なんたって日本語の歌謡曲ですからね。マンガやアニメ、映画、音楽など、日本のポップカルチャーが海外進出する上で、最大の壁となるのが言語です。唯一ゲームが世界を席巻できたのも、一つには言語を必要としない、触覚的なエンタテインメントだったから。それが最近ではリアルな表現が可能となったことで、逆に文化的嗜好の違いが際立つようになり、世界シェアが縮小中。だからこそ、みんなビックリしたわけですよ。
ところで、これだけ話題になった「1969」ですが、皆さんアルバムを購入しました? 実は一番売上が小さいのが、お膝元の日本だったりして......? ま、真相はさておき、これだけ海外で話題になったのに、一度も聴いてないってのも寂しい話ですよね。えっ? 近所の音楽店や量販店に在庫がないって? やだなあ、時代はダウンロード配信じゃないですか。家にいながらにしてポチっちゃいましょう。
この時iTunesでも良いんですが、iPod/iPod touch/iPhoneユーザーでなければ使いにくいのも事実。
しかもiTunesで購入すると、音楽ファイルにDRM(デジタル著作権管理)がかけられているのに対して、AmazonではDRMなしの生MP3ファイルで購入できるんです。つまりコピーもバックアップも、再生デバイスの選択も自由自在! 実はiTunesでもアメリカでは2009年にDRMフリー販売が実現しているんですが、日本ではまだなんですよね。そんな中でいち早く実現したAmazonに拍手を送りましょう。
購入の仕方も簡単で、Amazonの「MP3ダウンロード」のページから好きな楽曲やアルバムを選択し、通常の商品と同じく「1-Click」か「(カートに)追加」をクリックして、購入手続きをするだけ。ブラウザのダウンロード機能を使って、購入したファイルを保存することができます。iTunesと同じく全曲で視聴できますし、アルバム収録曲であっても楽曲単位で購入できますよ。もっともアルバム単位で買うより割高にはなりますが。
なお、はじめてMP3ダウンロードで楽曲を購入すると「Amazon MP3ダウンローダー」をインストールするように促されます。このソフトを使ってダウンロードすれば、仮にネットワークトラブルなどで中断した場合でも、「再試行」ボタンをクリックするだけで、ダウンロードをやり直せます。
こんな風に文字で書くと、ちょっと長ったらしくて、わかりにくいかもしれませんが、実際は非常にスムーズです。無料で試せるサンプルファイルがあるので、初心者の方は、まずはそちらでお試しされることをオススメします。あ、ひとつだけ注意して欲しいんですが、ダウンロード後に音楽ファイルを誤って消したり、破損した場合は、再購入になるので、そこだけお忘れなきよう。
それにしても、どうして「1969」は海外で空前のヒットとなったんでしょうか。ぶっちゃけアルバムを聴いても、うわー、昭和歌謡だなあとは思うんですが、なにせ1971年生まれなもので、良さがイマイチわかりませんでした(失礼!)。しかもこのアルバム、直前まで誤解していたんですが、全12曲のうち由紀さおりさんの持ち歌は、「夜明けのスキャット」「季節の足音」だけなんですね。あとは「ブルーライト・ヨコハマ」(いしだあゆみ)、「真夜中のボサ・ノバ」(ヒデとロザンナ)など、カバー曲中心なんです。
ちなみにピンク・マルティーニのリーダーで、「1969」をプロデュースしたトーマス・ローダーデールさんは、 由紀さんサイドの候補曲を次々に却下。かわって1969年前後の歌謡曲を聴きまくり、自ら発掘したとか。
「美しいメロディーの曲に出会えたことが大きい。それを本物の楽器で演奏し、由岐さんが丁寧に歌い上げた。小手先の技術に走った薄っぺらい曲があふれる分、聴衆は本物に飢えている」(トーマスさん/朝日新聞2012年1月18日より)
いわば日本人すら忘れていた、昭和の歌謡曲にこめられたメロディーを、アメリカ人のアーティストが独自の価値観ですくい上げて、由紀さんの美声に載せて世界に発信したという感じでしょうか。それがデジタル配信で世界中のリスナーに届けられ、その思いが共振して大ヒットを記録。まさに21世紀という感じです。
ただ、トーマスさんは1970年生まれで、僕と同世代なんですよね。つまり1969年ってトーマスさんが生まれる前年なんです。でもって1969年に発売された、由紀さんのデビューアルバム「夜明けのスキャット」を中古レコード店でジャケ買いしたのが、10年ほど前の夏だったとか(同紙より)。つまりトーマスさん32歳(たぶん)の夏!
その後もアイディアを温め続け、2007年に「タ・ヤ・タン」を自分のバンドでカバー。
ちなみに30年来の由紀さおりファンの知人に言わせると、ベストの楽曲は「手紙」なんだとか。「由紀さおり Complete Single Box」に収録されており、共にダウンロード配信中です。「1969」で興味を持たれた方は、こちらもあわせてどうぞ。
(小野憲史)