あ、niconicoってのは、これらサービスの総称です。ややこしいですけどね。というわけで以下「ニコ動」とさせていただきます、ぺこり。
でもってボーカロイド「初音ミク」をはじめ、さまざまなムーブメントが生まれてきたのは、ご承知の通り。4月27日に千葉・幕張メッセで予定されている巨大イベント「ニコニコ超会議2」では、あの任天堂が特別協賛。ユーザーの期待を良い意味で裏切る「斜め上の進化」は健在です。
そんなニコ動から、またまた新しい発表がありました。自作ゲームの祭典「ニコニコ自作ゲームフェス」です。オリジナルゲームが対象のコンテストで、大賞作品は10万円、ゲーム制作ツール賞が5万円。他にエンターブレイン、オニオンソフトウェア、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの協賛三社から各賞が授与されます。もっとも、表彰式がニコニコ超会議2で開催される方が、受賞者には嬉しいかもしれませんね。
ただ、ゲームって作るの大変じゃないですか。
それにしても、なぜニコ動でゲーム開発コンテストを開催することになったのか。仕掛け人のお二人に、ばっちり話を伺ってきましたよ。
伊豫田旭彦さんは昔、自分でも同人ゲームを作っていた経歴の持ち主。シューティングゲームが自作できる伝説のソフト「デザエモン」にもハマっていたとか。青山雄一さんはニコニコ動画の人気コンテンツの一つで、ゲームを遊びながら生放送をする「ゲーム実況」の元有名人。ゲーム実況の書籍まで出されています。なるほど、中の人もかなーり濃い面々なんですね。
はじめに伊豫田さん、「ゲームはニコ動で最大のコンテンツなんですよ」と切り出しました。これまでアニメやボカロのイメージが強かったので、これにはビックリ。
内容も「ゲーム実況」「スーパープレイ」などから始まって、自分でしゃべるかわりに、無料のおしゃべりツールに実況させる「ゆっくり実況」などが人気なんだとか。女性視聴者が多いのも特徴で、ホラーゲームを男二人がびびりながら実況プレイする、なんて動画も赤丸急上昇中。コアユーザーなら常識だと思いますが、すごいことになってたんですねえ。取材前のリサーチ不足で、申し訳ないです!
ただ、ゲームユーザーとニコ動の視聴者が重なっていることはわかった。そりゃまあ、みんなマリオ世代、ポケモン世代ですもんね。でもでも、動画をアップしたり、生放送したりするのと、ゲームを作ってコンテストに応募するのとでは、広くて深い溝がある。これまでも、長いこと浮かんでは消えていた幻の企画だったそうです。
そこで強力な援軍となったのがエンターブレインとのタイアップ。「RPGツクール」シリーズの最新作「VX Ace」展開にあたり、両者が意気投合。今回のコンテストに結びつきました。
また、ニコ動ではRPGツクールで制作されたホラーRPG「青鬼」や、ホラーアドベンチャー「Ib(イヴ)」のゲーム実況が人気コンテンツ。前者が28121ヒット、後者が11767ヒットと、共に万単位の検索数を誇っています。ちなみに「RPGツクール」のヒット数も26434件と、なかなかのもの。こうした背景もタイアップを後押ししました。
「自作ゲームが、ボーカロイド並に楽しんで貰える世界を夢見ています」と伊豫田さんは語ります。ボカロ以前にも音声合成技術を用いたシンセサイザーがあり、楽曲の投稿サイトもありましたが、いまいちブレイクしませんでした。伊豫田さんは、いずれも「クリエイター目線」のサイトだったからと分析します。
これが動画共有+コメントという、徹底的に「視聴者目線」にたった投稿サイト、すなわちニコ動を通してブレイクしました。オリジナルゲームも同じことが言えるのでは、というわけです。「ニコ動には商業や同人関係なく面白いゲームなら受け入れる目利きゲーマーが多数居るんですね。これまで自作ゲームってネットでは投稿サイトと2ちゃんねるくらいしか拡散手段が無かったので、ニコ動のプレイヤーさんに届けられたらゲームを多くの人に遊んで貰えるかなと」(伊豫田さん)
ちなみに投稿作品の目標数を聞いてみたところ「50本も集まれば...」と、ちょっと弱気な答え。
選考基準にも「大賞は面白さ、独創性、熱意、二次創作の盛り上がり、長期的な伸びしろ、等総合的に判断します。 」と記されています。つまりゲーム本来の価値基準である「面白さ」以外に、4つも物差しが加わっているわけです。どれだけニコ動の視聴者のツボに刺さるかがポイントになりそうですよ!
ちなみにお二人のオススメゲームを紹介してもらったところ、青山さんから「巳年にちなんで3DCGのスネークゲームを作ってみた。」があげられました。自分の軌跡に衝突する前のタイムの長さを競う、いわゆる「スネークゲーム」(アラフォーなら映画「トロン」に登場するライトサイクルのようなゲームといった方がわかりやすいかも?)なんですが、3D空間で遊べるのがミソ。コンテストがはじまって、1週間程度でこんなクオリティのゲームが投稿されて、かなりビックリです。
また伊豫田さんからは「コンテストの応募作品ではありませんが」と前置きして、ニコ動で人気の「ハートフル彼氏」というゲームが紹介されました。女子学生が男子生徒や男性教師と交流し、友情や愛が育まれるノベル系の乙女ゲーですが、なんと主人公以外の外見がみんな鳩! ごめんなさい、この発想はありませんでしたっ! こうした真の意味で自由な作品がどんどん投稿されることを期待してやみません。
またサブコンテンツとして、オリジナルゲーム界隈の著名人に向けたインタビュー記事も掲載されています。
ちなみにお二人によると、日本は商業ゲームの市場が大きすぎて、他は「同人ゲーム」などと一緒くたにされがちですが、細かく見ていくといろんなクラスターがあって、互いに分断されているそうです。
たとえば即売会で販売されるゲームと、ネットでフリーで公開されるゲームは、それだけでクラスターが違います。他にも「ひぐらしの鳴く頃に」など、同人から商業に移行したゲーム群や、スマホアプリ&ブラウザゲームのように、デジタル配信されているゲーム群もあります。当然ながら美少女ゲームも別クラスターです。
これら全てを横串で通せるものって、実はこれまでなかったんですよ。ニコニコ自作ゲームフェスも、今後そうした存在をめざして成長させたい。そのためにも第1回目を成功させたいと抱負が語られました。
「もっともコンテストというやり方が本当に良いのか、実は僕らも手探り状態なんです。審査のやり方も、はっきり決まってません」(伊豫田さん)。
(小野憲史)