明日6月21日は、Wiiウェア「LA-MULANA(ラムラーナ)」の発売日だ!
「ラムラーナってなぁに?」って人は、エキレビライターの米光一成さんが昨年、「ラムラーナ」を開発したアスタリズムの楢村匠さんと対談してるのでそっちを見てね。

で、その「ラムラーナ」の公式サイトで先週から、楢村さんが作った「公式ガイドブック(基礎知識編)」が配布されてるんだけど、これがとにかくすごいすごい!
なにがどうすごいのか?
まず電子書籍なのに、なんか中古ゲーム屋で買ってきたみたいにボロボロ!
電子書籍なのによく見ると裏のページがちょっと透けて見える!
中の文章も「あいているところは君自身が冒険の中で見つけてみよう」とか「博士の日記はここで終わってしまったが、この先も冒険はまだまだ続く」とか、肝心なところが投げっぱなし!
とにかく電子書籍なのに、まるでファミコン時代の攻略本を手に取っているような、レトロ感溢れる仕掛けが満載。
これ、ふつうに書籍として発行するよりよっぽど手間がかかってるよ!

いったいなぜこんなモノ(褒め言葉)を作ろうと思ったのか? せっかくなので開発元のアスタリズムにおじゃまして、楢村さんからいろいろとお話をうかがった。

「レトロ風」へのこだわり

――このガイドブックって、どうやって作ったんですか? 表紙のところ、ちゃんとホチキスで綴じてあったりしますよね(写真1)。
楢村 これ実は合成なんですよ。ほかの本からホチキスのところだけスキャンして、切り抜いて貼り付けたんです。
――えええ! 全然わからない。一度ホントに製本して、それをスキャンしたのかと思った。じゃあ、この紙の微妙なふくらみとか、汚れとかは?
楢村 これもね、僕がぜんぶ手で塗ってるんです。デザイナー時代に、テレビドラマのホームページを担当していたことがあって、そこに昔の古文書とかがよく出てきたんですよ。だからこういう、よごしてそれっぽく見せるテクニックをいっぱい知ってるんです。
――言われなきゃわかんないなあ。
楢村 あと画面写真も、わざわざ一度テレビに映して、それをじかにカメラで撮影してたり(写真2)。
――そうそう、これもすごい。
昔のゲーム雑誌や攻略本って、テレビの画面を直撮りしてたんですよね。だから拡大すると画素のツブツブが見える。
楢村 最初は加工しようと思ったんだけど、なかなかこの味が出なくて。だったらもう実際に撮影しちゃった方が早いなと。
――こだわるなあ。
楢村 このマップとかも、わざとグリッド機能をオフにして、一枚一枚全部手作業で並べてるんですよ(写真3)。だから微妙にズレてたり、傾いてたりする。あと部分部分で明るさを変えてたりとか。
――このツギハギ感がリアルですよね。あとびっくりしたのが、裏側のページがちょっと透けてるところ(写真4)。
楢村 これもデザイナーさんからレイアウトがあがってきたら、それを一度ぜんぶ画像化して、裏側のページをうっすら重ねて、よごしを入れて、またデザイナーさんに戻す、ってやり方でやってます。
――この裏写りって、全部のページでやってます?
楢村 やってます。

――これ作ってるとき、楽しかったでしょう。
楢村:楽しかったです(笑)。

ガイドブックを読むのもゲームの一環だった

――製作にかかった時間ってどれくらいですか?
楢村 準備から言ったら、数ヶ月はかかってます。
――そもそもなんでこんなものを作ろうと思ったんですか。
楢村 うーん、いまの攻略本って、昔に比べて味気ないと思うんですよ。うちは小さいころ、親がなかなかゲームを買ってくれなくて、かわりにこういう本を見ながらいろいろ想像して楽しんでたんです。
――あああ、それはすごいわかる。あのころはゲームの記事や画面写真を見てるだけで楽しかった。
楢村 それをやりたかったんですよ。コスト面で言えば思いっきり無駄なことをしてるんですけど、遊んでくれた人が少しでも喜んでくれたらそれでいい。もちろん読み物としてもちゃんと楽しめるように作ったつもりなので、そういう時代を知らない人でも楽しんでもらえるかなと思います。
――うちもゲームには厳しくて、遊んでいいのは日曜の朝だけだったんですよ。
だから新しいゲームを買ってもらっても、すぐには遊べない。かわりにどうしたかって言うと、説明書をもう、すり切れるくらい隅々まで読み込むんです。
楢村 うちも似たようなもんでしたよ。休みの日に1時間しか遊ばせてもらえなくて。だからこういう本を読むのもゲームの一環だった。
――「ラムラーナ」もガイドブックだけ先に配信したじゃないですか。だから今は「ゲームが遊べないから、かわりに説明書を熟読してる」状態。もどかしいんだけど、でもワクワクしちゃう。
楢村 そう言ってもらえるとうれしいです(笑)。

「ぜんぜん完全攻略になってない」完全攻略編

――いま配信されてるのは「基礎知識編」ですけど、下巻(完全攻略編)はいつごろ?
楢村 ソフトが出てもう少ししたら、追加のダウンロードコンテンツを発表する予定なので、そのときに合わせて下巻もリリースしようかなと。
――下巻は有料なんですよね。
楢村 正式な価格はまだ決まっていないんですけど、たぶん300円くらいで。
おもしろいから300円、500円、1000円ってボタンをつけておいて「好きなの買って!」ってのもこの際アリかなと。
――基礎知識編も300円、500円、1000円の「寄付版(※)」がありますよね。
楢村 あれ、意外に1000円のが売れてるんですよ。年齢的に、それなりにお金を持ってる年ごろなのかもしれない。「ラムラーナ」を買ってくれるような人って。
――ニコニコ動画でたまに「振り込めない詐欺」ってタグがついてる動画がありますけど、真のファンはもう、お金を払うことそのものがよろこびなんですよ。
楢村 うんうん。
――下巻はもう、どうしても解けない人のためのヒントブックみたいな感じですか?
楢村 いや、これは上巻にも言えるんですけど、これを読んで手順どおりにプレイすればクリアできちゃう、っていう内容にはしてないです。もともとそんなに一本道の手順でクリアできるようなゲームでもない。
――じゃあ「見ながら遊ぶともっと楽しめる」くらい?
楢村 見ながらでもいいですし、遊ぶ前に読み尽くしちゃったりしても楽しいと思います。昔の攻略本って、最後の最後は「この先は自分の目でたしかめよう!」だったりするじゃないですか。
――「ここから先は根気だ!」みたいな。

楢村 そうそう。あんな感じで、ぜんぜん「完全攻略」にはなってない。「ラムラーナ」自体、何年も前にオリジナル版が出ているので、調べれば攻略サイトはいくらでも出てくるんですよ。だから完全な解法はそちらにまかせればいいやと。
――早く下巻も読んでみたいなあ。
楢村 いま必死に作業しているところなので、がんばります。

※「基礎知識編」自体は無料だが、売り上げを全額日本赤十字社に寄付する「寄付版」も販売中


……ということで、ファミコン世代二人による攻略本談義はまだまだこのあとも続きます。インタビューの後編(6/23公開予定)では、実際に「ラムラーナ」で遊ばせてもらったりしつつ、近年のゲーム開発事情などについても踏み込んでいくのでお楽しみに。

遺跡探検考古学アクションゲーム「LA-MULANA(ラムラーナ)」は、Wiiウェアで6月21日配信予定。価格は1200Wiiポイント。
(池谷勇人)
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