今話題を呼んでいるアニメ「gdgd妖精s」。
ブレイク直前! アニメ「gdgd妖精s」はバカCGでぐだぽよ~
なんとこの作品監督がいません。

そこで今回は3人の方
企画プロデューサー:福原和晃
演出・脚本・構成:石舘光太郎
企画・映像監督・キャラデザイン:菅原そうた
にお話をうかがいました。


●おそらく多重構造の面白さ
――「gdgd妖精s」は本当に斬新なアニメですね。どの層狙いの作品なのか凄く気になるんです。

石舘:まず前置きとして、僕は「ダウンタウン」さんと「新世紀エヴァンゲリオン」に大きな影響を受けました。

――その二つのどこがよかったんですか?

石舘:あれだけ尖って新しいことに挑戦していながらも、特定のターゲットだけではなく幅広い層の人たちに支持されたところです。おそらく多重構造の面白さ。別々のフックに引っかかった人たちがいつの間にか同じジェットコースターに乗せられていると感じました。どちらももう15年以上前の話ですよね。

――でもどちらも今も影響力ありますねえ。

石舘:幅広い層に支持されようとすると最大公約数に向けてエッジのない作品を目指してしまうことが多いと思うんですが、でもそれは間違いだと気づいたんですね。一番人口が多い層をピンポイントでターゲットにしただけであって、決して幅広い層に支持されわけではない。以来、「楽しみを多重構造にする」「いつの間にかあらゆる層の人たちが楽しめる主軸を用意する」という2点が僕の目指すところになりました。


――特にコアターゲットとして今回の作品で狙っていた層をあえて作らなかった、という感じでしょうか?

石舘:ちょっと違いますね。いくつかの層を同時にコアターゲットに設定した、という表現が正しいと思います。アニメ&声優ファン層、アンテナの高いサブカル好き層、そしてブームになればヴィレッジバンガードなどで購入してくれそうな一般お笑いファン層、その3つ、男女で6層をひとつの作品でコアターゲットに設定しました。とんでもなく無茶な注文ですよ(笑)

――それが現状に反映されていると思うんですが、手応えはいかがですか? まずはアンテナの高い層が反応してるように見えますが……。

石舘:今のところのリアクションは当初の想像以上でした。一般お笑い好き層は評判になってから波及していくでしょうから、半年から1年のタイムラグがあると思いますし、最終話終わった頃に一部で人気になってくれるかな?という予想でしたので。

――なるほど、ただやはり「狙い」は準備していたんですね。

石舘:ですね。想定するターゲット別に「楽しみ」を用意することにしました。アニメファンにとって大切なのはオープニングとエンディング、次回予告の3点だと思い、13分なのに無理を言ってその3つを入れさせてもらいました。他のアニメ作品のパロディをちりばめるのもそうですね。

――確かにアニメネタはニヤニヤします。


石舘:サブカル好き層のためにロジカルでシュールな笑いを入れ、全体は誰でも楽しめる「一般的なお笑い」の要素で構成しました。そこに、そうたくんが「バカバカしさ」と「インパクトの強さ」という要素を映像で補完してくれて、僕としては「多重構造を作り上げる細い糸」が見えたわけです。

●ジャンルを越えた企画の「細い糸」

――細い糸、ですか……。「gdgd」は菅原そうたさん作品として「ネットミラクルショッピング」以降の企画だと思いますが、発案はどなただったのですか。

福原:5年ほど前、ネットでそうたさんの作品を見かけた時にはすぐに連絡を取っていました。この人、面白いもん作るなぁと。その後、何度も会って話しているうちに、ビジネス云々は二の次で面白い仕事が出来るのではと強く感じていましたが、当時はお互い仕事もあり、実現する事は叶いませんでした。2011年に久々にそうたさんと会い見せてもらった、モーションキャプチャーにプレスコで作られた映像が、gdgd企画の始まりとなります。

――この時点からプレスコ(先に音を収録して、後から映像を付ける)企画だったんですね。

福原:ラジオ番組よろしく、ある程度のテーマを演者に投げてフリートークで話しを展開、映像を付けていけば面白いものが生まれるでしょう、と当初は完全に芸人さんを中心にキャスティングを考えていました。芸人さんの笑いのセンス、喋りにのテンポ、発想力とそうたさんの映像表現の掛け算です。

――芸人さん!? 声優さんじゃなかったのですか!

福原:ええ。
一方で、声の演技を生業にしている声優さんに、ビジネス的な可能性を秘めている事も理解をしていました。笑いにも精通しアニメ・声優さんにも明るい構成作家さんを探し始めて、石舘さんにめぐり合いました。完全に声優さんを起用した「とにかく笑えて、アニメファンにも喜んでもらえるコンテンツ」の製作に絞り、企画から練り直しました。当初は笑い寄りの企画を欲しがり過ぎていましたが、石舘さんの説得のお陰で最終的に今回の「gdgd妖精s」の方向性が決まり、そうたさんも未経験の萌え?風キャラを生み出してくれて動き出しました。

――なるほど。石舘さんの加入で大きく変わったんでしょうか。

石舘:「CGアニメつき声優ラジオ」のようなものを目指していたようですが、福原Pが全話をMXでオンエアしたい、と言ってきたんです。それならもはや完全にアニメ作品だから、アニメの方法論を取り入れよう、と提案しました。福原Pから「アニメファンはもちろんだけど、そうたくんのCGが好きなサブカルファン、気軽に見る人たちも楽しめる内容にしてくれ」という唯一のオーダーがありました。「萌え」と「サブカル」と「一般的なお笑い」を融合してくれ、ということですね。

