一方韓国では、特に中高年の方にとっては、モーニングコーヒーといえば「コーヒーに生卵を落としたもの」であるという。あの、個人的には別々に味わいたいのですが……。
韓国でコーヒー教室を受け持つ先生にお話をうかがった。コーヒーに生卵を落とす、韓国のモーニングコーヒー(韓国語で「モニンコッピ」)は、70~80年代によく飲まれ、10年ほど前まではタバン(=昔ながらの喫茶店)などで、その姿を見かけることができたそう。
コーヒーに黄身だけを落とすのがポイントで、場合によってはゴマ油を入れることもあるとか。「あまった白身でジョン(チヂミのような焼きもの)を作って、夕方に売っていたものですよ」と先生。
「当時のコーヒーは質も悪かったはずなのに、意外とおいしく思った記憶があります」
現在のソウルでは、韓国モーニングコーヒーの姿を見かけることは難しいが、「今でもタバンでお願いすれば、作ってくれるかも」という先生の話を聞き、私もその追憶の味を一度味わってみたく、いかにも古びた外観のタバンに入店してみた。
ソウルでもお年寄りの姿が目立つ、楽園洞に位置するそのタバンは、外から見たひなびた感とはうらはらに、店内は中高年の溜まり場となっており、一種独特な活気を帯びている。