印鑑を押すとき、「シャチハタ不可」というのをよく見かける。シヤチハタ株式会社(ヤは大きいヤです)のネーム印「Xスタンパー」は、朱肉いらずでポンと押せる印鑑としてポピュラーなのだが、これをこの書類の印鑑としては使わないでくださいね、というのがより正確な意味である。


シャチハタのネーム印は、印面がゴムであるため、普通の印鑑とは違うから、というのが「不可」とされる一般的な解釈なのろうが、だからといって、印鑑としての効力が無いことになってしまうのだろうか? 「シャチハタ」は印鑑の製品名ではなく、会社名なのに(しかも、ヤは正確には大きいヤなのに)、「シャチハタ不可」とむげに書かれているのも、なんとなくかわいそうな感じである。

このような「シャチハタ不可」は、多くの人から問い合わせがあるようで、シヤチハタ株式会社自らがサイト上で回答をしている。それによるとこうである。

「シヤチハタネームの使用目的上の制約(ハンコとして認められるか否か)につきましてはそれぞれの機関が定めるところにあり、弊社にて判断致しかねますが、銀行及び行政等で、公文書として使用できない局面はございます。印字面がゴムであることが理由の1つであると思われます。また、シヤチハタネームの発売当初(昭和40年代)、なつ印印影の滲みが大きかったことも、使用できない理由の一つと考えられますが、現在はインク並びに印字体の改良により、なつ印印影の長期保存が可能になり、又、ニジミの少ない製品となっております」

ゴム印であること、インクがにじみやすかったことが「不可」の理由として考えられるが、法律で定められたものではなく、またインクについては改善されている、というのが現状のようである。丁寧な回答の中にも、「シャチハタ不可なにするものぞ」といった熱い思いが感じられる。

実は、この回答には続きがあり、こんな風に書かれている。

「※一部の企業並びに一部銀行の職場内におかれまして、別注印を重要印としてお使い頂いているケースもございます」

職場内ではあるが、重要な書類にシヤチハタ印が使われているケースがあるようなのだ。これについて、シヤチハタ(株)に直接問い合わせてみたところ、「企業間や社内の規約として、シヤチハタを使用可とするケースはございます。但し、認証を必要とするようなケースではなく、社内の重要書類や簡易的な契約の範囲でのご使用になるかと思われます」との回答をいただいた。

ちなみに、社内用ではあれど、重要書類の場合、誰かが勝手に印鑑を押したりしないように、印面に識別性がある、つまり、全く同じ印面が他に存在しない、ということが求められると思うのだが、大量に生産しているシャチハタ印でこのようなことは可能なのだろうか?

これについては、「弊社の別注品のスタンパーは、手作業で印面デザインの作成(版下作成)を行っておりますので、文字の大きさや位置は、同じお名前でも同じになり難いものとなっております」とのこと。
さらに、「ゴム印面の細かい気泡も全く同じ配列ではございません」とのことで、識別性は担保できているようなのである。

このように、シャチハタ印は少しずつその利用シーンを拡大しつつある。「シャチハタ不可」が無くなる日も、そのうち来る、のかな。
(エクソシスト太郎)
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