『家族ゲーム』は、1981年の第5回すばる文学賞受賞作。本間洋平の小説だ。
落ちこぼれで融通がきかない問題児である弟、優等生の兄。弟を露骨にバカにする父親、父親をバカにしながらそれに従う母。そういった家族の中に異物として風来な家庭教師がやってきて嵐が巻き起こる……というドラマだ。
最初の映像化は、鹿賀丈史(料理の鉄人の司会、『麻雀放浪記』のドサ健!)の二時間ドラマ。
その後、森田芳光監督、松田優作主演で映画化。一直線に横に並んで並ぶ食卓で家族+家庭教師が食事をする映像(と音!)や、答案用紙を窓から投げ捨てるシーンなどが印象に残る傑作。
1983年の日本アカデミー賞で、弟役の宮川一朗太が新人俳優賞を撮り、ブルーリボン賞で森田芳光が監督賞を撮った。
次に映像化されたのはTBSの連続テレビドラマ。
家庭教師役を長渕剛。これが長渕剛のテレビドラマ初主演作だ。
まだ夜8時にプロレス中継を毎週やっていた時代で、裏番組を意識して、長渕剛は「プロレスに負けない気持ちで格闘してます」と発言。実際に、家庭教師と弟が格闘するシーンは、当時のドラマににしては珍しく段取りの見えない迫真の闘いっぷりだった。
弟を演じたのは松田洋治(その後、『風の谷のナウシカ』でアスベル、『もののけ姫』でアシタカの声を演じた)。
弟は、零戦の仕様を呪文のように唱えることで自分を保ったり、将棋の駒を投げて全部表だったらマス目を埋めるといった作業を延々と繰り返しているといった、こだわりが強い少年を見事に演じた。
おそらく、このドラマがいま作られたものなら「弟はアスペルガー症候群である」という設定となるだろう。だが、放映は1983年、社団法人日本自閉症協会が設立される6年前だ。
兄を演じたのは当時ジャニーズに所属していた三好圭一。
好評を受けて、設定とキャラクターを受け継いだ続編と、パート1のその後を描いたスペシャル版が作られた。
さらに大ヒットするドラマ『親子ゲーム』も、この流れ。長渕剛の演じるキャラクターが、ユーモアを削り、どんどん暴力的かつ真剣でマッチョになっていって『とんぼ』『しゃぼん玉』『英二』へと繋がっていく。
そして、2013年4月からフジテレビの連続テレビドラマ、 櫻井翔主演で復活。
現在ではアスペルガー症候群の認知度も高くなっている。さらに体罰に対する考え方も変わっている(以前の映像化では家庭教師はガンガン殴ったり蹴ったりしていた!)。
そういった時代状況の変化をどのように受けて、アレンジして作られるのか。
28年ぶりに復活するドラマ『家族ゲーム』を期待と不安を胸に待ち望んでいる。
(米光一成)