「名古屋のミント飴といえば?」

「デリシャスミントなんです」

なぜ? といわれても、商品名がそう言い切っているんだからしょうがない。「何とも自信満々な商品名ですいません!」と、販売元・ほしや製菓のホームページでもいっているが、「名古屋のミント飴といえば、デリシャスミントなんです。」これがそのまま商品名なのである。


なぜ「デリシャスミント」が、名古屋を代表するミントキャンディたるのか。「デリシャスミント」またの名を“あさくまハッカ”といえば、ピンとくる人もいるかもしれない。

名古屋地方を中心にチェーン展開するステーキレストラン、「ステーキのあさくま」(かつて『西部警察』の名古屋ロケ編での店舗爆破で大きな話題を集めたこともあり)。そこで食事した際、帰り際にレジでいただける飴がそれだ、といえば、中京圏の方や出身者なら(自分もそうですが)ピンとくるのではないだろうか。「ああ、あさくまの飴かぁ」と。
焼き肉店でお会計のときにもらえるガムのようなポジションで、肉料理を食べた口に広がるミントのスッとした味や香りの記憶がよみがえってくる人も多そうだ。

ほしや製菓的にも狙いはそこのようで、担当者はこう言っていた。
「80年代を中心に食べられた方が多いと思うのですが、現在30~40代の、中京圏の方や出身の方が、そのころを思い出すような商品にしたいと思いました」

従来の「デリシャスミント」も継続販売中で、ネーミング違い的なこの「名古屋のミント飴~」版(中身の飴は「デリシャスミント」と同じ)が登場したのは2008年。東海地方や関東地方を中心に販売されていて、2010年は「名古屋開府400年」にあたるとのことで、現在流通中のものは、それを織り込んだスペシャルパッケージになっている。

ところでパッケージ裏面を見ると、『ミント物語:或る会社の危機を救ったキャンディ』という一文が書かれている。書いているのは、あさくま創業者・近藤誠司さんだ。
これによると、オイルショック当時、外食産業もそのあおりを受けた。
少しでも経費を減らしたい時なのに、お客さんにミントキャンディを渡そうと提案した。なぜなら、「この爽やかなミントの味を想い出し、またお客さんが来てくださると思う」(パッケージより)から。なんだかビジネスドキュメンタリー番組みたいでカッコいいな。「ステーキのあさくま」の隆盛の陰に、「デリシャスミント」あり、ということだ。
この文章、商品を出すことを報告したら、会長からその文を記載したFAXが送られてきて、感激したほしや製菓側がそれをそのまま掲載した、ということらしい。
一時期、あさくまの店頭からも姿を消していたが、現在は復活し、「多くの店舗に置いていただいています」とのこと。
もちろん、あさくま以外の飲食店の需要のほか、「美容院でのサービスとしても人気があります」という。

懐かしい味に再会したい人も、初めての人も、「名古屋のミント飴」、味わってみてください。
(太田サトル)
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