review

「カバディカバディ」言ってないじゃん! 全日本カバディ選手権レポ

カバディカバディカバディカバディカバディ……

はじめて「カバディ」という競技の存在を知ったのはいつだったろう? ビートたけしの「スーパーJOCKEY」“THEガンバルマン”シリーズだったような記憶がある。
「カバディカバディカバディ……」という、なんとも子どもの耳を引きつけて離さない呪文のような言葉をつまみ枝豆やダンカンらが連呼し、追いかけっこのような、鬼ごっこのような動きでブラウン管の中で踊っていたシーンをなぜだか鮮烈に憶えている。

競技名は知っているけどルールはよくわからない、そんなスポーツの代名詞とも言えるのが「カバディ」ではないだろうか。そんな「カバディ」の全日本選手権大会が、1月19日・20日の両日、国立オリンピック記念青少年総合センターで開催、しかも観戦無料! と聞き、思わず足を伸ばしてしまった。そこには深遠なるカバディワールドが待ち受けていた。


《ガンジーが、タゴールが愛したスポーツ、それが「カバディ」》
会場に着くと受付で「カバディ」のルールや歴史をまとめたパンフレットをもらうことができた。コレは正直ありがたい。勢いだけで、ルールもろくに勉強せずに来てしまったから。ひとまず、このパンフレットを参考に「カバディ」についてまとめてみたい。

【カバディとは】
インドやバングラディッシュなど南アジア諸国で伝統ある国技として親しまれてきたスポーツ。紀元前、武器を持たずに多彩なテクニックを用いて獣を数人で囲み、声をかけながら捕らえるという狩猟方法をルーツに生まれたとされている。インドの叙事詩『マハーバーラタ』にあった《主人公の息子が七人の敵に囲まれ、突破しようと試みる》という記述に基づいて、一人の攻撃手(レイダー)と7人のアンティ(守備側)でプレーするというルールの基本が定められた。また、長らく南アジアの各地域で行われていたこの競技は、20世紀にインドを中心にルールの整理が行われ、かのガンジー、ノーベル文学賞タゴール、ネルー首相などの応援を受けて全面的な組織づくりが行われた。
……という、数千年の歴史を持つ、なんとも由緒正しいスポーツなのだ。

【カバディのルール】
コートに入れるのは1チーム7人、40分間(20分ハーフ)の競技時間で行われる。攻撃手(レイダー)が相手陣地に侵入し、防御者(アンティ)にタッチして自陣に帰ると一人につき1点を獲得することができる。このとき、レイダーは必ず「カバディ、カバディ、カバディ……」と一息で連呼(キャント)しながら攻撃しなければならない。一方、アンティはレイダーを捕まえて陣地に返さないようにする。アウトになったレイダーはコートの外に座り、得点が入ると、その得点分(2点なら二人)がコートに復帰できる。この他にボーナス点もある。

……文字にすると一見複雑そうに見えるが、観戦すればものの5分でおおまかなルールはマスターできるのではないだろうか。「鬼ごっこのようだった」というかつての自分の記憶は半分正解で、半分不正解。実際には攻撃と守備の双方にかけひきがあるなど戦術性もあり、コンタクトプレイの激しい「知的な格闘技」とも言えるスポーツだった。
レイダーは相手に触れるため、さらには少しでも敵陣奥深くに入ってボーナス点を挙げるために、まわし蹴りと見紛うほどのステップインをみせ、一方のアンティは相手を返すまいと後ろから横から激しいタックルをぶちかます。ラグビーのタックルを連想してもらえれば一番近いと思うが、激しい時には3人同時に襲いかかることもあり、選手の中には、ヘッドギアで頭部を守る者もいれば、マウスピースを装着して試合に臨んでいる選手もいた。それだけアタリが激しいのだ。

