日本で累計260万個、海外で累計75万個を販売した大ヒットおもちゃ『∞(むげん)プチプチ』開発者が明かす『∞(むげん)アイデアのつくり方』

著者は、梱包部材の「プチプチ」をつぶす感触を何度でも楽しめるおもちゃ『∞プチプチ』、枝豆を皮からつまみ出す感触を味わえる『∞エダマメ』、自分の名前が商品名となった2人対戦ゲーム『瞬間決着ゲーム シンペイ』、スマホと連動したボードゲーム『絶叫! おばけ屋敷ゲーム』などのヒット商品を生み出している、バンダイ、プレイトイ事業部の高橋晋平さん。


高橋さんの仕事はおもちゃの企画を出すこと。毎日毎日おもちゃに関するアイデアを出していかなければならない。本書は、アイデア出しに苦しんでいた経験から生み出した究極の発想術「アイデアしりとり」を紹介した書籍。
「ボツネタキングの私のようなごく普通の人間でも、1000個に1個は『最高のアイデア』が出せる発想術です」

「アイデアしりとり」が生まれたきっかけのひとつが『∞プチプチ』の大ヒットだった。
「それまでは『いいアイデアを出さなければ!』と意気込んで苦労していたのですが、たんなる偶然の思いつきで生まれた『∞プチプチ』がヒットしたときに、アイデア出しは“テキトー”でいいんだと思いました。質にこだわらず量を出していけば、いい企画につながるアイデアが出る確率が高まるということを実感しました」

さらに契機となったのが、病気による休業。ストレスからか、病気で身体が動かなくなり休職することに。両腕からの痛みが全身へ広がっていき、寝たきりの状態が続く。復帰できたのは1年半後。高橋さんはこんな状況の中でも「いつかまたおもちゃを作る仕事に戻りたい」という気持ちから、寝たきりのままでもアイデアを考えられるようにボイスレコーダーを使ってしゃべったことをメモするように。そんな中から何気なく始めたのが、“しりとり”を使うという方法。
「りんご、りんご握りつぶし体験機。
ゴリラ、ゴリラバトルロボット。ラジオ、ラジオDJごっこ。鬼、鬼ごっこボードゲーム……」

ルールも簡単で、ひとりでもどこでもいくらでも続けられるしりとり。この闘病中に始めた「アイデアしりとり」が究極の発想術につながっていく。
「この“しりとり”をやっていくうちにイケるのではと思い、ルール化と効果検証を行い、しっかりとした発想術として確立しました」
「アイデアしりとり」とは、しりとりで出てきた言葉から連想したアイデアを次々とメモしていき、大量のアイデアを集めた後で、よいアイデアを選ぶといった方法。

「アイデアしりとり」のやり方は下記の通り。
1. 考えたいテーマ(A)を決めて、しりとりで次々に出て来る言葉(B)から連想されるアイデアを考え、メモしていく
「A×B→アイデア」。たとえば、Aのテーマ=「子どもが喜ぶ斬新なお菓子の商品アイデア」で、Bの連想ワード=「いくら」だとすると、A×Bから頭に思い浮かんだアイデア→「いろんな味のプチプチイクラ」をメモする。
さらにBの「いく“ら”」からしりとりで「“ラ”ッコ」というワードを思い浮かべたら、そこから導き出されるアイデア→「石で割って食べるお菓子」をメモ。これを続けていく。

2. 100個アイデアを出し、その中から「候補アイデア」を自分で5個選ぶ
3. 5個を人の意見などを参考にしたりアレンジしたりして、1個に絞り込む
4.これを10セット実施し、10アイデアを企画書にして、さらに吟味すると、そのうち1つは「最高にアイデア」になる

「アイデアしりとり」では“スピード”も重要と高橋さん。
「頭で考える前に言葉がアウトプットされるため、自分の考え方の癖や思考の枠からはみ出て、意識的には発想できないアイデアも生まれてきます」
高橋さんは、日々、アイデアを瞬時に出す訓練を行っていて、思いついたアイデアをTwitter上(@simpeiidea)で発信している。


ここで考えてしまうのは、高橋さんのアイデア出しの力が特別なのではと……。
「思いつく力は決して特別な力ではありません。入社当初に与えられた1000個の商品アイデアを考える『1000本ノック』の時は、『いいアイデアを出してやろう!』と構えた途端、何日もまったくアイデアが出ないこともありました」

また、入社して以来、誰よりも多くのボツネタを出し続ける「ボツネタキング」だという高橋さん。
「これまで約5000個のアイデアを出してきましたが、その中から商品化されてヒットしたものは5個くらい、1000個に1個くらいの割合でヒットにつながっているのです。『ボツネタキング』として会社には迷惑をかけています。他の人と違う点があるとしたら才能とかではなく、ろくでもないアイデアを出し続けることに抵抗がないことかもしれません」

アイデア出しをするにあたってアドバイスとして挙げているのが、「自分の中にある発想のブレーキをはずす」ということ。
へんなアイデアを思い浮かべてしまってこんなことを考える自分が恥ずかしいといった『恥ずかしさによるブレーキ』、現実的に無理だろうといった『あきらめによるブレーキ』をかけてはいけないと高橋さん。
「後々、そのアイデアから現実化する解決策が見つかったり、いいアイデアとつながったりすることがあります。『へんなアイデアを出したら笑われる』『現実離れしている』といった考えにとらわれずに、ろくでもないアイデアでいいからとにかく量をいっぱい出してほしい。10個、20個アイデア出ししていいのが出なかったからといってあきらめずに、その積み重ねによって1000個出した中で絞り込んだアイデアは『最高のアイデア』になるはずです」

「アイデアは問題解決法」だと高橋さん。
「アイデアと聞くと企画を考える人だけが必要と思うかもしれませんが、すべての人が知らず知らずのうちに、日々の生活の中でアイデアを出しながら暮らしています。仕事で学校で家庭で何か困った時が発生したときに、それを解決してくれるのがアイデア。
『アイデアしりとり』をすべての人々の問題解決法として利用してもらえたらとってもうれしいです」
(dskiwt)
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