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パンダが動物園に来る理由

こうしたパンダを使った外交は、第2次大戦後の内戦で国民党に勝利し、中華人民共和国を建国した共産党政府にも引き継がれた。共産党政府は1950年代、新設した北京動物園で庶民にもパンダを見られるようにするとともに、同じく社会主義国で建国当初の中国とは友好関係にあったソ連にパンダを贈っている。ただしその頃から徐々にソ連との関係は悪化、のちにアメリカや日本など西側諸国との接近をはかるようになった中国は、その過程で各国にパンダを贈呈していく。

本書を読んでいてとくに印象に残ったのは、イギリスのロンドン動物園で飼育・展示されていた雌パンダの「チチ」だ。チチは中国から直接イギリスに贈られたわけではない。そこにはオーストリアのデンメルという動物商が介在していた。デンメルはアフリカの動物と交換で北京動物園よりパンダを譲ってもらうことに成功する。その背景には、オーストリアが冷戦下にあって東西どちらの陣営にも属さない中立国だったこともあるようだ。

ともあれ、デンメルが1958年に入手し、チチと名づけられたパンダは当初、アメリカの動物園に売却される予定だったものの、中国に対し禁輸政策をとっていたアメリカ政府に阻まれる。しかたなくデンメルはコペンハーゲン(デンマーク)、ロンドンと巡回しながらチチを展示するのだが、やがてその人気に目をつけたロンドン動物園に買い取られることになった。

当時、中国以外にパンダを飼育しているのは、ロンドン動物園とソ連のモスクワ動物園しかなかった。1960年以降、チチは発情を繰り返すが、ロンドン動物園から雄パンダの提供を求められた中国側は、野生のパンダは保護のため捕獲を当面禁止しているとの理由からこれを断る。チチは結局、モスクワ動物園の「アンアン」と見合いをすることになる。アンアンとしても、中ソ関係が悪化している以上、チチしか相手がいなかったのだ。66年と68年に行なわれた見合いはいずれも失敗に終わったものの、冷戦下で東西両陣営が協力した珍しいケースとして各国のメディアに注目された。それまでほとんどパンダが知られていなかった日本でも、海外の面白いニュースとしてたびたび報じられている。...続きを読む

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