――似たようで、全然バラバラなジャンルですねえ……。

石舘:最初は「なんて無茶なことを言う人だろう、そんなことができたら俺、アニメ史に名を残すなぁ」と面食らったのですが、すごく細いクモの糸だけど実現不可能なものではないことが何となく見えてきて、ひとつひとつ実現していくうちに今の形になりました。


――なるほど、それが今「gdgd」の「細い糸」なんですね。


●『サナギさん』と「ウゴウゴルーガ」と、夢で見たもの

菅原:ぼくの脚本だと、ネタベースでキャラが動くんですけど、石舘さんはキャラベースでネタを放つ『サナギさん(施川ユウキの4コマ漫画)』方法なのがこの作品の強みです。ぼくのCGはショート向きで、石舘さんはキャラが立ったショートギャグ!! これなら僕のCGとドッキングしたときにまさしくなアニメが出来る!っていう臭いがしました。

――各地で「『ウゴウゴルーガ』の遺伝子がある」という声もあがっていますが、そこは意識されていましたか?

菅原:ぼく達の世界では「ウゴウゴルーガ」をやっていた方々は今神様のようなエラい方々になっていて、その文脈の新芽のようにぼくが生まれているので、影響は受けている気もします。特に伊藤ガビンさんやタナカカツキさんなど、CG映像とギャグを渡り歩く神様にいつもいびられて育ってます。ただウゴウゴのようなものは「意識的でやってなる」ものではなく、本来の人間属性みたいな面もあると思っています。思いつきで行動したりテキトーな性格だったり、出オチの説明に困るシリメツレツな一発ギャグが好きで作ってるものを「アフレ湖」用の映像として流用しているのが、印象を強めているかもしれません。

――なるほど、根の部分ですね。

菅原:「朝起きた瞬間に夢で見ていたもののCG映像」を毎日つくっていて、そのまま「アフレ湖」のお題に使われて声優さんがむちゃくちゃな意味づけして加速していていく。真面目な大人ならソッコーボツにするような内容でも、福原さんが「OKOK!」と採用してくださる感じ! みんなで遊び狂っている感じもウゴウゴっぽいかもしれません。

――ぼくも『サナギさん』大好きなんです。やはりキャラのやりとりへの影響はあるのでしょうか。


石舘:「可愛いこと」と「尖った笑い」のかけ算が大きな相乗効果を生むことを『サナギさん』から勉強させてもらいました。可愛い動物がボールなどで遊んでいて失敗したり、赤ちゃんが不意に変な表情をしたときなど、可愛くて笑ってしまいますよね? 理屈を吹き飛ばして無条件にその可愛さにもだえる感覚です。

――ン! 確かにそれはつい笑っちゃいますね。

石舘:極限のハードルの低さ(ユルくて可愛いパッケージ)で、ロジカルでシュールな笑い(大人の頭の良さを含んだ笑い)を出されたときの殺傷力たるや、凄まじいですよね。振り幅の大きさが。そこでまず実践したのが「すんげき部」というユニットです。有志の女子高生たちが何か面白いことをやりたいと言うので、『サナギさん』を参考図書に「10代の女の子の等身大の可愛さに、ちょこっとロジカルでシュールな要素を入れた、ユルいけどトゲのあるコント(すんげき)をやってみてはどうか?」とアドバイスしました。

――なるほど、かわいさ、ゆるさ、とげ、ですか。

石舘:今回の「gdgd妖精s」のティータイムの元になっているのは「すんげき部」の3人であり、『サナギさん』でもあります。単純にピクピクがサナギさんでコロコロがフユちゃんではありませんが、その延長上だということは間違いありません。

――ダウンタウンの影響は根にある部分なのでしょうか。「きょうふのキョーちゃん」がぼくは好きです。


菅原:ぼくも「きょうふのキョーちゃん」大好きです。かわいい毒!ぼくの初期作品のトニオちゃんからのテーマです。学生時代に一番インスパイアされたのは「バカドリル」。「ブッチュくん」というオバケのQ太郎そっくりのヤバい漫画があって、それも「かわいい毒!」に入るとおもいます。伊藤ガビンさんは「パラッパラッパー」で、モロ「かわいい毒!」。そういう影響は潜在意識の脳のヌルヌルしたところに染み付いている気がします。

――菅原さんの「お笑い」はどのような部分から影響を受けていましたか?

菅原:やっぱり一番は「バカドリル」のタナカカツキ×天久聖一コンビの映像作品郡に影響を受けています。トン子ちゃんも、もちろん大スキですし、電気グルーヴ×天久聖一の「Cafe de 鬼」もサイコーです!

――「遂に、電気グルーヴに死刑判決が下った!」ですね。あれは今見ても笑えます。

菅原:伊藤ガビンさんはウゴウゴルーガにも関わっていたらしいっすね。お二人には、ぼくの作るCGは「バカCG」と名付けられました。絵が下手じゃなくて脳が下手な人間がCGをつくるとこうなる、という事で。あとダウンタウンも大ファンで、その番組を築き上げてきた倉本美津留さんには、 いつも「おまえは頭が××」といびられつつ、お仕事をいただいたりしていて笑いの先生です。
 
――バカCGは褒め言葉ですね。脳が下手な、て……(笑)

菅原:そうした影響でモロCGとお笑いが大スキで生きてきました。あと、ふだん友だちと話してる肩肘張らないノリが、まんま作品の笑いの主軸になってる気がします。今回の福原プロデューサーがトニオちゃんの頃から共鳴してくださっていたので、作品全体で言うとそういう共通感覚みたいな所がある気がします。

その2へ続きます。
(たまごまご)
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