「ご使用後、水は流れませんが、清潔さを保つことができます」

という張り紙のある男性用の小便器を最近よく見かける。

「無水トイレ」というもので、言葉通り、オシッコをした後も水が流れることはない。
水洗トイレに慣れきった成人男性としては、オシッコの後に水を流さないというのは非常に違和感があり、便器から立ち去るときに「ホントに流さなくていいのかな?」という疑念がどうしても頭をよぎる。

この無水トイレは、全体的に、テコボコの少ないつるっとした印象であり、また、水道管もセンサーも取り付けられていないために、ものすごくシンプルであり、そのシンプルさが、「え、大丈夫?」という不安をさらにかき立てる。

この無水トイレはもともと、アメリカで発明されたものらしい。無水トイレを輸入販売する池田電業(株)に問い合わせてみたところ、「尿を流す水は、清潔さを保つことにも貢献しますが、実は、同時に、悪臭の原因にもなっているんです」とのこと。

オシッコには、尿素という成分が含まれている。この尿素自体はほとんど無臭なのだが、水と反応して、アンモニアが発生し、これがトイレの悪臭の重要な原因となる。
無水トイレの場合、水を流さないのだから、アンモニアの発生が抑えられて、臭わないのだそうだ(ただし、オシッコの中にも水分は含まれるので、完全にアンモニアの発生が抑えられるわけではない)。

また、無水トイレといえども便器は配水管とつながっており、配水管の中にある水とオシッコとが反応してアンモニアが発生するわけだが、無水トイレの場合、排尿口の下にトラップ(液だめ)がある。このトラップには、水よりも比重が軽い液体(シール液)が含まれており、シール液がオシッコを覆うため、排尿口からの悪臭も抑えることができるのだそうだ。

ただし、オシッコが直接かかる便器の側面はどうしても汚れるので、無水トイレが清潔さを保つには、日々のメンテナンスが必要不可欠。最低一回は、専用の洗剤で掃除する必要があり、また排尿口の下のトラップも定期的に交換が必要である。

ということで、「ご使用後、水は流れませんが、清潔さを保つことができます」という言葉は、「ご使用後、水が流れないので、アンモニアが発生しにくく、嫌な匂いがしません。
便器自体は汚れますが、毎日掃除をしてますので、清潔さを保つことができます」という意味なのである。
(珍満軒/studio woofoo)