皆さんは「モーニングコーヒー」と聞いて、何を期待するだろう。カフェイン多めの朝専用ブレンドコーヒーを連想する人もいれば、コーヒーにトーストやサラダ、ゆで卵がセットになった、いわゆる「モーニング」を連想する人もいるに違いない。

一方韓国では、特に中高年の方にとっては、モーニングコーヒーといえば「コーヒーに生卵を落としたもの」であるという。あの、個人的には別々に味わいたいのですが……。

韓国でコーヒー教室を受け持つ先生にお話をうかがった。コーヒーに生卵を落とす、韓国のモーニングコーヒー(韓国語で「モニンコッピ」)は、70~80年代によく飲まれ、10年ほど前まではタバン(=昔ながらの喫茶店)などで、その姿を見かけることができたそう。
コーヒーに黄身だけを落とすのがポイントで、場合によってはゴマ油を入れることもあるとか。「あまった白身でジョン(チヂミのような焼きもの)を作って、夕方に売っていたものですよ」と先生。

「当時のコーヒーは質も悪かったはずなのに、意外とおいしく思った記憶があります」

現在のソウルでは、韓国モーニングコーヒーの姿を見かけることは難しいが、「今でもタバンでお願いすれば、作ってくれるかも」という先生の話を聞き、私もその追憶の味を一度味わってみたく、いかにも古びた外観のタバンに入店してみた。

ソウルでもお年寄りの姿が目立つ、楽園洞に位置するそのタバンは、外から見たひなびた感とはうらはらに、店内は中高年の溜まり場となっており、一種独特な活気を帯びている。
注文を取りに来た水商売風のお母さんに、モーニングコーヒーはありますかと聞くと、「コーヒーに卵を入れればいいんでしょ? メニューにはないけど、できますよ」との答え。「時々、お年を召したお客様が注文されるんですよ」。
やっぱり皆さん、朝に飲むんですか? と質問すると、「朝も昼も飲んでいかれますよ」とのことである。

長く待つことなくすぐに登場したモーニングコーヒーは、一見すると、思ったより普通のコーヒーのよう。
表面は何かクリーミーな感じも受けるが、例えばインスタントラーメンに落とした卵のように、固形のものが浮いているわけではない。
恐る恐る一口飲んで、衝撃を受ける。これは……インスタントコーヒーと生卵を混ぜた味、という説明が最もしっくりくるような、そのまんまの味である。最初は脳がうまく情報を処理できず、違和感ばかりが先に立ったが、こういう味だと納得してしまえば飲めなくもない。砂糖はもともと入っていなかったが、お好みで砂糖を加えると、もっとスムーズにいただけたかもしれない。
ただ、最後の方に固まった卵の一部分が出てきた時は、その食感がどうも慣れずに残してしまった。
まだまだ修行が足りないようである。

韓国の最近の若者にもすっかり馴染みのないものになってしまった、昔ながらのモーニングコーヒー。作るのは簡単そうだし、これ一杯で忙しい朝の栄養摂取はばっちりなので、皆さんもどしどし試してみてはいかがだろう。
(清水2000)