本書にはこんな一節が登場する。
<なんとなーく始めて、それで、なんとなーく結果を出していけば、誰もいまさらなんにも言わない。いままでの慣習や常識が破られたことに、拒否反応を起こすこともない>
例えば、社内でアイディアを通したいとき。
「これをやりたい!」と熱情にまかせて突き進むと、相手も身構える。なんだかんだと理由をつけて却下されたり、先延ばしにされてしまうことがある。もし、どうしてもやりたいなら、水面下で進めたほうが得策だと藤村さんはアドバイスする。
企画書や申請書はなるべく提出しないのが藤村さんのモットー。<なだらかな坂道を、なんとなーく、ゆるーく下っていく>ように、<石を一個一個積み上げていくような感覚>で物事を進めていく。
“どうでしょう”で見る藤村さんは誰よりも楽しそうだ。
<僕はあまりにストレスに弱くて、ストレスだと思った瞬間、そこから道を変えてしまうところがある>
自分がやりやすいよう、さりげなく方向変換。苦手なことは、それを得意とする人に任せる。一方、他人にはストレスだが、自分にとっては何でもないこともある。そんなときは肩書や部署といった垣根を越えてその仕事を買って出る。そうすると、物事が円滑に進むというのが藤村さんの持論だ。
<結局、すべては「役割」、だと思うのだ>
<ウルトラマンごっこをやるときに、ウルトラマンをやったことがない>という少年時代。大学の新歓コンパで誰よりも先に吐いてみせたというラグビー部主将時代。本書には過去と現在、行ったり来たりしながらさまざまなエピソードが登場する。しかし、常に自分の立ち位置を意識し、その役割をまっとうするというスタイルはずっと変わっていないという。
型破りに見えて、じつは地に足がついている。
さて、次回はいよいよ、藤村ディレクターご本人が登場。本書や『水曜どうでしょう』新シリーズ、震災後の心境とこれからについて、じっくり語っていただきます。
(島影真奈美)