東京日本橋の日本銀行本店向かい。普段は閉じられている防災船着場から屋根のない水上ボートに乗り込むと、早速、講師の解説が始まった。
日本橋川の両側には、「モダン」という言葉がピッタリきそうな、昭和初期の建築物がたくさん並んでいる。懐かしい感じだ。真上を首都高が走っていて、残念ながら薄暗くてうるさいのだが、船が右へ曲がり亀島川へ入ると、嘘のように静かになった。
待望のスカイツリーが見えてくる。
「スカイツリー、少し曲がって見えませんか? ツリーは下の部分が三角、上の部分が丸いんです。このつなぎ目の部分を、あるアングルから見ると曲がって見えるわけです」
そう言われれば、曲がって見える。でも、それは目の錯覚というわけ。
船は隅田川から小名木川へ。今日のハイライトのひとつ、扇橋閘門(こうもん)に着いた。門から先は、いわゆる海抜ゼロメートル地帯で、川の水面が2メートルほど低くなる。2つの水門で川を仕切ってその間に船を入れ、水をエレベータのように上下させて船を通過させるのだ。パナマ運河と同じしくみの水門がこんなに身近にあったなんて、ちょっとした驚きだ。さらに進んで横十間川に入ると、今度は下町の水辺の風景が広がってくる。
東京タワーに特別展望台がどうしてできたのか、といった高層建築まつわる話や、数ある橋の話題、災害時に水路が果たす役割の重要性など数々の解説を聞きながら、船は往路を戻ってゆく。
やがて、船は日本橋に戻った。講師の最後の言葉が耳に残る。
「今の学生さんと話をすると、『川の上に首都高が走っていて何がいけないんでしょうか』と逆に聞かれるんです。もう、小さい頃からこの風景が当たり前になっているんですね。水辺に本来の姿を取り戻していかなければならないと思います」
このクルーズは、7、8月にも各2回開催予定。スカイツリーを見ながら、いろいろと考えさせられます。
(R&S)
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