「納豆食べられる?」日本食が好きだという外国人に対して、日本人がよく問う文句だ。そして苦手だという顔をする外国人の機体通りの反応に私たちは「やっぱりね」と満足する。
また「好きだ」と答えたら、少々の驚きと共に、その外国人に親近感を覚える。とにかく「納豆」の話題は、日本人にとって外国人とのコミュニケーションツールの1つだ。

実際、日本に興味を持ってくれている外国人でも、どちらかと言えば「嫌い」という返事をもらいがちな納豆だが、じつはその納豆を比較的得意とする国民がいた。それはフランス人だ。地理的にも文化的にも遠いと思われる欧州の国がどうして納豆を苦にしないのか。彼らに話を聞いていくと意外な共通点が見えてきた。


初めて納豆を見る外国人にとって、独特の発酵臭、糸を引く見た目、粘る食感の3要素は、納豆を口へ運ぶまでのハードルを高くする。日本でも、苦手な人でも食べやすくするために、香りを抑えた納豆が売られている。しかしフランス人は、その香りを問題にしない人が多い。

彼らによれば納豆の香りはフランスの香りだそうだ。フランスには多くの種類のチーズがあり、中には独特の香りを醸すものも多い。そのチーズの香りに納豆が似ているという。
日本で暮らすフランス人の中には、納豆の香りに故郷の香りを重ね合わせる人も多いのだとか。香りの面で抵抗感が無いということは、納豆に対する障害が1つ消えるということ。ゆえに日本に滞在した経験を持つフランス人たちに聞いてみると、納豆を好きになる傾向が他国出身者より多いそうだ。

もちろん、全てのフランス人が納豆を全く苦にしないというわけではない。フランス本国に住み日本文化に触れたことがないフランス人にとっては、香りが幾分チーズと似ているからといって納豆を突然出されたとしても、問題なく食べられる人は多くないだろう。

しかし、食品において香りは各人の好みにかなりの影響力を持つ。
もし納豆が世界進出を目指すとして、アジア1国のローカルな食べ物から飛び出そうと思った時、香りという点でフランスは他国よりも納豆を受け入れられる素地があると言える。
(加藤亨延)

関連リンク
地球の歩き方 フランス/パリ特派員ブログ 加藤亨延の最新記事