2004年3月から『Cookie』で連載されていた『潔く柔く』の最終巻が、先月発売され、「Cookie」11月号からは新連載「プリンシパル」がスタート。25日には『爛爛』が発売予定など、精力的に活動している。
ダイエットを決意する女の子や、やりたいことが見つからないフリーターの女の子などの身近な人物設定。日常を丁寧に描いているので、共感しやすい。だけでなく、表情や間の取り方など随所に出てくる“いくえみカラー”が読者の心をつかむ、つかむ。セリフも自然な話し言葉なので、何年経っても古びることがない。いくえみマンガが長く愛されている理由だろう。
そして、これらの要素をさらに際立たせているのが、登場人物だ。
なかでも男性キャラクターは絶大な人気がある。mixiのコミュニティ「いくえみ男子」(参加者5710人)、「いくえみ男子二恋ヲシテ。」(参加者16人)の他に、キャラごとのコミュニティまで存在するのだ。
いくえみ男子の特徴は、ボリュームたっぷりのもっさりとした髪型(寝グセがついていることもある)。
また、「有名人の誰か」を連想させることが多い。それも、佐藤健やunoのCMに出てくる芸能人のような、一般的に「キャーッ!」といわれる人なんかじゃない。奥田民生やくるりの岸田繁、BUMP OF CHICKENの藤原基央など「ROCKIN'ON JAPAN」に載っているようなミュージシャン系だ。
岸田くんに似ているキャラなんて、いままでの少女マンガに存在しましたか? 決して華があるタイプではなく(失礼)、でも一部の女子には絶大な人気がある、あの岸田くんですよ。いくえみ先生、ずるいです。
ちゃんと服を着ている人の描写である、Tシャツの襟元のシワや肩のライン。「こういう男の子、いるよね」と思わせる、ほどよい(ここ重要)生活感と無頓着感がいい。
■おすすめいくえみ男子■
新藤央人(『I LOVE HER』)…主人公の花が引っ越したアパートの隣人で、転校先の高校の担任。生徒からは“新ちゃん”と呼ばれていて仲がよく、校内にファンも多い。
おすすめ箇所 集英社文庫1巻P166~167、236~P242、2巻P39~50、P137~143、P223~232、3巻P26~32、P132~145、P174~181
日山一(『私がいてもいなくても』)…主人公・晶子の友人の彼氏で、漫画家。通称ひーさん。『I LOVE HER』の新ちゃんの時の奥田民生の比ではないが、くるりの岸田繁に似ているといわれている(個人的には、顔よりもTシャツを着た時の首まわりに着目)。アンニュイな雰囲気で、妙な色気がある。大きくて骨ばったひーさんの手はいい! 晶子のように、あの手で頭を撫でられたら好きになっちゃいますよ。仕事が忙しいときの、無精髭にメガネ姿もよし(風呂に入っていないこともある)。いくえみ男子のなかでも人気が高い。
おすすめ箇所 集英社文庫1巻P139~142、2巻P161~171
梶間洋希(『潔く柔く』)…禄の友人で、高校の教師。ひーさんと同じく、大きくてきれいな手をしている。
おすすめ箇所 マーガレット コミックス1巻P66~70、P79、2巻P84~87
個人的に好きなのが、赤沢禄(『潔く柔く』)。
少したれ気味の大きな二重の目で、とにかく笑顔がかわいい! 一見明るく人あたりのよい好青年だけど、過去の事件のせいで、どこか人を寄せ付けないところがある。好きになったカンナに対しては、気持ちを素直にあらわす。シャツイン(しかも、白!)&ボタン全部どめのバーテン姿や、後輩にヤキモチを焼いて「うっさいハゲ」とむくれる無邪気なところなど、禄ちゃんのすることなすことにキュンとさせられっぱなしです。
おすすめ箇所 マーガレット コミックス8巻P46~48、11巻P65~71、P127~P132、P157~159、12巻P121~123、13巻P132~133
この他にも、『カズン』の茄子川さんや『かの人や月』の深町など、まだまだ魅力的なキャラクターはたっくさんいます。
いくえみ男子について一緒に語ってくれる女子、求ム。(畑菜穂子)