さて、2試合ほど観戦を終えた頃だろうか。私は、ある重大なことに気づいてしまった。
誰も、「カバディカバディカバディ……」と叫んでいないのだ!
もう一度、受付でもらった「カバディのルール」に目を落とす。《レイダーは「カバディ、カバディ……」と連呼しなければなりません》とやっぱり明記されているのに! これってどういうこと??
マイクを握って大会進行を務めていた河合陽児・日本カバディ協会事務局長に話を聞いてみた。


《日本は強豪国レベル、それが「カバディ」》
─── あの……「カバディ」って、叫ばないんですね。
河合 はじめてご覧になった方は、皆さんそうおっしゃいますね(笑)。いや、ちゃんと「カバディ」と言ってはいるんですよ。でも、聞こえないボリュームなんですね。大きい声で言う必要はないので。

─── え、ちょっと待ってください………あぁ、確かに、口がちょっとだけ動いていますね。そのくらいでいいんですね。むしろ、守備側の選手の気合いの入ったかけ声の方がボリュームが大きくて、それにもかき消されますね。
河合 攻撃の選手は、「カバディ」とキャント(連呼)しないと反則になります。それに、「カバディ」とキャントしている間が攻撃時間なんです。

─── もう絶対、「カバディカバディ」って大声で叫んで試合しているんだとばかり思っていました。ちなみに、カバディの見どころはどんなところでしょうか?
河合 身体と身体がぶつかり合うことが多いスポーツなので、その激しさ。あと、攻守の切り替わりも早いので、スピーディな展開を楽しんでいただけると思いますね。

─── タックルも本当に激しいですもんね。やっぱりケガも多いですか?
河合 多いですね。特に関節系、それと捻挫が多いですね。タックルも、見ていない方向から襲いかかってきたりするので、結構危ないんですよ。準備ができていない状況なので、自然とケガも多くなります。

─── 皆さん、普段どんな練習をしているんですか?
河合 チームスポーツですから、守備のフォーメーションの練習がメインになりますね。扇形に陣形を組んだり、手をつないで二人で守る練習とか、一人が囮になって後ろの人が捕まえたり。手のつなぎ方にも種類がありますからね。タッチされても相手の陣地に戻さなければいいので、実に様々な守り方があります。

─── 「カバディ」を始める方って、どんなキッカケが多いんでしょうか?
河合 友だちに誘われて、というのが多い気がします。他には、日本一になりやすい、日本代表になりやすい、というのも大きいかもしれないですね(笑)。あと、決勝に進出した「大正仏陀」は大正大学のOBのチームなんですが、大正大学は昔からカバディが盛んで、指導者もいらっしゃるので、それがキッカケの選手もいますね。

─── 日本代表もあるんですね。日本の競技レベルはどのくらいの位置にあるんでしょうか?
河合 2010年に行われたアジア競技会で男子日本代表は銅メダルを獲得しました。また、昨年開催された第一回女子W杯でも女子日本代表が銅メダル。国際的にも強豪国の地位に日本はいると思います。


「日本代表、そして国際舞台も夢じゃない」……これは確かに魅力的なワードだ。でも、本当にそんな単純な理由で始めるんだろうか? 選手にも話を聞いてみたくなり、大会運営で広報を務めていた、早稲田大学OBで形成されるチーム「H.C.WASEDA」の西山裕貴選手にも話を聞いた。

─── 西山さんが「カバディ」を始めたキッカケは何ですか?
西山 学生の頃、友だちが「カバディ」をやっていたんです。

─── じゃあ、その友だちに誘われて?
西山 誘われてというか……フジテレビの「スポルト」で水野裕子さんがマイナースポーツにチャレンジするコーナーがあったんです。その中で「カバディ」が取り上げられ、友だちが映っているのを見て、「自分もカバディはじめたらテレビに出られるかなぁ」と(笑)。あと、競技人口がやはり少ないので「日本代表」も夢じゃないと聞いて、その「日本代表」という響きに憧れて……(笑)

