「男の日傘」。皆さんはどういうイメージを持つだろう。

女性なら日傘のメリットを知る人は多く一度使うと手放せないが、男性は「見慣れない」という違和感から「使ってみたいけど何となく気がひける…」という人もいるだろう。

ここに昨年行われた面白いツイッターアンケートがある。680人が選んだ「男の日傘が似合う有名人ベスト10」だ。

1位は257票でSMAPの稲垣吾郎さん
2位は75票で松田翔太さん
3位は74票で向井理さん
4位は堺雅人さん、5位は大沢たかおさん

と続く。汗をかかなさそうなさわやかなイメージの人が選ばれた印象を受けるが、それにしても結果を見ていると本当に日傘をさしていそうで「男の日傘もアリかも」という人が増えたのではないだろうか。


同アンケートを行ったのは男も日傘をさそう会の会長で創業明治29年の傘専門店「心斎橋みや竹」の宮武和広さん。
同店では1年で「男の日傘」を千本以上販売するなど売れ行きも好調だという。10年以上も前から「男にも日傘が必要」と普及につとめ、作家のいとうせいこう氏がツイッターでつぶやいた「男にも日傘があった方がいいよ、この陽射し」という一言にスピーディーに対応。いとう氏デザインの「どくろ柄日傘」を手がけた男性日傘のエキスパートでもある宮武さんに質問してみた。

――なぜ今、「男の日傘」が必要なのか
「紫外線による皮膚へのダメージは女性だけのものではありません。毎日、顔に刃物をたてる男性のほうが影響を受けやすい。有害紫外線は皮膚の深層を傷つけて肌の老化や癌に繋がったり白内障や、持病を誘発する可能性もあります。
さらに暑い中を無防備に歩き回ると熱中症で倒れたり、急激に体力を消耗してしまうこともあります」

――男の日傘のデメリット
「少し荷物が増えること以外は『周りがさしていないから恥ずかしい』という精神的な部分が大半だと思います。男の日傘がメディアなどで紹介される時、男の美白意識が強調されて語られることが多く、ひ弱で中性的な印象で紹介されてしまうのが残念ですね。日傘は美白のためだけではなく『自分の身をプロテクトするツール』なのです」

――男の日傘のメリット
「帽子よりもカバーできる範囲が広く、汗かきの人でもセットが崩れることがありません。髪型を気にするお洒落な人にこそ日傘はうってつけです。また紫外線防止は薄毛対策にもなりますので髪そのものを守ります」

――男性用日傘の開発で心がけていること
「ご年配の方だけでなく働き盛りの20代~50代、炎天下に外を歩かれるビジネスマンの方々のスーツにもフィットするグレードと、爽快なクールビズスタイルに合うように心がけています。雨傘をさしているようにみられないために、一見して日傘とわかる涼感と質感、機能性にも優れた日傘も提供しています」

同店で取り扱う男性用日傘は晴雨兼用として使える日傘も多いのでまずは気軽に試すことができる。
ほかにも和風柄やドクロがあしらわれたもの、内側がストライプで見た目も涼しげな日傘などオシャレな日傘も多いのが特徴だ。

――ビギナーは、まず「愛の傘下」から
「最初の一歩が踏み出しにくい方は、彼女や奥様、お友達、お嬢さんに傘をさしかけてあげてはいかがでしょう。1人でさすことには少々の抵抗があっても、大切な人と二人でさす日傘には、案外抵抗がないものです。一度体験すれば、日傘の素晴らしさを分かっていただけると思います」

2011年、環境省は日傘をさして歩く場合は、ささない場合より熱ストレスを約20%軽減できるため、男女問わず日傘を使用することが望ましいという試算結果を出した。厳しい紫外線からシャットアウトできるだけでなく日傘を使用するだけで木陰に入るような涼しさを体感できる。肌の弱い宮武さんは「男なのに肌が焼けない」ことが、最大のコンプレックスだったというが、それなら同じ思いをしている人のためにと「男の日傘」を普及しようと精力的に活動してきた。
宮武さんがずっと提唱してきた「男の日傘」という新たなライフスタイルに環境省が追いつき、お墨付きを出したというわけだ。

酷暑、熱中症、肌のダメージ…自分の身は自分で守る。男女ともに「日傘がなければ歩けない」そんな時代が到来しているのかもしれない。
(山下敦子)