普通のロック系ライブと、アニメ・声優系ライブは決定的に違う。
大槻ケンヂはエッセイ集「心の折れたエンジェル」の中で、アニメ・声優ライブ全般に対してこう書いています。

「アニメ、アニソンの世界は今大変なことになっている。人気、集客力、ファンの方々の熱気がハンパないのだ」
「このMAX連続のノリは一体どうやって生まれたのだろうと不思議であった。思うにこれがガラパゴス現象なのだろう。ロック、その他の、古くからあって半ば予定調和してしまったコンサートにあまり行ったことのないオタの人々が、わからぬながらも自分らなりのノリ方を模索しているうちに独自にすぎる様式が生み出されていったのではないか」
まったくもってそうなのです。アニメ・声優系ライブは、他のロック系ともアイドル系とも違う独自の強烈なパワーであふれています。
それぞれ熱量のベクトルが違うのが面白いんですよ。

さて、6月23・24日のツーデイズ、横浜アリーナでライブ「THE IDOLM@STER 7th Anniversary 765PRO ALLSTARS みんなといっしょに!」が開催されました。
アイマスライブといえば、様々なアニメ・ゲーム系ライブの中でもかなりパワーあるファンに支えられているライブの一つ。まさにMAX連続のノリです。
もっともツーデイズ満員どころか立ち見も満員、全国50箇所でライブビューイングもしているって時点でどえらいことなんですが、人数だけがすごいわけではありません。
ここで、今回のアイマスライブの何がすごいのかをちょっと書いてみようと思います。

あ、セットリストとか新情報とかは今回書きませんので、知りたい方はこういうサイトでチェックするのがいいと思います! 取材費なんて出てませんもちろん自費ツーデイズだよ!
THE IDOLM@STER 7th ANNIVERSARY 0624リポート - ファミ通.com

1・見に来ているのは「プロデューサー」
アイマスライブを見に来ているのはファンではありません、プロデューサーです。

といきなり書いてもなんのこっちゃですね。これはアイマス独自の文化だと思います。
ライブ自体は当然、声優さんを、演じるキャラを見にライブに行くものです。
しかし「アイドルマスター」シリーズのゲームは、自分がプロデューサーになってアイドルを育てていく、という構造です。
ですから、ライブでは「プロデューサー」「プロデュンヌ(女性プロデューサーのこと)」が、自分の育てたアイドルを見に行く、という体裁を徹底して保っています。
オープニングで社長が出てきて「プロデューサー諸君!」と話しかけますし、声優さんたちも「これからもプロデュースよろしくお願いします!」で締めます。
7年間育ててきたアイドルを見る、というのは他にない愉悦。そんな事言われたらねえ、頑張っちゃいますよ。
 
2・統率のとれたサイリウム
アイドルマスターには数多くのキャラがいます。メインキャラは14人(内二人は双子設定なので声優さんは一人です)。最初や最後は全員揃ってですが、基本的には声優さんたちが順番に登場して、キャラの持ち歌を披露します。
そしてキャラの持ち歌のイントロがかかった瞬間、会場の色が変わるんですよ。

例えば、中村繪里子演じる天海春香というキャラは「赤」がイメージカラー。歌い始めたら一斉に全員が赤のサイリウムを取り出して折るので、会場が真っ赤に染まります。ほんとびっくりするくらい真っ赤です。
次に浅倉杏美演じる萩原雪歩というキャラが出てくると、彼女のイメージカラーは「白」なので、一瞬にして会場は真っ白に!
この一糸乱れぬ整い方は驚かされます。
まあ、13人のうちでも何人かは色がかぶっているのですが(例・菊地真、如月千早、我那覇響は青、など)最低八本(赤・青・黄・橙・紫・白・緑・ピンク)必要、ということになります。
アイドル系ライブでもサイリウムの色を特定のアイドルになぞらえるのは文化としてありますが、ほぼ曲ごとに会場の色が変わる様は面白いですよ。
中には「竜宮小町」という、水瀬伊織(ピンク)・三浦あずさ(紫)・双海亜美(黄色)のユニット曲もあったのですが、その場合はもちろん三色です。
ちなみに、実は竜宮小町が完全な形で再現されたのは今回が初めて。非常に貴重でした。

3・コール本の存在
ライブでは有志のファンがコール本の配布をしていました。
さて「コール本」とはなんぞや?
アイマスのライブはいわゆるオタ芸はほぼなく、全員で合いの手を入れるのが通例になっています。
その合いの手、たとえば「ハイハイハイハイ!」とかをどこで入れるのかというのは、初めてきた人にはわからないもの。

加えて、新曲が出るほどにコールも新たに作らないといけません。だって……そろっていると気持ちいじゃないですか。
そこで、有志が権利元に許可をとって、コールの仕方を書いた本を無料配布しているのです。
かなり凝った作りをしており、特に今回は1万規模の冊数を作ったというのだから驚き。
コール本文化は、声優さんのライブやももクロライブなどであるようです。
話によると今回はさすがに人数が多すぎるのでやらない予定だったそうですが、弾みで作ることに。冊数が多いので大変ですが、来た人達のいいおみやげになったようです。
そのおかげもあり、曲のコールのそろいっぷりは見事。ぶっちゃけコールの波を見に行くためだけでも行く価値ありです。

