時速100kmを超す強風が吹き荒れたここドイツのとある日、日本語の授業に出かけました。受講生と天気談義に花を咲かせていましたら、ある受講生が言いました。
ドイツでは、ひとつひとつの気圧に名前をつけて区別する習慣があります。日本の台風が一号、二号と呼ばれるのと似ていますが、ドイツでは、通し番号ではなく人名(ファーストネーム)を使います。ドイツの天気予報を聞いていると、「高気圧トーマス」とか「低気圧マリア」など、 まるで気圧が仲良し友達でもあるかのようにファーストネームで呼んでいます。
気圧に名をつける習慣は1950年代に始まりましたが、2002年からは、気圧が一般販売されるようになりました。正確には、気圧の命名権を買うことで、その気圧に好きな名前をつけられるようになったのです。名前の選択は購入者に一任されていますので、自分の名をつけてもよし、その年に生まれた初孫の名前にしても、また、冒頭に触れたように、親友への結婚祝いに命名権をプレゼントしてもよいわけです。
それでは、気圧を買うとどんなメリットがあるのでしょうか? 購入者には、購入証明書、購入した気圧の発生経過や掲載天気図が贈呈されるほか、テレビの天気予報などで「自分の名を冠した気圧」が天気図に登場し、その気圧名を連呼してもらえる可能性があります。ましてや、「自分の名の気圧」がハリケーンや洪水の引き金になろうものなら、その気圧の名は天気史に刻まれる可能性さえあり得るわけです。
気圧に命名するにあたっては、男女平等の原則もきちんと考慮されており、偶数年には高気圧に男性のファーストネームを、低気圧には女性のファーストネームが充てられることになっており、奇数年には男女が入れ替わる規則になっています。
気圧の販売主は、ベルリン自由大学附属の気象研究所で、命名権の売り上げは、大学生の気象観測活動に充てられるとのこと。肝心の販売状況ですが、2012年に発生が予測されている高気圧の命名権は、何とすでに完売状態。
国外からも購入申し込みが届くようで、かつて20世紀フォックス社が3つの気圧の命名権を同時に購入し、それぞれ「ルーク」「レイア」「ヨーダ」と名付けたというエピソードは有名です。余談ですが、このうち低気圧ルークと高気圧レイアは、くしくもスターウォーズ新作公開直前に、同時に天気図に登場するという快挙を成し遂げたのだそう。大空を制する映画だけに、気圧をコントロールするくらい朝飯前だったのかもしれません。
最後に、気になる購入費用ですが、競争率の高い高気圧は299ユーロ(およそ3万円)、低気圧は199ユーロ(およそ2万円)。過去には日本からの購入者もいたそうですので、日本語のファーストネームも受け付けてもらえそうです。一生に一度、ドイツの天気図に載ってみますか?
(柴山香)
「私の友人が、結婚祝いに高気圧をプレゼントしてもらったことがあるんですよ」と。
ドイツでは、ひとつひとつの気圧に名前をつけて区別する習慣があります。日本の台風が一号、二号と呼ばれるのと似ていますが、ドイツでは、通し番号ではなく人名(ファーストネーム)を使います。ドイツの天気予報を聞いていると、「高気圧トーマス」とか「低気圧マリア」など、 まるで気圧が仲良し友達でもあるかのようにファーストネームで呼んでいます。
気圧に名をつける習慣は1950年代に始まりましたが、2002年からは、気圧が一般販売されるようになりました。正確には、気圧の命名権を買うことで、その気圧に好きな名前をつけられるようになったのです。名前の選択は購入者に一任されていますので、自分の名をつけてもよし、その年に生まれた初孫の名前にしても、また、冒頭に触れたように、親友への結婚祝いに命名権をプレゼントしてもよいわけです。
それでは、気圧を買うとどんなメリットがあるのでしょうか? 購入者には、購入証明書、購入した気圧の発生経過や掲載天気図が贈呈されるほか、テレビの天気予報などで「自分の名を冠した気圧」が天気図に登場し、その気圧名を連呼してもらえる可能性があります。ましてや、「自分の名の気圧」がハリケーンや洪水の引き金になろうものなら、その気圧の名は天気史に刻まれる可能性さえあり得るわけです。
気圧に命名するにあたっては、男女平等の原則もきちんと考慮されており、偶数年には高気圧に男性のファーストネームを、低気圧には女性のファーストネームが充てられることになっており、奇数年には男女が入れ替わる規則になっています。
気圧の販売主は、ベルリン自由大学附属の気象研究所で、命名権の売り上げは、大学生の気象観測活動に充てられるとのこと。肝心の販売状況ですが、2012年に発生が予測されている高気圧の命名権は、何とすでに完売状態。
それもそのはず、一年間に発生する高気圧の数が少ないため、購入は狭き門なのです。逆に発生数が多い低気圧は、購入数にまだ余裕があるようです。
国外からも購入申し込みが届くようで、かつて20世紀フォックス社が3つの気圧の命名権を同時に購入し、それぞれ「ルーク」「レイア」「ヨーダ」と名付けたというエピソードは有名です。余談ですが、このうち低気圧ルークと高気圧レイアは、くしくもスターウォーズ新作公開直前に、同時に天気図に登場するという快挙を成し遂げたのだそう。大空を制する映画だけに、気圧をコントロールするくらい朝飯前だったのかもしれません。
最後に、気になる購入費用ですが、競争率の高い高気圧は299ユーロ(およそ3万円)、低気圧は199ユーロ(およそ2万円)。過去には日本からの購入者もいたそうですので、日本語のファーストネームも受け付けてもらえそうです。一生に一度、ドイツの天気図に載ってみますか?
(柴山香)
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