先日コネタで、小学校のローマ字学習について書いたが、実際、学校の現場で混乱はないのだろうか。これについて、ある小学校教諭は言う。


「ローマ字学習が3年生からになったのは、パソコンなどを使う機会が増え、ローマ字を知らないとローマ字入力ができないためとなっています。今までの4年生の学習でも、配当時間が少ないためあまり定着していなかったけれど、学習の機会が早まれば少しは身に付くようになるかもしれないなあと楽観的に考えています。ただ、今、3年生の担任の先生は『なかなか身に付かない』とは言ってましたよ」

小学校での外国語活動が始まっているが、これにはまた別のねらいがあると言う。
「小学校の外国語活動は、スキルを身につけさせることがねらいではありません。『コミュニケーション能力の素地を養う』というのが目標になっています。そのため、文字を書いたり読んだりと言うことより、先生の発音をまねしたり、ゲームをしながら発音したり、歌ったり会話したりという活動に重点が置かれています。実際の授業でも、読んだり書いたりはあまりさせません」

アルファベットを習うのも6年生からで、5年生のうちは挨拶や数の数え方、物の名前、クイズ大会、好きな物調べなどの学習が中心だそう。「文法」などはやらず、単語を教えるときも絵カードと発音程度で、絵カードにはアルファベットがないものが多いのだそうだ。

ここまで「文字」をやらないのも不思議に思えるけれど……。
「いわゆる“中1ギャップ”というものの対策かもしれません。教える側としては『コミュニケーション能力なら日本語でも育てられるだろう』とか、さらに『日本語も正しく使えないのに時間を割いて外国語をやる意味あるのかなあ』と思ったけど、始まってしまえば波に乗るしかない仕事ですからね」
このことに関しては、文科省の言い分としては、「『My name is~』は5年生でも恥ずかしくなく言えるけど、日本語で『わたしは~です』なんて当たり前すぎてコミュニケーションする気にならない。だからみんなゼロに近い土台のところからスタートしましょう」ということらしい。


「実際、子どもたちは、ゲームは楽しいけど、英語は未知のものなので、単語練習をしても苦手意識の子が多いです。また、塾に行っている子がほとんどいない地方なので、『TAKE(竹)をテイクと読む』(コネタ既出)子はいません(笑)」

「ローマ字」学習については、学校や先生によっても考え方の違いがあるよう。
小中連携の中学校の英語教諭は言う。
「ローマ字をしっかり教えてくれないと中学校に入ってから困るんですよ。ローマ字は単語を読むときの発音の基礎になりますから」
とはいえ、小学校の外国語は書かせることやスキルアップを目標にしていないので、これは難しい面もある。

さらに、ある高校の英語教諭の意見は……。
「ローマ字は単語の発音のジャマになります。英語の学力があまりない場合、ローマ字読みしちゃう子がいるんですよ」

ローマ字がないと不便なことは、確実にある。とはいえ、外国語学習の「英語」と国語学習の「ローマ字」との関係において、教育現場でも混乱があるようだ。
(田幸和歌子)
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