4・アリーナライブまでの紆余曲折
7年目にしてついにアリーナ。「ついにきた!」と感慨もひとしおなものですが、アイマスライブの場合ちょっと事情が普通のミュージシャンと異なります。
そもそも、アニメやゲームのライブって、だいたいもって1・2年。
長く続けるのは困難です。
ところが、アイマスは7年目なわけですよ。当時大学生だった人は、今やアラサーですよ。すごいね!
ちょっと簡単にヒストリーを追ってみます。

THE IDOLM@STER 1st ANNIVERSARY LIVE
2006年7月23日 新木場STUDIO COAST
アーケード版準拠のアイドル候補生+事務所員の10名全員が登場。

THE IDOLM@STER ALL STAR LIVE 2007
2007年4月1日開催 お台場Zepp TOKYO
360版準拠で、星井美希役の長谷川明子が参加の11名

Go to the NEW STAGE! THE IDOLM@STER 3rd ANNIVERSARY LIVE
2008年7月27日 パシフィコ横浜国立大ホール
PSP版で追加になった我那覇響役の沼倉愛美、四条貴音役の原由実が参加。先代の萩原雪歩役落合祐里香は映像参加。

THE IDOLM@STER 4th ANNIVERSARY PARTY SPECIAL DREAM TOUR'S!!
・名古屋公演 2009年5月17日 名古屋CLUB DIAMOND HALL 6名参加
・福岡公演 2009年5月24日 福岡DRUM LOGOS 5名参加
・東京公演 2009年5月30日 東京JCBホール 12名参加
 DS版の新キャラである、日高愛役の戸松遥、水谷絵里役の花澤香菜が参加。
 秋月涼役の三瓶由布子はビデオ出演。ニコニコ生放送もされている。
・大阪公演 2009年7月23日 大阪なんばhatch 7名参加
 (インフルエンザによる延期公演)

THE IDOLM@STER 5th ANNIVERSARY The world is all one !!
2010年7月3日、4日 幕張メッセ
今までのメンバーに加え、4日に声優変更になった萩原雪歩役の浅倉杏美が参加

THE IDOLM@STER 6th ANNIVERSARY SMILE SUMMER FESTIV@L !
・東京公演 2011年6月25日 TOKYO DOME CITY HALL 10名参加
・札幌公演 2011年7月02日 札幌 ZEPP SAPPORO 8名参加
・名古屋公演 2011年7月09日 名古屋 ZEPP NAGOYA 8名参加
・福岡公演 2011年7月16日 福岡  ZEPP FUKUOKA 8名参加
・大阪公演 2011年7月23日 大阪  ZEPP OSAKA 8名参加

その他にも小さなイベントはたくさんあるのですが、アニバーサリーライブはこれだけです。
徐々に規模が拡大しているだけじゃなくて、参加している人も増えています。

こうなってくると初期の頃は本当に声優のたまご的な人達も、今や忙しく活動している人も多いわけです。もうレッスンして集まるだけで大変なわけですよ。
現時点での765プロメインメンバーとしての声優さんがフル参加しているのは、5thの二日目と、今回のみ。

年がたってしぼむのではなく、なんでここまで膨れ上がってきたのか。それは初期からのファンの熱心な応援と、新規のプロジェクトでのファンの参入が大きいです。
先ほど「来ている人はみんなプロデューサー」と書きましたが、7thライブの観客層はプラスアルファがあります。
それはアニメ版と「アイドルマスターシンデレラガールズ」から入った新規層。
最初からのファン、アニメからの全くの初参戦の人、一度離れて久しぶりに帰ってきた人、これらが一致して成功した、というのが今回のライブ。かなりアニメ・ゲームライブとしては珍しい部類です。

5・アイマスを知っている人用に補足
今回の7thライブについて、アイマスに詳しい方用の補足です。
基本アニメ準拠で、演出もアニメ風になっているのが最大の特徴でした。特に萩原雪歩役の浅倉杏美の絶叫や、如月千早役の今井麻美が「約束」を歌うシーンで背景に765プロのみんなのシルエットが浮かび上がって見守る演出などは、アニメでのドラマを思い出させました。

竜宮小町が「SMOKY THRILL」を、残りのメンバーが「自分REST@RT」を歌う、というのもアニメの再現。亜美と真美が一人二役なので、下田麻美が両方連続で歌っているのにはびっくりしました。
また、秋月律子役の若林直美が「プチピーマンさん率いるファンのみなさん」と言ったときは、アニメ18話を見ていた人ならテンション最高潮にならざるをえません。誰のことだよ。ぼくのことだよ!
と同時にかなり初期からの曲もかなり入っており、アーケード時代からのファンにはたまらない選曲になっています。

あくまでも、「プロデューサーのみなさん、これからもプロデュースよろしくお願いします!」というコンセプトのアイマスライブ。
もう7年ですが、プロデューサー(ファン)は「まだ7年!」と思っているでしょう。
まだまだ元気、どころか、加速し続けるアイマスプロジェクト。ぜひ次の機会があったらライブも行ってみてください。2次元と声優さんの狭間(通称・2.5次元)から生まれる激しい熱気を感じることができるはずです。
あっ、でもサイリウムは8色+ウルトラオレンジ数本持って行くと、手持ち無沙汰にならなくて楽しいよ!

(たまごまご)
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