すごく浮ついた理由のような気もしますが、やはり「日本代表」のネームバリューは相当なものがあるらしい。


《優勝は2年ぶりとなる「大正仏陀」》
2日間かけて行われた第23回全日本カバディ選手権。決勝は2年連続の顔合わせとなる「ABHIJIT KABADDI SANGA」(AKS※昨年優勝チーム)と「大正仏陀」(昨年準優勝)の戦いとなった。
それまでのトーナメントでは多いときには60点以上、平均でも30点は得点を挙げていた両チームだが、決勝ではなかなか得点が奪えない。レベルの高いチーム同士の試合は守備が安定しているため、どうしてもロースコアゲームになってしまうんだとか。
前半は4-3で「大正仏陀」がリードで折り返し。後半開始早々、「AKS」が逆転に成功するものの、その後「大正仏陀」が再びリードを奪い返し、14-10で2年ぶりの優勝を成し遂げた。
試合後、キャプテンで日本代表選手でもある高野一裕選手に話を聞いた。

─── 優勝おめでとうございます。
高野 去年は負けたんですが、なんとか2年ぶりに優勝することができました。 

─── 練習は結構厳しいんですか?
高野 実は、「大正仏陀」での練習、というのはほとんどないんですね。基本的には日本代表候補が集まってやる練習が、毎週、火・木・土の週3日ですね。みんな社会人なので仕事終わりの18時~21時の3時間、土曜日は14時~18時です。だから、今日戦った他のチームの選手の主力も、普段はチームメイトとして一緒になって練習をしています。

─── 普段から日本代表での活動がメインなんですね。日本代表としての今後の抱負を教えてください。
高野 前回、2010年のアジア大会で初めてメダルを取ることができたので、次の2014年の韓国・仁川大会ではそれ以上を目指したいと思います。


もし、「カバディに興味をもった」「実際にやってみたい」「自分も日本代表になりたい」という方がいれば、日本カバディ協会では定期的に講習会を開いているので、それに参加してみるのがいいだろう。直近では以下のスケジュールで開催の予定となっている。
●都立足立新田高校講習会
日時:1月21日(月)、24日(木)、30日(水)、31日(木)、2月4日(月)、7日(木)13時20分~15時10分
場所:高校近くの体育館

●カルチャースクール東急セミナー:カバディ講座
日時:4月~毎月第3土曜日17時30分~18時30分
場所:神奈川県横浜市、たまプラーザ内

また、これ以外でも要望があれば出張講習会なども随時開催してくれるということなので、日本カバディ協会のホームページなどもぜひチェックをオススメします。

今回、はじめて「カバディ」というスポーツを生で観戦してみたが、ルールもわかりやすいのですぐにのめり込むことができ、さらには世界的にも強豪国という事実を知って、俄然応援したくなった。「カバディカバディカバディ……」という不思議な言葉のイメージ先行だった競技だが、やっぱり先入観だけで知ったつもりになっちゃいかんなぁ……そうだ、もうひとつ質問をし忘れていた。この「カバディ」って、そもそもどういう意味なんだろう? もう一度、河合事務局長に聞いてみた。

河合 カバディの意味ですか? 意味は……「ない」とされています。
─── えぇっ!? そうなんですか? 意味もない言葉を皆さんあんなに連呼を……?
河合 意味があると、考えちゃうじゃないですか。無心になるための言葉なので、日本でいうと「ワッショイ」のような、かけ声として考えてもらうといいかもしれません。

むむむ。なるほど、無心になるためのスポーツ、という視点は、仏教やヨガといった精神的な鍛錬を必要とするインドならではと見ることもできるだろう。
じゃあ、日本で生まれていたら「ワッショイワッショイワッショイワッショイ……」だったのかしら?
(オグマナオト)
編集部おすすめ

あわせて読みたい

レビューの記事をもっと見る

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース

もっと読む

レビューニュースランキング

レビューランキングをもっと見る
お買いものリンク