“恋の吊り橋理論”というものがある。 揺れている吊り橋を渡るような危険な状況下で行動などを共にした二人は、そのときの緊張などからくる胸の興奮を恋のドキドキと間違え、恋愛関係に発展しやすい、というものだ。


少し昔の映画になるが、映画『スピード』にもそんなシーンがあった。
暴走バスに閉じ込められ、次第に惹かれあっていくキアヌ・リーブスとサンドラ・ブロック。そんな恋は長続きしないとわかりながらも、とまらない衝動に、二人は熱く唇を重ね合わせるのであった……。

思い出したら興奮してきてしまった。コーヒーでも飲んで気持ちを落ち着けようか。

「コーヒーを飲むと、カフェインの働きにより、体の副交感神経が高まり、リラックスすることができます。
しかし、カフェインは同時に交感神経も活性化させるため、血流がよくなり、心拍数もあがり、まるで恋で胸がドキドキするときのような、一種の興奮状態になるのです。 これはコーヒー版“恋の吊り橋理論”とも言えるのではないでしょうか?」

こう語るのは、J.C.Q.A.認定コーヒーインストラクター1級の鈴木雄介さん。コーヒー豆専門店『スズアコーヒー』に勤務する“恋と豆の伝道師”である。

ともあれ、カフェインの効能と“吊り橋理論”には似ている部分があるようだ。大げさに言えば、コーヒーを飲んでいるときの心理は、上記のキアヌ・リーブスやサンドラ・ブロックのようなドキドキ興奮状態に近いということなのである。

さすがに普段の生活で、『スピード』ほどの激しすぎる恋はいらないにしても、ある程度のドキドキ感は欲しいもの。
このコーヒー版“吊り橋理論”を応用して、素敵なデートを演出できないだろうか。

「デートにカフェは欠かせない場所。“とりあえずコーヒーでも”というのはデートによくある流れです。カフェインが効いてくるのは摂取後30分後ぐらいからなので、コーヒーを飲んで最初の30分はあたりさわりのない軽めのトークをすることをおすすめします。そしてカフェインが効いてきてから刺激的な恋のささやきをすれば効果抜群でしょう」

ふむふむ。恋のトークは焦らずに、ということみたい。
どんなコーヒーが特に効果あるの?

「一概には言えませんが、ブラックコーヒーはカフェオレやカフェラテなどと比べると含まれているカフェインが多く、“吊り橋理論”が発揮されやすいかもしれません。また、酸化した古いコーヒー豆よりも、新鮮な豆の方がカフェインの効き目はあると言われます。カフェや喫茶店で一番人気のコーヒーなどは、回転が早く新鮮で酸化もしていないため、胃にも負担が軽いので、おすすめです」

コーヒーがおいしければ自然とテンションも上がるもの。“吊り橋理論”をより効果的にするためにも、メニュー選びは大事な要素なのだ。

おいしいコーヒーを二人で飲みながら、カフェインの刺激に身を任せ、愛を語り合えば、“吊り橋理論”は大成功?

「カフェインが効くのは2時間ほど。ですから恋のささやきも2時間以内でおさめましょう。
第一、長時間のささやきは聞き手も疲れてしまいます。カフェで疲れてしまっては、デートとしては失敗です」

何事も刺激があるということは、心や体に負担もかかるということ。カフェインの取りすぎももちろん体にはよくない。デートもカフェインもほどほどのバランスがよさそうだ。 鈴木さん、ご指南ありがとうございました!
(銀座箱アレン)