ぼくは札幌近辺に住んでるんですけどね。
駅に行くとよく見かけるんですよ。
「萌えプリン」
北海道発!”萌えプリン”西又葵オリジナル美少女イラスト ミルキーゴールド【超濃厚なめらかプリン】 - SEIKADO|青華堂オンラインショップ
最初見たときは「なんでも『萌え』ってつけて、西又葵の絵をつけりゃいいってもんじゃねえぞ!」とツッコミを入れたものです。
ところが話を聞くと、これがものすごくおいしいらしい。
む、しまった。偏見の目で見てしまった。単なる萌えパッケージアイテムではなく、ちゃんとしたおみやげなのね。
 
美少女パッケージ商品のはしはおそらくこれでしょう。
JAうご あきたこまち 美少女イラストパッケージ | イラスト 西又葵
西又葵さん仕事しまくりです。
以前から日本中、「なんとなくアニメの影響を受けたキャラクターが、ご当地のマスコットになったりお土産についていたりするのを発見するのが面白い」という流れはありました。たとえば1997年旧大和町(現佐賀市)の「まほろちゃん」なんかです。
まほろちゃん人気“復活” しおり目当てに東京からも
こちらはまさに「掘り出し物」的なキャラなんですが、大和町の職員もノリノリで定期的にホームページでイラストが公開されるくらい盛り上がっていました。
そこから派生したのか、あるいは火がついたのか、今日本中ほぼ全国にご当地萌えキャラが出現したのはある意味自然の流れなんでしょうな。


それを一同に集めたのがこの「萌えモノparadise」という本です。
表紙のサイケデリック感がすごい! 自分も萌え業界の中で仕事させていただいているのですが、大量に集めるとまるで前衛芸術の世界です。イッツジャパニーズオタクカルチャー。美少女でゲシュタルト崩壊しそうになります。
しかし中身をじっくり読んでみて心底納得しました。
「これは日本の地域ごとの、戦いなんだ」と。

それぞれのアイテムの絵と解説、通販ができるかどうか、イラストレーターさんのインタビューなどがびっちり詰まった本なのですが、特に注目したいのは「地域密着度」。ようはそのキャラクターアイテムがどれだけ地域の風土や食生活に根ざしているか、です。思った以上に「とりあえず売れそうなものに萌えキャラ取ってつけてみました」ではなく「うちの地域のこれは本当にいいものなんだ、なんとか話題になってほしい!」という渇望のようなものがすごい感じられるんですよ。
特に熱いのはお米とお酒。どちらもその地域で、一番胸をはって出したいものじゃないですか。しかしぶっきらぼうに袋に文字が書いてあるだけでは、どんなに手間ひまかけて育てられて美味しくても、知名度がほぼ0なわけです。

そこで美少女の登場です。もちろんイラストも適当なものではなく、全国から募集をかけたり著名イラストレーターを起用したりしています。
地方にとって自らの町の知名度が「0」であるのと「1」であるのは全く違うのです。そのために総力をあげて「良い品質のもの」を「萌えキャラクターで」押し出そうとする熱意の塊がぎっちりこの本に詰まっていました。

確かに今「萌えアイテム」自体は一見飽和状態に見えます。しかしそれは情報を断片的に聞いているからなんだなーと気付かされます。だって、その地域においては「唯一無二」の子たちなんですよ。
個人的に面白いなーと思ったのは知多みるく。
知多みるく・知多娘。公式サイト 愛知県知多半島イメージキャラクター
愛知県知多半島の活性化、および若者の就職支援のPRキャラクター。これが思った以上に大きなプロジェクトになっており、CDまで出るそうです。一番驚いたのは「知多みるく履歴書」が出ていること。
その発想はなかった!

自分も地方に住んでいた経験があるので「この町全然なんにも話題にならない」という寂しさは痛感している人間です。だからこそ、美少女キャラで少しでも自らの町が話題になってくれれば、そこから興味を持ってこの地方のよさを知ってくれるはず!という祈りが詰まったこの本、非常に今後の日本の文化形態を知る指針になるのではないかと思います。
そもそも日本人自体が、神話時代から何にでも萌えられる民族なので、「萌えアイテムが飽和している」状態から「ご当地キャラクターはあって当然」みたいな時代にシフトチェンジしていく可能性すら考えられる……って言ったら言い過ぎですかね?(たまごまご)
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