「お兄さん」で通用した20代前半。それがいつしかおじさん化していく。
ほうれい線が深くなった、腹が出てきた、マクラのニオイを嗅いだ嫁(彼女)がえずいたなど。
しかし、『いちばんよく分かる おじさん病』(西東社刊)の監修を務めた溝端隆三氏にお話を伺ったところによると、目に見えるおじさん化は当然のこと。それよりも、本当に気をつけるべきおじさん化があるという。
「見た目からは分からない、自覚もない、接した人にしか分からない”おじさん病”を発することは深刻な問題です。止まらないダジャレ、下品な下ネタ、昔自慢、粘着型説教など、これらは立派な病です」

しかも、おじさん病に年齢や説別は関係ない。若い人も、はたまた女性もおじさん病にかかる可能性がある。
逆に、年齢的にはおじさんでも好かれる人、つまりは、おじさんの症状が出ない人もいる。溝端氏は、年齢や性別に関係なくおじさんっぽくなるのは、ある意味「病気」なのではないかと思い、「おじさん病」と名付けてカテゴリー化した。

●おじさん病の初期症状
まずは、おじさん病患者がよく使うフレーズと行動パターンを紹介。

・相手が平成生まれだと知ると、いまだに驚く
・食の細い後輩・部下に対して「ちゃんと食べてんのか!?」と言う
・指をめくるときに指をなめる
・5年以上も前の出来事なのに、ついこの前のことだと思っている
・先週の筋肉痛が治らない
・「流行ってる!」と知った頃にはもう下火になっている
・歯磨き中にえずく
・蚊が寄ってこない

――典型的な「苦手なおじさん」というと、具体的にはどういう人でしょう?
「親戚のおじさんのような人ですね。『いつになったら結婚するのか』というようなことを土足で聞いてくる人がいますが、まさにそういう人です」

溝端氏も年下の女性から「おじさん」と、からかわれることがあるとか。
「髪を切りに行くのを『散髪に行く』って言うと『おじさんだ』と言われることがあります」
自分もそうなので、なんとも頭の痛いところである。


それでは、溝端氏がまとめた「おじさん病」のたくさんの症例の中から3種を紹介しよう。


●ドヤ型 うんちく脳症候群(おじさん病症例1)
「とにかく自分の持っている知識・経験を『ドヤ!』と自慢するため、語り口調が全部上から目線になります。さらに『教えてあげている』とか『ちゃんと理解してる?』感を出してきます。最終的には『さっき言ったこと、覚えてる?』というクイズも放り込んできます。まあ、物忘れが激しくなってくる年齢のわりに、自慢して語れるだけの記憶力があるという点では、ある意味尊敬できますけど」
2人きりの時にうんちくを言われると地獄である。
――ドヤ型 うんちく症候群の人に出会ったら、どうすればいいんでしょう?
「症状を抑えたい場合はノーリアクションを。
聞いたあとは『へ~……そうなんですか…………全然別の話してイイですか?』と、別の話に変えてしまいましょう。こいつと話してもムダと思わせる方がいいです」

●がさつ型 無遠慮疾患(おじさん病症例2)
「出逢ったばかりの相手とは、ある程度の距離感を持って接するものですが、そのセオリーをブチ破ってくる、距離感の破壊者がこの人たちです。相手が年上なのでタメ口はまだ許せるとしても、『給料いくらもらってんの?』『家賃いくらのところに住んでんの?』と、答えにくいこともガンガン聞いてきます」
――TPOを一切わきまえないような人ですね。
「そうです。たとえ、電車の中など公共の場であってもリビングにいる感覚だし、高級店に行っても大きな声で注文します。そうなると『この人はこういう人』とキャラ付けして受け入れざるをえません。
デリカシーのない質問をされたり、行動を見かけた時は思い切って『そういうところが苦手なんです』と言い切るのがいいと思います」

●直球型 下ネタ症候群(おじさん病症例3)
「例えば、職場で女性がバナナやソーセージを食べてるのを見て『ふ~ん……、そんな感じで食べるんだ……』などとかましてきたら、おじさん病です」
――おじさんが直球型下ネタ症候群を患う原因は何なのでしょう?
「色々とあるとは思いますが、寂しいのが原因の一つだと思います。寂しいから誰かと関わりたい、そうしたコミュニケーションへの切なる欲望が、おじさん病菌でコーティングされてしまったもの、それが下ネタだとする説があります。この病にかかった患者さんは、社会や環境を変えない限り、この病は不滅でしょう」
もしも上司が直球型下ネタ症候群のおじさんだったら「はあ……。あ、ひょっとして、今の笑うところっすか?」等ということを言うと効果的だそうだ。

若い人とおじさんの違いといえば、10代の人はほんの少し前の出来事でも懐かしがる。例えば、中3の人が中2の頃に撮った自分の写真を見て「若~~~い!」と言う。
おじさん世代は5年前のことなら懐かしいと思うが、1年前のことなんて、ついこの前の出来事のように感じてしまう。いずれにしても、男女・年齢問わず「おじさん病」にかかってしまう可能性はあるわけで、素敵な年齢の重ね方をしたいものである。
(取材・文/やきそばかおる)

『いちばんよく分かる おじさん病』(サダマシック・コンサーレ著 西東社刊)
おじさん病監修 溝端隆三、川崎昌平、福田フクスケ
「ちゃぶ台ひっくり返し症候群」「おしつけ型 ありがた迷惑疾患」など、さまざまな”おじさん病患者”の症状を分類し、その原因、処方箋、セルフチェックの方法を紹介。

※溝端隆三氏は、以前コネタでも紹介した「正しいブスのほめ方」「正しい太鼓の持ち方」(共に宝島社刊)の監修も担当しています。