免疫力を向上させる効果が期待されることから、花粉症や風邪などに良いといわれる「ビタミンC」。

ところで、「ビタミンCがレモン○個分!」などというフレーズをよく耳にするが、パセリやブロッコリー、赤・黄ピーマン、アセロラなど、レモンよりもビタミンCの含有量が多い食品はけっこうあるもの。

意外かもしれないが、実はジャガイモや焼きのりなどにも豊富に含まれている。

なぜ「レモン」がビタミンCの代表選手のような扱いになったのだろうか。
『干し野菜手帖』 『野菜ソムリエKAORUの野菜たっぷりサンドイッチレシピ』(誠文堂新光社)の著者・KAORUさんに聞いた。
「『ビタミンC=酸っぱい』というイメージがありますが、実際にはビタミンCそのものが酸っぱいわけではなく、ビタミンCを豊富に含んでいる食品に含まれている『クエン酸』が酸味の理由です。もともと食品分析では、通常の成分含有量を表示し、比較に利用するため、ちょうど1個が100gでそのビタミンC含有量が100mgであるレモン(全果)が最もわかりやすいことから、基準になったのだと思います。でも、レモンは香りづけに使うもので、その量を大量に食べることは非現実的ですよね。
様々な食物に対して栄養分析があまりされていなかった時代には、レモンが『酸っぱくてビタミンCが豊富』というイメージだけが先行し、広まったことも要因なのではないかと思います」
日本人にとってわかりやすく、イメージしやすい基準としてレモンが選ばれたのでは? という推測だ。

ちなみに、清涼飲料業界のサイトによると、清涼飲料水に添加したビタミンCの量をレモン果実の個数によって表示することは、「消費者にとって商品選択のための比較の目安となる表示であり、飲料業界としても同一基準で表示することが望ましい」との判断から、「ビタミンC含有菓子の品質表示ガイドライン」における基準値(20mg/1個)を準用して行われてきたものらしい。だが、このガイドラインは近年廃止され、検討のうえで新たな基準が定められている。
「気をつけなければいけないのは、『○倍』という高い数字が欲しくて野菜を選んでいるケースです。たとえば、小松菜の場合は特に豊富なのはカルシウムやカロテンですが、それほど多くもない他の成分を取り出して『小松菜のビタミンの○倍』と記すとか、鉄分が豊富な代表野菜ではないのに『トマトの鉄分の○倍』と表示するなど、『○倍』という数字が高く出やすいモノをあえて選んでいる表現も多く見られます」

野菜が本来持っている個々の特性ではなく、「トマト=体に良い」といった大まかなイメージを利用し、他の野菜より特に多いわけでもない成分をあえて取り出して比較し、「○倍」という大きめの数字を使用する表現はよく使われているようだ。それでも、「数値そのもの」はウソではないだけに、問題とはならないらしい。


こうした数字のマジックに惑わされぬよう、注意したいものだ。
(田幸和歌子)