「誰か、立候補者はいませんか? クラスのみんなで手助けしますよ!」

担任教諭の再三の説得もむなしく、とうとう一人も立候補者が名乗り出ず、結局は無記名投票で決まるのが常だったのは、日本の小中学校時代の学級委員選挙。逆に、ドイツの学校では、往々にして立候補者が乱立してしまうため、立候補を思いとどまらせるための(?)「学級委員の心得」なる文書が配布されることがあります。

その文書には、学級委員に必要不可欠な条件がずらり列挙されており、それらの条件を満たしていると自己判断した生徒だけが立候補を検討しなさいよ、というもの。さて、ドイツにおける学級委員には、どんな人物が求められているのでしょうか。

「学級委員の心得」には、委員の主たる仕事内容や役割の他にも、委員にふさわしい人物像や求められる素養、さらには、ふさわしくない人物像まで箇条書きされています。それでは早速、心得の一部を抜粋してご紹介します。

学級委員の仕事内容
1. クラス全生徒の代弁者としての役割を担う
2. 個々の生徒が、自らの権利を行使できるように手助けをする
3. クラスの生徒の要望や提案などを、教員、校長、保護者に伝達する
4. 教員と生徒の間に問題が生じた場合、両者の間に立って相互理解を促す
5. 学級委員の全体会議に出席し、その決議をクラスに伝達する

学級委員に求められる人物像
1. 大多数の前で堂々と発言できる
2. クラスの全ての生徒と平等にコミュニケーションがとれる
3. 生徒の権利、ならびに義務を把握している
4. 勇気がある
5. 妥協策を見い出せる
6. 特定の政党思想に偏らない

ハードルが高いというか、本格的というか。いかに自意識過剰気味のドイツ人とはいえ、ここまで読んで、立候補の手をそろそろとおろす生徒がいかに多いか、容易にご想像頂けることと思います。


それでは、ここまで書いたからには、最後に「学級委員の仕事ではない内容」「委員にふさわしくない人物像」も挙げておきます。
1. 担任教諭や各教科教員のお手伝いさん役
2. 委員を引き受けながら、役割を投げ出してしまう人
3. クラスの生徒と一緒になって、常にお祭り騒ぎをするような人
4. 何でも一人で片付けてしまう人
5. 問題を、片っぱしから次々に解決できる人
6. すごい天才

4、5、6に当てはまってはダメという点には、かなり共感を覚える筆者です。
ちなみに、この心得を読んだ後も、なお立候補の意志が変わらない生徒は、無記名選挙に移る前に、クラス全員の前で所信表明演説をすることになっていますので、念のため。
(柴山香)