「しもばしら」と聞いたら、何を思い出すだろう。
寒い朝、地面にできる小さな氷の柱。
踏みつけるとサクサクと音がして気持ちイイ。漢字で「霜柱」と書かれることが多いが、今日は植物の「しもばしら」を紹介しよう。こっちは「シモバシラ」とカタカナで記されることが多い。

「シソ科の多年草。高さ60cmほど。関東~九州に分布する日本の固有種」。本やネットで調べると、こんな紹介になっている。冬の間、茎は立ち枯れてしまうが、根はしっかり生きていて、根から吸われた水分が毛細管現象で茎まで吸い上げられる。水分は茎から染み出し、氷点下の外気に触れて白く凍りつく。これが繰り返されて一晩で茎の表面で氷の柱が成長、霜柱の「華」をつくる。「シモバシラ」の名前の由来だ。

目にしたことのない方が多いだろうが、実は東京近郊に名所がある。
年間250万人が訪れるという高尾山だ。では、行ってみようということで。

1月上旬の寒い朝。ケーブルカーに乗ろうと思ったら、すでに長い列ができていたので、歩いて登ることに変更。2時間ほど歩き、山頂を過ぎると賑わいもおさまって、「ここから奥高尾」の表示を過ぎ、さらに奥に向かうこと約30分。一丁平と呼ばれるあたりに、たくさんのシモバシラの華が咲いていた。形は蝶のようだったり、コンブのようだったり、さまざま。地面には普通の霜柱も成長していて、「シモバシラ」と「霜柱」の両方が満喫できた。

ところで、この冬は寒い日が続く。シモバシラの華も、さぞかし豊作(?)なのだろう。高尾ビジターセンターに聞いた。
「今年は雨が少ないので、例年に比べて小さめです」
どうやら、寒いからよくできる、という簡単なものではないようだ。
自然はなかなかに複雑。雨が降った後の冷え込んだ天気の良い朝が、観察に適しているという。
「12月から1月中旬までが見ごろです。2月に入っても見られますが、指先ほどの小さなものになるでしょう。(霜柱が何度も作られるうちに)茎がボロボロになってしまうこともありますが、季節が進むと地面まで凍ってしまい、水分が吸えなくなるのです」

残念ながら今年のピークは過ぎてしまったようだが、真冬の枯山ハイキングだけでも、風流が感じられてよい。シモバシラの観察には高尾山頂を巡る5号路、山頂奥の紅葉台、一丁平巻き道が適しているが、ケーブルカー清滝駅構内でも見られることがあるという。高尾山の奥の小仏城山からは、空気が澄んでいれば50km以上先のスカイツリーも見えます。
(R&S)
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