肩こりが、歳を重ねるごとにひどくなっている気がするのは筆者だけだろうか。たしかに、筆者は普段から姿勢が悪い。
その悪い姿勢のまま、何時間も仕事をするものだから、当然肩にも相応の負担がかかってしまう。運動不足で血流もおそらく悪い。肩がこるのも当然といえよう。

この肩こりの解消にいいのが、バンザイの姿勢で寝ることだと聞いた(妻から)。なるほど、肩の血流が良くなって、肩こりに効果的な気がする。よし! 今夜はバンザイの体勢で寝るぞっ!

元来寝ぞうのいい筆者。バンザイをキープしたままで朝を迎えた。ふむ。ものすごい効果を感じるわけではないけれど、たしかに肩が軽くなった気はする。まあでも、バンザイで寝るってなんだか無防備だよな。ここで敵に攻撃されたらひとたまりもない。と、そのとき、つむっていた眼をまぶしい光が襲った。
ウワッ!? なになにっ!?

なんてことはなかった。妻がフラッシュをたいて筆者を写真撮影したのだ。なんだよ朝っぱらから、と文句をつけてみると、「だって親子で同じ姿勢をして寝てたから」と妻。同じ姿勢? ふと横を見ると、生後一ヶ月の息子も筆者のマネをするかのようにバンザイをして寝ていた。

いや、マネをしていたのは筆者の方だろう。息子は、寝ているときの大半、このバンザイの姿勢である。これは何もわが息子ばかりではなく、ウチの上の子もそうだったし、他の赤ちゃんも同様のようだ。ではなぜ、赤ちゃんの多くがバンザイ寝をするのだろうか?

鎌倉市にある、息子が生まれた産院の助産師に話を聞いてみたところ、なんでも赤ちゃんは布団から手を出して寝るものらしい。これは、赤ちゃんが手から放熱して体温調整を行うためだとか。なるほど、たしかに赤ちゃんは大人よりも体温が高い。そして、寝るときにはたいてい手を布団から出している。その流れでバンザイの姿勢になるのではないか、ということだった。


また、胎児だった頃の姿勢の反動という説もある。母親のお腹の中で長い間丸まっていた赤ちゃん。その狭いところから出てきた反動で、自然と手足も大の字に広がり、バンザイの姿勢になるのではないかと。実際、大人が胎児のように丸まった姿勢を取り、解放すると手足は自然と大の字になる。それと同じことではないかと。

別の助産師にも話を聞いてみると、「リラックスしているからではないか」との回答を得た。この無防備な姿勢で寝られるのは、親や兄弟が近くにいて、安心しきって寝ている証拠だろうと。言われてみると、不安にかられたり欲求があるなどして泣いているときの赤ちゃんは、バンザイの姿勢をしていない。

そう考えると、親としてはウレシイものだ。親のことを、赤ちゃんは信頼しきってくれていることになる。そうかそうか。息子よ。
キミも父のことを信頼して、安心して、リラックスしてくれているのだね。だから、バンザイで寝ているのだね。なんだか愛しくなって抱っこをすると、息子はバンザイをやめ、突然火がついたように泣き始めた。あれ? 父への信頼はいずこへ……?
(木村吉貴/studio woofoo)
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