「※ただしイケメンに限る」って言葉ね、ずーっと切り札だと思ってたんですよ。
あらゆることに対してこの言葉出しちゃえば終了ーになる決定打だと。

たとえば「子供の頭をなでている男性は優しい(※ただしイケメンに限る)」とかね。
ところがこのマンガ読んで考えを改めました。
残念すぎるイケメンは逆に心底めんどくさいと。

遠山えま『GDGD-DOGS(グダグダドッグス)』は、高校の漫画家コースに通う隠れプロの少女手塚神奈の物語。15歳。フレッシュ! 前髪で目が隠れているのがぼく好みです。
ところが漫画家コースの教室に入ってみると、入学の日から教室はガラガラ。担任も「マンガのことはよくわからないけどがんばりましょう!」とダメダメ。
教室としては最悪すぎますが、ヤル気のない生徒と何もわかっていない先生という環境だったら……授業中に仕事の原稿ができる!
やったね神奈ちゃん!

ところがそこに現れたのが、チャラチャラ系少年赤塚不三夫、クールメガネの不二藤雄、不思議ちゃん美少年石乃森翔太の三人。
あー。あー。あー。
突っ込んだら負け、突っ込んだら負けだよねこの名前。
3人ともイケメンで、漫画家を目指しています。はい、神奈ちゃんハーレムコース?
かと思いきやここからが面白い。

まず手塚神奈というキャラ、本当に二次元にしか興味がなく、萌えはするけど現実の人付き合い大嫌いなルサンチマンの塊。
「とくにイケメン(笑)ってキモイ!!」と言い切られちゃったときには、少女漫画(?)としてどうかと思ったくらいです。潔い。
次にこの三人、まだマンガのマの字も書いたことがない、ペンの扱いについてすら知らないドシロウトの素人。なのに「夢は講談社漫画賞」「宮崎アニメ抜くつもりでーす」と言い切ってしまう。
その上ちっともマンガを描かず、ペンネームを考えるのに時間を費やしたり、サインの練習をしはじめる有様。
しかも挙句の果てに言ったセリフがこれ。

「オレら技術とかぶっちゃけどーでもいーんでー、最速でデビューできる方法教えてくださーい」

ああ……全世界の漫画家に謝れ!
ゆとりか! これがゆとり世代か! いやもっと違う何かか!

似たような「漫画家デビューしていないのに漫画家気取り」という作品では「描かないマンガ家」という作品があります。
こちらはもう見た目からしてそんなに格好良くない上にマンガを一切書かずに夢ばかり見ているというキャラ。
非常にアクが強いのですが、格好良くないがために、真剣になった時の格好よさが引き立つという不思議な作品です。マイナスの状態から理想を熱く語られるとプラスになっちゃうんですよね。

ところが「グダグダドッグス」はイケメン(プラス)であるがゆえに、残念度合い(マイナス)が尋常じゃないという落差を感じさせる作品。
もともと「イケメン(笑)」嫌いなルサンチマン少女神奈にしてみたら生き地獄以外の何物でもありません。
あー。「※ただしイケメンに限る」じゃなくて「※ただしイケメンなのでさらに残念」なことってあるんですね。
無理やりこじつけるとすれば、彼ら三人は嘘偽りがないので、真正直な分、信頼はできるんです。
だから「ウザカワキャラだねー」と見ることは可能です。
可能ですが、細かい部分の「あるある」が生々しすぎてなかなかこれは……手強い。
自分たちではマンガを描かないのに、1Pをガン見して「このコマ……キャラのトーンが一部欠けている!?」とか。
いざ描き始めたら「なんつーかちまちました作業が合わねーわ」とか。
新人マンガ賞の応募を見て「100万円、どーやって使う?」とか。

なんというか、黙ってたらいいのに。

まあでもでも!(フォローに入ります)
そんな彼らでも神奈がプロマンガ家だと知って、慕ってくるんですよ、先生!って。
かわいいでしょう! イケメンだしそりゃうれしいでしょう!
と、言いたいところですが、タイトルの通りまるで彼らの様子は尻尾を振ってまとわりついてくる犬のごとく。
神奈としては、自分の作品の掲載順位が下がっていてそれどころじゃない原稿間に合わないというのに邪魔ばかりして目障りな3人。そもそも原稿描いているところをじーっと見られるなんて拷問。
ああ、う、ざ、い。
……フォローできませんでした。

残念イケメン達の、未来につながっている気がしないまんが道。神奈が不憫すぎてなりません。
永遠に「バクマン。」にはならないであろう展開に七転八倒です。
連載が続くにつれて、神奈の胃が壊れるんじゃないかと楽し……じゃない、心配になります。
まあ、ツッコミどころだらけの作品なんですが、一番のツッコミどころは連載している神奈のマンガが「おしえて羅★武」という仏像マンガだということでしょうか。

「仏ゾーン」じゃあるまいし、それはみうらじゅんしか喜ばないんじゃないでしょうか。
……と思ったけど、ぼくは読みたいのでそっちもぜひ描いてくれませんかね。手塚神奈先生。
(たまごまご)
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