伊藤文學にコメント頼むとか、どういうことなの!
えっ、先走りすぎて意味がわからんですって? はい、すいません。
説明します。
伊藤文學はゲイ雑誌「薔薇族」の創刊編集長です。もう少しで通巻400号を迎えそうだ(『薔薇族』編集長 伊藤文學の談話室「祭」)というこの雑誌、読んだことはなくても名前は聞いたことあるでしょう。
さてこの雑誌に掲載された有名なマンガ家といえば、ヤマジュンこと山川純一です。左の画像にもありますが「やらないか」ですよ。このつなぎのゲイマンガのタイトルは「くそみそテクニック」。
ヤマジュンってどうしてもネットではネタにされることが多いのですが、マンガは人間の心理や生き方に切り込んだ深いものが非常に多い!詳しくはウホッ!!いい男たち~ヤマジュン・パーフェクトやウホッ!!いい男たち2 ヤマジュン・未発表作品集を読むとわかると思います。
で、このヤマジュン、本名や連絡先など個人情報を一切明かさず、現在も消息すら不明という幻の作家なのですが、そのヤマジュンに直接会ったことがあるのはなんとこの伊藤文學だけなのです。
そんな伊藤文學が帯で語ります。
「もしかしたらこの作者(内々けやき)こそヤマジュンかもしれない……!!」
そんなわけないだろ!
と思いつつもこれだけの人に帯を書かせちゃうこの作品一体なんなの!?
ピンと気づいた人もいると思いますが、『しょたせん』の表紙は昔ながらの少女漫画の体裁をとっております。
真ん中にいる男の子がどうしても目立ちますが、その後ろにいるモノクロの青年が主人公。
あれ?これどこかで……あっ、「立原あゆみ」立ちじゃないか!
前置きが非常に長くなりましたが、この作品の一番の面白さ、ゲイ漫画とヤンキー漫画のパロディがいかに濃いか抜きに語れなかったのですよ!
主人公の西尾は札付きの不良ですが、そんな彼のもとにやってきたのがこのショタ少年風……の先生(23)です。
うそだ! 23とかないわ!
でもこのマンガのネタの数々を見ていたらそんなのどうでもよくなるんです。まわりの全部がネタすぎて。
流れとしてはこの西尾がショタ先生に惹かれて更生(?)していく話なんですが、一つ一つがオマージュの宝庫。
まずキャラ名がほぼ全員パロディです。
ハードゲイを名乗る暴れ不良の名前が田亀原 吾郎。
レディースで実は隠れBL好き少女の名が立原 歩。
痛覚のない無痛(ノーペイン)こと杉作 陽太郎。
伝説の漢、不良の神様、手塚 一騎。
はい。
元ネタは考えてみてください。
ゲイ漫画・ヤンキー漫画を考えるとだいたい分かると思います。
マンガのシチュエーションもパロディ満載です。
たとえばヤンキー漫画に欠かせない、アレがいっぱい出てきます。
「!?」です。
これ、……ヤンキー漫画見ている人なら分かると思いますが、全然分からない人にはなんのこっちゃですよね。
コマにフォントで「!?」って入ってるんですよ。それが今作ではいっぱい。ものすごくたくさん。
また、とあるところには20世紀にはやった免許証風のアレのパロディも。あれですよ。懐かしいね。20歳くらいの方だとわけわからない世界ですね。
レディースの立原歩の作った同人誌の表紙やキャラクターの能力ゲージなど遊び要素満載。もちろんヤマジュンネタも標準装備。ものすごい勢いでネタが押し寄せてきます。
まあそれでも、不良の西尾がショタ先生に導かれて更生していくんだからいい話なんでしょう? と思いたいところですが、そんなことありません。
むしろ更生ってよりショタコンに目覚めていく話です。
とにかくかわいいショタ先生。西尾が彼と一緒にいるとガチ勃起してしまう、というあたりもうアウトです。
いやホームランです。よかったね!
一人の青年が、いろんなヤンキーやゲイネタにもまれながらショタに覚醒する『しょたせん』。
ショタ先生の略なんですが「美少年(ショタ)専門」の略でもあります。
徹底してこれをやり抜いてくれるのなら……そりゃ伊藤文學のお墨付きなわけです。
色々ネタについてばっかり書きましたが、ギャグマンガとして面白い作品なので、気軽に手にとって読んでみてください。
(たまごまご)