家紋ならぬ「パーソナル家紋」が人気だ。ツイッターやフェイスブック、LINEなど、「1億総アイコン時代」において、いわばオリジナルの家紋を作る人が増えている。
そんなパーソナルな家紋、略して「パ紋」の開発者の原田専門家さんにお話を伺った。

――「パ紋」(パーソナル家紋)を作ろうと思ったきっかけは?
「僕は元々、芸人志望で、大阪のNSC(吉本総合芸能学院)の11期生でした。(※同期は陣内智則さん、ケンドーコバヤシさん、中川家、たむらけんじさん等) NSC卒業後は、芸人活動の傍ら、劇場に出演する芸人が使用するアイコン(マーク)や、番組で使用するタイトルロゴ等を作ってたんです。作っているうちに、ふと、芸人のコンビ名のアイコンを個人にも作っていこうと思ったのがきっかけですね。個人的(パーソナル)な家紋なので“パ紋”としました」

現在もデザイナー・映像作家として活躍中で、陣内智則さんなど、芸人さんが舞台で使用する映像やテレビ番組の演出・編集等も出がけている。

パ紋は、メールやツイッターなどで注文を受け付けて作成。
「好きなものをいくつか挙げてもらって、それと相手の名前をヒントにデザインを考えます」

――原田さんが作ったパ紋は、現在は何種類ですか?
「706種類です。2年間ぐらいで作りました」(2013年2月16日現在)」
――706種類!!デザインのネタが尽きたりしません?
「例えば、麺類の好きな人が多かったりすると、モチーフがかぶったりすることはありますが、それ以外の好きなものがかぶらないので大丈夫です。ただし、以前、小栗旬さんのファンの方からの申し込みがあって、その人に合ったパ紋を作ったら、それを他の小栗さんのファンの皆さんがツイッターで見たらしく『私も』『私も~』っていう感じで、小栗さんファンからの要望が続いたことがありました(笑)。その時は、出演してらっしゃるドラマとか、舞台とか、いろんなイメージを元に作りましたね。普段知らない事や調べない事を調べるので僕自身、勉強にもなります」

――デザインは、学校で習われたんですか?
「いえ、学校等に通ったわけではなく、ペンを片手にものすごいスピードで絵を描き上げる『一発描き』で有名な狩集広洋さんに教わりました」

1つの「パ紋」が完成するまでにかかる時間は、1時間~1時間半。しかも無料で作っている。
制作中は、制作風景をユーストで中継しているので、パ紋が完成していく過程を見たい方は、ぜひ原田さんのツイッター@haradasenmonkaのフォローを。原田さんから、「何時から作ります」といった情報がツイートされます。

――大変な作業なのに、なぜ無料で作ってるんですか?
「僕が大好きな岡本太郎先生が、作品を売らなかったからです。先生は、作品が誰かに買われてしまうと、他の人が観られなくなってしまうから、売らなかったらしいんです。だから、デザインだけは無料にしようかと。そのかわり、完成したパ紋を入れたグッズ(アイフォンカバー、マグカップなど)を作ることができるので、よかったらそちらの購入をお願いします」

なんだか、人が良すぎる気がするが、グッズを買ってくださる方の率は高いそうだ。それなら、ちょっと安心。

実は、芸人さんのパ紋も作っている。作るようになったきっかけはというと…
●水道橋博士のパ紋の場合(画像参照) 
「『名前が“博士”と“専門家”なので、何かやらせてください』とツイートしたところ、『頼もうと思ってたんだよ~』という返信があって、嬉しかったですよ~。博士のパ紋は、出身地の倉敷と北野武さんの『武』をモチーフに作りまして、パ紋のスタンプもプレゼントしました。博士のブログを見ていたら、博士が著書『藝人春秋』のサイン本用のサインを書いている横で、お子さんが博士のまねをしてサインを書いていて、スタンプを押してくれてたので、本当に幸せです」

●小島よしおさんのパ紋の場合(画像参照) 
「小島さんが、スピードワゴンの小沢さんのパ紋を見てらしたそうで、『あれ、いいなぁ~』と言っていたそうなんです。小島さんの誕生日に小沢さんから依頼がありまして、ご本人にマグカップをプレゼントしました。
実際に使ってくれているそうです」

――今後、「パ紋」を作らせてほしい著名人は?
「まずは、水木しげる先生です。昔から大好きで、2003年に水木しげる記念館が鳥取に開館した時も行きました。内覧会では、水木先生の当時の年齢83歳と同じ数の83人を招待するって聞いたので応募してみたら、当たったんです。水木先生とファンの皆さんと一緒にまわりました。水木先生はそばにいるのに、みんな緊張して声もかけられないくらいでしたね…」

――水木先生の第一印象は?
「『妖怪だ!』って思いました」

――妖怪!(笑)
「実は、以前に先生ご自身が『僕は妖怪になった』という旨の発言をされてたんです。まさに、先生の存在そのものが妖怪でしたね」

――水木先生以外でしたら?
「舘ひろしさんです。陣内智則さんの結婚式に出席した時、2次会で舘さんと2ショット写真を撮らせていただいたんです。披露宴は中継があったこともあって、話しかけるような雰囲気ではなかったんですけど、別のホテルで行われた2次会で、もう二度とお会いする機会もないだろうなと思って、おもいきって声をかけたら撮らせていただけることになって…。その写真は大事にしています」

原田さんは舘さん本人から頼まれたわけではないのに、試しに舘さんのパ紋を作ったという。
「自分で色々と調べたら、舘さんはアイスクリームが好きらしい…ということが分かったので、アイスクリームをイメージしたんですけど、完成したパ紋はやっぱりサングラスのイメージが強くなってます(笑)。いつか、ご本人に色々とお話を聞いた上で、パ紋を作れたらいいなと思ってます」

そのほか、斉藤和義さんのパ紋も作りたいそうだ。
「大ファンで、いつも斉藤さんの曲を聴きながらパ紋を作ってるほどなので…」

原田さんにはさらに野望がある。


●商店街まるごとパ紋!

「パ紋を使った商店街のマップとかも作りたいですね。それぞれのお店の店員さんの人柄やお店の特徴などをパ紋にして、それを使いつつ」

作らせてくださる商店街を募集中とのことなので、ぜひ。(基本的な制作費は無料)
そのほか、お客さんとのコミュニケーションツールとして、メイドカフェにいるメイドさんのパ紋や、ホストクラブやキャバクラで働く人のパ紋もあるといいのではないかと原田さんは提案する。
「1人1人の好きなものをモチーフにしたパ紋を店員さんがつけてたら、それを元に会話が生まれると思うんです。お客さんの中には、会話が苦手な人も多いと思いますし」

ちなみに、原田さんの最終的な目標は世界の人口分(70億個)のパ紋を作りたいそうだ。
「その前にまずは1000個を目標にしていますが、2年以内でできそうです」

近々、東京でパ紋の展覧会を開催する予定。パ紋が「Pamon」として世界で通じる言葉になる日がくるかもしれない。(やきそばかおる)


●原田専門家さんのサイト
http://hara1000.com/rogo/
※原田さんにパ紋を作って欲しい方は、メールやツイッターのDM等で原田さんに相談を。パ紋の制作は無料ですが(ただし、デザインの直しなどは受け付けていません)、完成したパ紋を入れたグッズ(アイフォンカバー、マグカップなど)を作ることができるので、よかったらそちらの購入を。
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