移動中は、鞄に数冊の本を必ず入れている。いつ、読書のタイミングが訪れるかわからないから。
カフェでくつろぐ時、電車で仕事に向かう時……。スキを見ては、サッと取り出して、ドバっと読む。
ただ、問題が一つだけ。ずっと鞄に入れてると、いつの間にか本がボロボロになってしまうのだ。そういや、私の本棚にはボロボロの本が多いかも。まぁ、ボロボロっぷりとその本への愛情の深さは、比例している場合が多いのだけど。


でも、何とかしてあげたい。愛着ある本だからこそ、ケアしてあげるのは当然でしょう。
そこで、注目してみた。今、「空想製本屋」による“本の仕立て直し”が話題を呼んでいるらしいのです。

ところで皆さん、「製本」ってご存知ですかね? 辞書には、こう書いてある。
「印刷物・原稿などを綴じ合わせて、1冊の書物にまとめること」。

じゃあ、「空想製本屋」では何をしてくれるのか? 同店ホームページには、こう書いてある。
「大事な一冊をお預かりし、一度ばらして糸で綴じ直し、新しい姿に仕立てます」

まず、サービスの具体的な内容についてご説明します。なんと、いきなり依頼者から預かった一冊を完全にバラバラにしてしまう。ページ1枚1枚に至るまで、本をキレイに解体するのだ。
当然、これらは糸で綴じ直さなければならない。でも、元の姿には修復しないそう。
では、どうするのか? 実は同店は、事前に“その本に込められた気持ち”や“思い出”などを依頼者からヒアリングするらしい。それらの回答を元に素材や構造、デザインを決める。これって、まるでオーダーメイドシャツみたいじゃないですか!?

ちなみに“本の仕立て直し”のために行われるヒアリングでは、以下のような質問が展開されているという。
「あなたがこの本と出会ったきっかけは?」
「この本のどんな所が気に入っていますか?」
「一番好きな言葉や場面は?」
「どんな状況でこの本を読みたいですか?」
「この本にまつわる印象的な記憶や思い出を教えてください」
上記の質問を元に、本に新しい姿を与えるのが同店の仕事。そのイメージを頼りにデザイン画が製作され、お互いが納得できた時点で正式に製本がスタート。全て手作業で本を作っていく“手製本”で作業は進められ、1か月半~2か月後には“本の仕立て直し”が完了!

ところで、なぜこのようなサービスが起ち上がったのだろう?
「かつてのヨーロッパにおける製本の仕組みからヒントをもらいました。
完全に製本されていない“未綴じ”、“仮綴じ”状態で本が売られ、気に入ると製本屋で好みの形に製本してもらう。そんな流れが、ヨーロッパにはありました。読み手が本の身体づくりに関われていたあの時代を、現代の日本に適うかたちで行いたいと思ったのがきっかけです」(同店・本間さん)
製本方法や素材に関しては、美術品になりすぎない、かつ手の中に収めて気持ちのよい形、素材を選ぶことを心がけているという。

結果、どのような本の形になるかは画像でご確認ください。言うまでもなく、オリジナルな風合いが感じられるじゃないですか! それでいて突飛過ぎず、落ち着きもあるような。まさに、「ひとり」のためだけに仕立てられた「いっさつ」。

もちろん、詩集や小説から哲学書、歴史や評論まで、本であれば何でも注文を受け付けているという。

ちなみに、料金について。製作費の目安は、おおよそ以下のような感じらしい。
・単行本(200頁)を布装厚表紙に→25,000円から
・文庫本(200頁)を布装厚表紙に→20,000円から
・30頁程度の冊子を布装ソフトカバーに→5,000円から
物にもよるが、4万円を超えることはほとんど無い模様。

依頼者にとって「その本はどんな存在なのか」、「その本にどんな気持ちや思い出が込められているか」を装丁として表現するのが、空想製本屋の仕事。要するに、本と依頼者の間に生まれた物語を表現する。

「依頼された本を好きになってしまうことは度々ある」と本間さんは語っているが、そんな人の仕事は信用できます。
(寺西ジャジューカ)