある場合には、整形外科を。残尿感など、尿路系の違和感がある場合は、泌尿器科を。熱がある場合などは内科医を。よくわからない場合には、普段からの、かかりつけの医者に行きましょう。いちばん大切なのは、医師に話をよくすることです」

たかが腰痛、されど腰痛。サインを見逃さないよう、ご注意を。
(田幸和歌子)
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