JAL国際線のファーストクラスでは、ワインボトル入りのお茶が提供されているのをご存じだろうか? その名も「Queen of Blue deluxe(クイーン オブ ブルー デラックス)」。ワイングラスで嗜むのがスタイルだ。


言われなければ、確実にワインだと思うだろう。だが、中身は台湾産の青茶、オリンエタルビューティー(東方美人)。ちなみに青茶とは、完全発酵して紅茶になってしまう前の茶葉を加熱して、半発酵状態にとどめた茶葉のこと。飲んでみると、非常に香りがよく、うっとりするような自然な甘みがある。JALのファーストクラスのほかには、ミシュランの星付き店や高級ホテルなどでも提供されている、知る人ぞ知る高級茶。お茶のロゼワインとも呼ばれ、どんな料理とも相性がいい。


見た目のインパクトだけでなく、中身のクオリティも相当だ。原料は手摘みの高級茶葉と水のみ。ティーソムリエが3~6日間かけて水出しで淹れており、1日わずか40本しか作れない限定品。食品添加物は一切使わず、加熱処理もしていない。食の安全国際規格認証であるSGS-HACCPを取得しており、安全性も折り紙付き。価格は3,990円(税込)。
安くはないが、まるっきり高嶺の花というわけでもない。

同商品を販売するロイヤルブルーティージャパン株式会社の佐藤節男会長に話を聞いた。なぜ、お茶をボトリングすることに?
「たとえば高級レストランでちょっと贅沢しようというとき、お酒を飲まない人、飲めない人に相応しい飲み物がなかったですよね。お酒を嗜まない人を尊重するようなノンアルコールドリンクが作りたいと思ったんです」
たしかにワインがかなり充実している高級レストランでも、ソフトドリンクとなると大衆食堂のラインナップと変わらない場合も少なくない。高級レストランや飛行機のファーストクラスというハレの場には、それに見合った飲み物が欲しいもの。ワインボトル入りのお茶ならソムリエがサーブできて、高級感もあり、自然と気分も盛り上がる。
何も奇をてらって、ボトルに入れたわけではないのだ。

同社ではこのほかにも世界中の銘茶を扱っており、もちろん日本の緑茶もある。どれも選りすぐりの茶葉だが、なかでも静岡県浜松市天竜の茶名人、太田昌孝氏の厳選した畑で取れる茶葉を使った「King of Green MASA premium(キング オブ グリーン マーサ プレミアム)」は21万円という超高級茶。ワインに例えるなら、ボルドー5大シャトーの1級畑産といったところか。
「ペットボトルの茶飲料が普及したことで、安い茶葉だけに需要が集中し、危機的な状況にあるお茶農家も少なくありません。いいお茶を作りたい人はたくさんいるのに作れない状況にある。
こうした高級茶の存在を伝え、需要を生み出すことには社会的な意義もあると考えています」
最近は急須で飲む習慣も減っているが、ボトルであれば急須でお茶を淹れる手間もない。

さらに同社では、新たなおもてなしのスタイルとして「茶宴」を提案している。茶宴とは、コース料理とお茶のフルコースのマリアージュを楽しむノンアルコール宴会。料理は日本料理やフランス料理、お茶は食前茶・食中茶3種・食後茶と出すのが基本。
「年齢や国籍、宗教などの多様性を尊重し、全員が平等に楽しめる宴会スタイルとして、茶宴を広めていきたいですね」
すでにニューヨークで開催したところ、現地メディアから大絶賛されたそう。

日本では20代の3人に2人は飲まないというデータもあり、お酒に頼った接待や酒の席での無礼講が通じる時代ではなくなっていくはず。
日本のおもてなし文化は世界に誇るべきだが、今後は茶宴のようにノンアルコールでもてなす機会も増えそうだ。

商品はホテルやレストランで楽しめるほか、同社のオンラインショップ、銀座三越とJR大阪三越伊勢丹にて購入可能。価格帯は3,000円~21万円と幅広いが、人気があるのはJAL搭載の「「Queen of Blue deluxe」、「Royal Darjeeling Rajah deluxe(ロイヤル ダージリン ラジャ デラックス)」(2,940円)、「The Gyokuro Hojicha KAHO(玉露ほうじ茶「香焙」)」(4,725円)あたり。内祝いなどギフトに利用する人が多いという。

お茶というと日常的な飲み物というイメージが強いが、非日常の贅沢茶を嗜む楽しさも知っておきたいもの。ロイヤルブルーティーのボトリングティーが世界の一流シーンで当たり前のように出てくる日もそう遠くなさそうだ。

(古屋江美子)