僕もコミティアへの参加は今回が初めて。コミケとは少し違ったまったり目なムードの中、僕の目と心をつかんだ作品を紹介していきたいと思います。
まずは、事前にカタログでチェックしていたサークルの発行物から。
『BULLET 1』(イヌガー)
今石洋之さん(代表作「天元突破グレンラガン」)、錦織敦史さん(代表作「アイドルマスター」)ら、29人の人気アニメーターによるイラスト集。この本の発行を知ったことが、初めてのコミティア参戦を決めたきっかけでした。
普段は「作品」という枠の中で集団作業しているアニメーターが、「制服」をテーマに、各々の自由な発想でオリジナル作品を描いています。例えば、「ハートキャッチプリキュア!」の馬越嘉彦さんのイラストは、刀を片手に凛々しい表情で立つ制服女子。「たまゆら~hitotose~」の飯塚晴子さんの描く女子の制服は、襟やボタンの形にまで凝ったデザインです。「制服と聞いて、いろいろ考えてたのですが。
チャリティのために企画されたこの本の利益は、東日本大震災で被災した赤ちゃんのための基金「ハタチ基金」に寄付されるそう。次のコミティアもコミケも8月開催だから、第2弾のテーマは「夏」で、どうですか?
『コミティア100 おめでとう本』(下り坂道)
「下り坂道」は、ニート&お仕事漫画『空の下屋根の中』を描き、現在は異世界ファンタジー『セカイ魔王』を連載している双見酔さんのサークル。「会社に行って毎日働くなんて無理!」と思っていた学生時代の僕が、『空の下屋根の中』を読んでいたら、きっと今頃、銀行やメーカー勤務の立派な社会人になっていたはず。ある意味、僕の人生を左右したとも言える漫画家さんです。15年早くデビューしてくれていたら……。
この『コミティア100 おめでとう本』では、コミティアのカタログに掲載された漫画にも登場する女の子(ルックスは萌えキャラ)と、作者の分身である棒人間(顔が凶悪)のコンビが、コミティア100回をネタに漫才のような掛け合いを展開します。ロリコン談議から、顔芸、バトル(一方的な殺戮)、あざとい読者サービスと18ページの中にネタ満載。薄いけど濃い本です。
書店などでの委託販売が無さそうな本なので、最優先でゲットしました。『BULLET 1』とこの冊子を入手した時点で、僕のコミティア初参戦はすでに大勝利確定。
『○○(ほにゃらら)と申します。』(COSMIC FORGE)
一人暮らし向けレシピ本の『リア充ごはん』でも話題を集めたサークル「COSMIC FORGE」の新刊は、クリエイターや企業の名刺100点を集めた、名刺カタログ。人気イラストレーターのTivさんやワダアルコさん。ガイナックスの山賀社長の名刺まで載っています。収録されている名刺の大半がイラスト付きで色鮮やか。白地に黒文字という普通の名刺が、逆に目立ちますね。「メカ少女の描き方」「背景イラストの描き方」といった、いわゆる「イラストHOW TO」本の制作にも携わっている僕は、クリエイターの方と名刺交換する機会も少なくないのですが。「○○さんとお仕事できたら、この名刺がもらえるのか!」と、本末転倒な野望も。
また、「僕も持ってる名刺ないかな~」とページをめくっていたら、見覚えのある名刺を発見。エキレビライターのたまごまごさんと、杉村啓さんの名刺です。そういえば、2人から名刺をもらった時、楽しい気持ちになったんですよね。
ここからは、ホールの中を歩いているとき、表紙やタイトルなどに惹かれて手に取った作品を紹介。
「OCRE」(onigiri)
「onigiri」は、フランス在住のフランス人作家daraさんのサークル。このカラーイラスト本は、サークル結成10周年を記念して2011年に頒布されたもの。daraさんが、この10年に描いたイラストが、コメント(フランス語と日本語を併記)とともに再収録されています。
コメントによると、オタク道を歩み始めたきっかけは「美少女戦士セーラームーン」。その後、同人活動を中断した時期もあったけど、2010年には初めて日本のコミケに参加。その規模に圧倒されたとか。ブースに座っていた外国人スタッフさんと表紙が気になり、手に取った本は、一人のフランス人オタクの半生記でもありました。
コミティア100のブースにdaraさんはいなかったのですが、スタッフさんからフランスの同人誌事情もいろいろと聞きました。「onigiri」は、5月末にパリで行われる、フランスで最も歴史ある同人漫画イベント「EPITANIME」(通称エピタ)にも出展するのだとか。フランスには、日本のように少部数印刷を扱う印刷所が無いので、データ入校して日本で印刷した同人誌を、フランスに送っているそうです。
「ルーン学習帳」(幻想伝承資料室)
「ジャポ○カ学習帳」を模した表紙が気になり、手に取ったこの冊子。ファンタジー系のマンガ、小説、ゲームなどでおなじみのルーン文字について、解説された本です。そういえば、ゴールデンウィークにクリアした「魔法使いの夜」というノベルゲームにも、ルーン魔術を使う魔術師が出てきましたよ。
ルーン文字って、実際に使われていた文字なんですね。空想上の文字だと思っていました。序文によると、中世以前のヨーロッパでは、手紙などにも使われるくらい日常的な文字だったそうです。
左右のどちらから書いても良く、途中で書く方向を変えてもOK。しかも、同じ単語にも複数の綴り方があるって。どんだけ自由なんだよ、ルーン文字! そんなこったから、幻の文字になっちゃったんじゃないの!?
ルーン文字のアルファベットは直線的なデザインで、文字というより記号のよう。お手本が書いてある横に空白のマスがあって、練習できる仕様になってます。
で、ルーン文字を覚えたら、どこで使おう?
『planethome 89-98』(惑星家)
作者の壱号さんが、コミティア89から98までに発表してきたオリジナル漫画をまとめた総集編。
この漫画。初コミティア、最大の収穫。
ストーリー展開や会話の巧みさだけでなく、表紙以外も安定した作画、メリハリの利いたコマ割からも、プロの作品だと確信。調べてみたら、やはり商業誌でも作品を発表している漫画家さんでした。よ~し、商業でも同人でも追いかけるぞ。とりあえず、『週刊ヤングジャンプ増刊 アオハル sweet』は入手済みです。
コミケでもそうですが、こういう偶然の出会いや発見が、同人誌即売会の一番の魅力ですよね。
とか言いながら、夏コミでは、朝から大手サークルの行列に並んでるんだろうなあ……。
サークル「竹箒」の新刊『春と月と空と』、委託販売や再版を希望します。
(丸本大輔)