最近はりんごのみならず、くだもの全体の消費量が減っている。
りんごを食べない理由は人それぞれだが、一度に食べきれない、切るとすぐに茶色に変色してしまう、などを挙げる人もいるだろう。
だが、ひとくちでりんごといっても、日本だけで約2,000品種もある。最近では、切っても茶色に変色しない「千雪(ちゆき)」というりんごも登場。すりおろして一晩放置しておいてもほとんど変色しないため、サラダや加工用にも使いやすく、注目が高まっている新品種だ。
「千雪」のふるさとは、全国のりんご生産量の半分以上を占めるりんごの聖地、青森県。生みの親は日本で唯一のりんご研究施設、青森県産業技術センターりんご研究所。先日、同研究所を訪問・取材。「千雪」をはじめとする青森産のりんごを試食させてもらうことに。
試食テーブルには「ひろさきふじ」のような定番から、「北紅(きたくれない)」や「星の金貨」など県外ではまず見かけないレアりんごまで全7種がズラリ。真っ赤な色が美しい「北紅」は甘くさわやかな口当たりで、皮が薄く丸かじりに最適な「星の金貨」はまさに金貨のような黄色が目を引く。前述の「千雪」は甘みが強く、果汁もたっぷり。
それにしても、品種によってここまで味や食感が違うことにあらためてビックリ。甘味と酸味のバランスもそれぞれだし、シャキシャキした歯ごたえが持ち味のりんごもあれば、口に広がるジューシーな果汁がたまらないものもあり、本当におもしろい。青森全体では約50品種のりんごが栽培されており、およそ40品種が市場に出荷されているという。県外では買える品種に限りもあるが、「利きりんご」感覚でいろいろ試してみると、りんごの楽しみも広がりそうだ。
ところで、りんごの種を植えれば自分でも同じりんごが作れると思っている人もいるかもしれないが、それは誤解。同研究所の川嶋浩三所長いわく、
「ふじの種をまいても、何ができるかは実がなるまでわかりません」
実は、りんごには受粉するのに別の品種の花粉を必要とする性質がある。そのため、枝を接いで栽培するのが一般的だが、品種改良をする場合には種から育て、できたりんごを吟味していかなければならない。
「種をまいてから新しい品種ができるまで、20年以上かかることがほとんど」
というから、なんとも気の遠くなる話だ。
それでも青森など各りんご産地では品種改良に積極的で、ここ半世紀ほどのあいだにも国光や紅玉から、スターキングデリシャス、ふじへとスター品種も移り変わってきた。いまではふじの生産量が県内全体の50%を占めるほどだという。
ちなみにりんごのポリフェノールは皮に近い部分に多いといわれるので、皮ごと食べるのがオススメ。
知れば知るほど奥深い青森りんご。今年は大雪や猛暑などきびしい天候ではあったものの、
「秋の時点では例年並みにいい状態になってきている」
とは地元農家さんの弁。個人的には「切るのが面倒」というのも、これまでりんごを敬遠していた理由のひとつだったので、今回の取材でアップルカッターも購入済み。
最近りんごをあまり食べていなかったという人も、今年はりんごシーズンを満喫してみては。
(古屋江美子)