「Kenjiは日本人だろ。だったら『カイロソフト』って知らないか?」

職業柄、海外のゲームクリエイターと話をする機会も多い筆者。
先日もアメリカ人からインターネット経由で、こんな質問が飛んできました。

残念ながら初耳だったので、詳しく聞いてみたところ、ケータイ向けコンテンツプロバイダーとのこと。んでもって先日、海外版がiPhoneアプリで配信された「ゲーム発展国++」(海外版は「Game Dev Story」)がハマるんだそうです。な、なんだってー!

さっそくダウンロードして遊んでみた次第。いやー、確かにこれ、おもしろいです! 自分の不明ぶりを深く恥じ入りました。しかし国産アプリの情報を、海外のクリエイターから入手することになろうとは……。

閑話休題。本作はゲーム会社の社長になって、ヒットゲームを開発していく経営シミュレーションです。資本金を元に社員を雇い、ハードとテーマを決めてゲーム作りを開始。完成したらお店で販売し、さらなるゲーム作りを進めていきます。

ゲームの完成度を高めるには、社員を教育したり、優秀な外注クリエイターの活用が不可欠。販売数を増やすには、宣伝を打ったり、イベントに出展するなどの営業活動も必要です。
年に1度のゲームコンテストで表彰されたら、特別ボーナスと共に知名度もアップ。ユーザーからファンレターが届くと、思わずほろりとほだされますよ。

ただし経営シミュレーションといっても、非常にカジュアルな内容なので、誰でも簡単に楽しめます。社員にはプログラマーやシナリオライターなどの職種があり、プログラム・シナリオ・グラフィック・サウンドのパラメータがあるので、バランス良くチームを編成しましょう。後はゲームのジャンルと内容、そして方向性を決定すれば、画面を見ているだけでゲーム開発が進んでいきます。この時の、ちまちましたキャラクターの動きが、非常にかわいいんです。

またゲームが進むにつれて、新ハードが発売されるんですが、雨天堂のファミオン、スーパーファミオン、ゲームボーヤや、セタガヤのウルトラドライブ、セタガヤターンなど、ゲーム業界のパロディがてんこもり。他社のゲームタイトルも、エニッスウェア社からドラガンシエスト、ガンプコン社からストラインファイター2といった具合です。ファミコン世代なら、にやりとすること請け合いです。

もう一つの特徴が、ゲームのテンポが非常に良いこと。現実世界ではゲームを1本作るのに、百名以上のスタッフで3~4年かかる例も珍しくありませんが、本作では4~6名の社員が3~4ヶ月で完成。んでもって百万本も夢じゃないと、夢のファミコンバブルを追体験できます。
この開発→販売のサイクルがクルクル回るので、ついつい止め時を失って、ずるずる遊んじゃうんですよ。いやー、利益率がハンパないっす。

もっとも、ゲームが進むにつれて、だんだん世知辛くなっていくんですよ。まずゲーム機に参入するときのライセンス料が非常に高額。スーパーファミオンで参入時に5億円、セタガヤターンなんて12億円も要求されます。プロ野球の球団買収じゃないんだから……。しかもゲーム機って悲しいことに、数年で世代交代しちゃうんですよね。せっかく高いお金を払って参入したのに、ゲームを1作作っただけで販売終了なんてことも。

そんな中で、比較的安いライセンス料と開発費で、長く開発できるゲームボーヤは秀逸の一言。また毎年3月末には社員の年俸を払う必要があり、ここで資金ショートしないように、資金繰りだけは要注意です。他社の下請けで資金を稼いだり、最後の手段としてバグを残したまま発売もできます。上から目線の雑誌レビューに、ムカッとすることも。
こんな風に、変にリアルなんですよね、このゲーム。

こんな風にドバタバと会社経営を続けて、20年が経過したらゲーム終了。総資産はハイスコアとして記録されます。エンディング時の状態は一部、再プレイに引き継がれるので、次回はもっとヒットが狙えるかも。優秀な社員を集めて適切に配置すれば、夢の自社ハードだって開発できますよ。社長自ら、自社ハード向けにゲームをプロデュースして大ヒット。めざせ、いわっち! って感じです。

とまあ、カジュアルゲーマーから業界人まで、幅広く楽しめる本ゲーム。実は最初に登場したのは1997年で、今はなきPC向けゲーム雑誌「Tech Win」に収録されました。2001年には続編も登場。ケータイアプリやソーシャルゲームを経て、iPhoneアプリそしてAndroidアプリにも繋がったという、足かけ10年以上も遊ばれている長寿ゲームなんです。そして、その評判は今や海外のゲームクリエイターにまで!

今でも公式サイトではPC版が無料配布されています。
ホント、継続は力なり、ですね。(小野憲史)
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