『特殊能力アビル』の電子書籍版がすごいよ! 腕力つくよ!
2003年から8年間、「TVBros.」で連載された(今も連載中です)全202話を完全収録した電子書籍版『特殊能力アビル -裸-』(iPad/iPhone対応/アンドロイド版は2本構成)。
著者は、『おやつ』『俺に血まなこの花』『ドリル園児』のおおひなたごう。

「空耳」「未来感知能力」「過去感知能力」「オナラ集め能力」などなど、すごいんだかすごくないんだか判断不能な特殊能力を持つアビルと仲間達の大活躍コミカル漫画っつーか、読んだことない人にこのおもしろさをどう伝えればいいのか。基本1エピソード1ページ完結、メタだったりクールだったりシュールだったりするギャグが連発される漫画なのだ。
しかも、157話から怒濤の展開に!
超能力バスターのジャーメスが登場し、特殊能力アビルくんとの対決! それが、あらぬ方向に転がりはじめ、BL展開に。
家族が登場しはじめると、平成版(←という言い方が古い)「エスパー魔美」というか、エスパー魔美のパロディに!
で、その『特殊能力アビル』、紙の本では、全202話を読むためには『特殊能力アビルEXTRA』『特殊能力アビル -純-』の2冊が必要なんだけど、電子書籍版は『特殊能力アビル-裸-』1冊でOK。しかも、600円であります! 安い。
さらに、電子書籍版の特典として、全話解説つき! デバイスをくるっとひっくり返すと、著者による解説が落書きっぽくのっかって表示される! 
DVDの副音声で監督や出演者がいろいろ話したりするオーディオコメンタリーってのがあるけど、あれの文字版というか電子書籍版というかラクガキコメンタリー。で、このラクガキコメンタリーがまたさらに楽しい。

自分で自分の漫画にツッコんだり(「ワーワー」って。客描けよ/そんな名前だったんだ/なぜここをグラデーションにしたのか)、
ネタ元の解説(ジョージ秋山の「デロリンマン」だな/完全に「ウルトラマン」のギガスだよな)、
雑談もあり(関係ないけど「電池別売り」ってムカつくよな/コーヒーはドリップ式が一番好きだな/二度寝は人間だけに与えられた特権である)、
本当のラクガキもあり(コマの間を走る列車/コマの間にひっそりと咲く花)、
制作裏話もあり(コミスタにこういう葉っぱをカンタンにかけるブラシがあるんですよ/遊園地は、とりえず観覧車を描いときゃOK/ぬり忘れ)、
なんでもありな感じで、しまいには暴走して、コマの順番が入れ替わったり、ミカンコピペ地獄になったり、意表をつくラクガキコメンタリーも続出。一度読んだ漫画がまた再度楽しめる、すっごい贅沢な読書。
こういうのは電子書籍ならではの楽しさ。いや、もちろん紙の本でやろうと思えばできないことはないけど、ページ数が倍になっちゃうからコストがあわないなーって感覚が生じて、そうなるとリキ入れなきゃって思っちゃって、著者の雑談(といいたくなるような気楽な感じ)を楽しむのとは違うモノになっちゃうだろう。


唯一の不満は、ラクガキコメンタリーを表示した状態でページが次に進まないこと!
「まずふつーに読んでね」ってことなんだろうけど、読んだから! というか紙の漫画で読んで、それで電書版も買ったから!
ラクガキコメンタリーだけガツンと楽しみたいと思っても、それはできず。いったん通常表示にいちいちもどさなきゃなんない。
ふつーに読んで、その後、iPadをひっくり返して、ラクガキコメンタリーで笑って、またひっくり返して、通常ページにもどして、ページをめくって、またひっくり返して、って、もう何度も何度もiPadをひっくり返す。そのうちひっくり返し方もうまくなってきて、左手に載せてクイっとスナップ効かせるようにしてひっくり返す技を発明。全202話だから、404回(ときどき、ひっくり返した認識がうまくいかなくてやりなおしたりするから、きっと432回ぐらい)も左腕のスナップきかせの連続で、はたから見たら、変わった左腕筋肉トレーニングしてる人になっていたよ。

iPhone/iPad版は、おおひなたごう『特殊能力アビル -裸-』全202話一挙収録。
アンドロイド版は、1話~101話まで収録の[上半身]、102話~202話まで収録の[下半身]の2本。
どちらも、ラクガキコメンタリー/キャラ図鑑つき。オススメです。(米光一成)
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