「80年代以降、日本という国からイメージされるものはアニメです。『聖闘士星矢』『北斗の拳』『ドラゴンボール』などがテレビで放映され、子供たちは夢中になりました。しかし経済的な日本バッシングの時期も重なり、日本のアニメもその影響を受けました」
トリスタンさんによると、日本アニメに夢中な子供を持つ親は、どの文化で子供たちを育てるのかという問題に直面したそうだ。なぜなら日本アニメはフランス社会の道徳意識から離れているという。
「暴力描写で特に問題となったのが『北斗の拳』です。そして日本では問題にならないことが、フランスでは問題になります。例えば、『キン肉マン』に登場するブロッケンJr.。彼はナチス・ドイツを彷彿とさせる風貌なのに正義超人です。これは欧州では認められない。
結果、学校の父母会などで日本アニメは危ないという運動が起こり、突如日本アニメが放映されなくなった時期をもあったそうだ。しかし子供からの需要はなくなったわけではない。そこでフランスの出版社が、今度は日本の原作漫画を売り出し、再び日本アニメはフランス社会にあらわれたという。
一方で、日本人がフランスに対して持つポジティブなイメージが、フランス人の日本への好感度をあげている面もあるそうだ。
「フランス人は日本における自分たちのイメージが好きです。おしゃれで素敵なフランスというもの。若者世代のなかには自分の国が嫌いだという人も多い。しかし日本を見れば、自らの理想の姿が反映されている。もちろんそれは幻想だけれども、コンプレックスを忘れられるのです」
フランス人にとっての日本の印象は、「自らの伝統を守りつつ科学技術など超現代的な社会も作り上げた国」というもの。トリスタンさんによると、今の一部若者世代には日本への憧れがあるそうだ。それは一世代前のフランス人が、アメリカに抱いていたような憧憬だという。紆余曲折はありつつも良好な関係を続ける日仏関係。
(加藤亨延)