軍手でつくったぬいぐるみや、ちらしでつくったペン立て、手編みのニットドレスを着たキューピー、牛乳パックを再利用したピエロ……。玄関の下駄箱の上やリビングの片隅にいつのまにか存在し、 なんともいえないモッサリ感を醸し出す存在。

子ども、孫世代には「ださい」「邪魔」「意味不明」と酷評されることが多い「おかんアート」だけれど、その脱力を誘うゆるさをひそかに愛好するファンも多いという。そのアノニマスな世界がなんと! 『おかんアート』なる1冊の本になっていた。

実はこの本、阪神淡路大震災で最も大きな被害を受けた神戸の下町・長田発。同会隊長で、本書の編集人である山下香さんに企画の発端など伺ってみたところ、この町を深く愛する仲間と「下町レトロに首っ丈の会」を発足し、2005年より地元のおいしいものを発掘する食べ歩きや工場見学ツアーをしていたところ、店の片隅や建物の内部にちょっこりと飾られている「おかんアート」というキーワードが浮かび上がってきたのだとか。
「お店や工場以外でも、役所、銀行、病院などにまで蔓延(笑)していることがのちのち、調べていくうちにわかりました」

震災により情緒あふれる町のたたずまいや、昔ながらのコミュニティは失われたかのように思われたが、「おかんアート」をテーマに展覧会をしたり、本を制作することが、新たな人と人の繋がりを結ぶという役割も果たしていったのだとか。ちなみに、発売後の皆さんの反応はどのようなものだったのでしょう?

「(作品を)作っている当人たちはまったく自分たちの価値に気付いていないのでいい意味で当惑していました。
母親たちは、こんな本売れるんかいな? と言っていましたし(笑)。しかし、多くの審美眼のあるクリエイターさんたちが気に入ってくださいました。何より感動したのが、あの都築響一さんがご本人のブログやコラムでおかんアート本を評価してくれ、紹介してくださったことです。神戸まで取材にも来てくださり、これからいろいろおかんアーチストの方々を紹介してくださるようです」

なお、本書によると「おかんアート」の定義とは、「役に立つとは言い切れないが、勢いはある」「センスが良いなど気にせず、世間とのズレなんかも気にしない」「なのに、あたたかみだけは、熱いほどある」「フィーリングでつくるキティとドラえもんは危険」などなど。読んでいるだけでうんうん、激しく頷いてしまうこと請け合い。眺めていると、おしゃれにしようとがんばるのって、むしろ格好悪い……? みたいな気持ちになってくるから不思議である。


今後の予定としては3年連続で開催している「おかんアート展」を今年も開催するべく、実行委員会を立ち上げることが決定したそう。日本中、いや世界中にいる「おかんアーチスト」たちも負けてはいられない! 神戸・長田が「おかんアート」の聖地となる日も近いのかもしれませんね!?
(まめこ)

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