カリスマAV監督、溜池ゴローの人妻本が発売された。その名も『軽自動車に乗る人妻はなぜ不倫に走るのか?』

衝撃的なタイトルの本書だが、不倫ブーム、熟女ブームの社会的背景から不倫の実態、AV出演の動機、さらには人妻の口説き方まで盛り込まれている。熟女・人妻好きはもちろん、不倫を防止したい既婚男性や性生活に不満を抱える主婦にもお勧めできる一冊だ。

「軽自動車に乗る人妻はなぜ不倫に走るのか?」という問いの答えは、90年代の日本社会を考察することで明らかになる。軽自動車、ファミリーレストラン、ラブホテルという「不倫の三種の神器」が急増し、不倫のインフラ整備が行われた時代。『失楽園』(する)が97年の流行語大賞となり、以降美しい不倫イメージが定着したようだ。

考察や分析もさることながら、本書の一番の魅力は著者、溜池ゴローその人である。
溜池は『義母〜まり子34歳〜』という伝説的な熟女モノAVを制作し、それまでマイナーだった熟女ジャンルを開拓したAV監督。昨今の熟女ブームの生みの親といえる。

小学生の頃から夏木マリが好きだという生粋の「大人の色気のある女性フェチ」だった溜池。
テレビドラマの助監督を経て、94年にAV業界に飛び込んだ。だが当時は「ロリ系巨乳美少女モノ」ばかりが売れていて、溜池もさんざんその類を撮らされたという。
熟女モノの企画を複数の制作会社に持ち込むもボツの連続。
撮れないなら業界から足を洗おう。そのとき声を掛けたのが、当時のソフト・オン・デマンド社長高橋がなりだった。
熟女のドラマを撮りたいです! 美少女ものがあるなら、美熟女ものがあったっていいでしょ? 大人の女性が大好きな男性、絶対たくさんいるはずです!
「よし。今までにない企画だ。やってみろ」
こうして制作が始まった。

まずはオーディション。ヒクソン・グレーシーが試合前の2週間は禁欲すると言っているのをテレビで見た溜池。10日間、エネルギーを溜めた。
当日。3人目の女性が面接室に入ってきた瞬間、溜池の下半身が反応した。
一目見て恋に落ちた溜池。女優の魅力を引き出そうと必死に撮影する。
「30分ハダカなし」という演出も、人妻の日常を描き出すためのこだわりだった。
彼女こそ、のちにAV界の伝説的美熟女となる川奈まり子。現在の溜池の妻である。

当時の事情は、川奈まり子の著書『三十路セックス』でも語られている。川奈が面接中に「4人のセフレがいた」と話すと、なぜか溜池も「オレにも、6、7人のセフレがいる」とはりあった。
溜池は撮影前から「好きだ」「早く会いたい」とメールを送り続けたが、川奈は相手にしなかった。ところが、撮影現場で川奈は初めての体験をすることになる。

ごく普通のセックス。いままでにないエクスタシーに達した。
撮影中、カットが入る。川奈は、溜池の姿を追い求めていた。

そして二人の愛が生み出した『義母〜まり子34歳〜』は初年度だけで1万本以上を売り上げ、大ヒットを記録した。

しかし、2作目『プライベートセックス 48時間』の制作は溜池にとって苦痛を極めた。川奈に心を奪われてしまった溜池は、他の男性と絡む川奈を撮影することに耐えられなかったのだ。
『三十路セックス』によると、このとき溜池は5回までと契約されていた川奈とのセックス回数を大幅に上回り、12回も行ったという。
溜池はこの作品で川奈の撮影をやめようと考えていた。建前は「2本もヒット作が出来たのだから十分」。本音は「嫉妬」だった。

だが、溜池は3作目の『飼育』制作に乗り出した。
きっかけは、10年連れ添った15歳年上の内縁の妻(50)に別れを切り出したことだった。3日間監禁され、暴行、脅迫、説教を受けた。自暴自棄になった。
『飼育』の制作はいわば「治療」であった、と溜池は当時を振り返る。

撮影当日。
加藤鷹と川奈の絡みの後に、恋人役で出演する溜池。猛烈な嫉妬と愛情を胸に川奈を抱いた瞬間、即座に心と心が絡まりあった。恥部に触れただけで、ストンと失神する川奈。カメラを向けると、意識を取り戻した彼女は、菩薩のような笑みを溜池に向けたという。
その時、
セックスなんて、たかだか男性器が女性器に入るという、物理的なものじゃないか。そんなことに嫉妬して、なんになる。俺は、そんな小さな男ではない
と悟ったのであった。
川奈を主演とする400本を超える精力的な作品展開はここから始まったのだ。


人妻の不倫考察から始まる本書だが、途中から溜池ゴローの情熱が溢れだし、最終的には「あなたたちは魅力的で色気がありますよ」という熟女、人妻へ向けたラブレターになっている。

AV監督としての溜池ゴロ―をより詳しく知りたい方は、本書と同時期に発売された『AV女優のお仕事場』を読んでほしい。溜池ゴロ―の監督業に対する熱い思いや撮影裏事情が仔細に書いてある。

溜池は、2006年に自身の名前を冠する美熟女AV専門レーベル「溜池ゴロー」を立ち上げ、現在も活躍中である。
(HK 吉岡命・遠藤譲)
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