『不思議の国のアリス』という作品にとってのちょう重要事項です。
そんな「かわいい!」を詰め込んだ角川つばさ文庫版アリスの二冊目『新訳 かがみの国のアリス』が発売になりました。
ジョン・テニエルが挿絵を描いた『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』は大人なら一度は目にしたことがあると思いますが、実際に読んだことのある人はどのくらいいるでしょうか?
あらすじしか知らないという方もいるでしょうし、あらゆる翻訳版を読んでるよというアリス通もいらっしゃると思います。確かに翻訳やイラストでクセが分かれるので、どのアリスからオススメすればいいか、というのは僕のようなアリスマニアにとっては悩みの種の一つですが、今なら角川つばさ文庫版を迷わずそっと差し出しますね!
角川つばさ文庫は子供向けレーベルの文庫シリーズ。とはいってもこのレーベルちょーっとすごいんですよ。ラインナップの中に『涼宮ハルヒの憂鬱』 (角川つばさ文庫)や角川つばさ文庫版『サマーウォーズ』が入っていたり、いとうのいぢ氏イラストの『時をかける少女』や志村貴子氏イラストの『龍馬伝』が入っていたり。アニメ・マンガ文化に詳しい人ならムズムズすること間違いなし。
キャッチーな表紙の数々と、小学生向けにアレンジされた有名小説の読みやすさ、大人の方が病みつきになるレーベルなのです。
中でも漫画家okama氏がイラストを手掛ける『新訳 ふしぎの国のアリス』シリーズはクオリティ面でも尋常ではありません。
「単に子供向け・アニメファン向けにイラストを変えたんでしょ?」と思われるかもしれませんが、逆です。むしろアリス通を唸らせるくらいに凝っているのですよ。
まずはとにかく枚数の多いイラスト。ラノベとちがって1ページイラストではなく配置も凝っているので、ページをパラパラめくるだけでこの本が楽しいおもちゃ箱になっているのがすぐわかるはず。
それでいて、テニエルのイラストやディズニーのアリスと全然違うデザインの住民たちは新鮮! ハンプティ・ダンプティやチェシャ猫もokama氏の手にかかると全くの別物になっています。
そして驚いたのは、新訳『かがみの国のアリス』(角川つばさ文庫)の表紙。鏡の周りに数多くの写真が飾られているのですが、これ、ルイス・キャロルが撮った写真なのです。
イラストのokama氏がいかに綿密にアリスを研究し、「かわいいもの」として愛したかがよくわかる素晴らしい挿絵になっています。翻訳も元々のアリスの言葉遊び要素をしっかり再現しており、ルイス・キャロルが少女たちに伝えようとした思いをきちんと踏襲しています。
okama氏の手にかかると、マッドハッターやハートの女王やチェスの女王までキュート。スラップスティックなアリスワールドに「かわいくないものなんてない!」という信念すら感じます。
萌えイラストアリスと思うなかれ、ルイス・キャロルの思いをしっかり研究した翻訳者とイラストレーターの創り上げた、再構築版アリスの決定版なのです。
ルイス・キャロルがこのokama氏イラスト版アリスを見たらなんと言うでしょうか。個人的にはキャロルのイメージ通りかどうかはともあれ、ニコニコしながらこの本をアリス・リデル達に見せに行く気がしてなりません。
子供はもちろん、大人もハッピーになれる最高にキュートなアリスの世界、この機会にいかが?(たまごまご)