先日、ちょっとユニークなジャムを見つけた。カラフルなジャムの色が目を引く瓶には、「ワインペーストジャム」の文字。
しっかりアルコールも含まれているらしく、子どもは食べられないし、食後は車の運転も禁止……と扱いは完全にお酒と同じ。

味は、マスカットベリーA(赤ワインの代表的なブドウ品種)、ブルーベリー、ゆずの3種。まず、鮮やかなオレンジ色の「ゆず」を試すと、味の濃厚さに驚いた。上品なゆずの旨味がギュッと凝縮され、爽やかな香りが食欲を誘う。個人的には、ブドウ本来の甘みが際立つマスカットベリーAも個性的な味わいでオススメ。どれもパンなどに塗るのはもちろん、お酒のつまみにチビチビ食べても旨い。まさに「食べるお酒」と呼ぶのがぴったりくる。

同商品を販売するグリーンリバースの吉野さんに開発のきっかけを聞いた。
「数年前、当時おこなっていたイタリアンレストランの経営から、山梨県の果実生産、ワイン産業の現状を知りました。日本一のワイン生産地では、ブドウワイン粕だけで年間3,000トンもの発酵果実を廃棄しています。発酵した果実は土には還りにくく、一部は飼料に使われていますが、ほとんどが産業廃棄物になっています」
もともと、30年近くログハウスの制作販売を手掛けていた同社。地域の大切な資源である森を守る林業の衰退を知り、環境や地域の再生に強い関心を持つようになったという。


廃棄される大量の発酵果実を何かに使えないかと2年前に開発をスタート。煮たり、焼いたり、干したりと試行錯誤の末、ペースト化にいきついたそう。
「水分を減らしてペースト化することで、ワインが本来持っている香味を生かせますし、アルコールも残ります」
ジャムのアルコール度数は6度前後(ゆずは約4度)と意外に高いので、お酒に弱い人はご注意を。
「菓子のシロップやソース、ドレッシングの原料にもどうぞ。煮込みやカレーに入れても美味しいですよ」
アルコール発酵で繊維がくずれるため、火は使っておらず、加温はボトリング後の低温殺菌のみだという。

商品は同社のウェブサイト、山梨県内の道の駅などの観光施設、甲府の山交百貨店などで販売中。価格は大200gが1,000円 小110gが700円(いずれも税込)。ジャムの味は今後も増やす予定とのこと。また、ワインティも販売しているほか、ワインウォーターも製品化中とか。ちなみに同社のサイトでは、原料の無料配布やレシピ公募などの情報も発信している。

「もろみや味噌、醤油を作ってきた日本の発酵文化で、ワインやビール、ウィスキーといった外国の酒を、新たな料理や食品として生まれ変わらせることができるかもしれない。新しい産業がおこり、新しい食文化に発展するかもしれません。
この分野で日本の技術が世界トップになるのも面白いですよね」
“ワイン(酒)の食品化研究会社”を名乗る同社の今後の活動にも大きく期待したい。
(古屋江美子)
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